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~介護と仕事の両立支援~「高齢の親を見守る」実家をデジタル化するメリット【Wi-Fi化と端末選びの注意点】

2021.04.07

 前回は、「離れて暮らす高齢の親との付き合い方」実家をデジタル化するメリットと題して、コロナ禍で会えない親の変化に気付くことの重要性や、デジタル化がもたらす親自身のメリットについて解説しました。今回はWi-Fiの導入から実際の利用までの流れと注意点についてお伝えします。

最短でビデオ通話をする方法

 親がビデオ通話などに興味をもち導入の了承を得たら、次にスマホやタブレットなど機器の購入です。
 親自身が店頭で契約できるようであれば問題ありませんが、複雑な料金プランや、重要事項説明書の内容まで理解することは難しいもの。

 さらに不要なオプションの追加契約をすすめられたり、電気料金のセット割など、目的外のものまで「お得だから」と案内されることもあるようです。

 そのため、親がその気になったらスムーズに導入できるよう、子どもが代わりに契約し親へ端末を送ってあげましょう。

① 子どもがスマホを契約して親元へ送る
 大手キャリアなどでスマホやタブレットの契約をし、端末を受け取ったら初期設定をおこないます。

 子ども(兄弟の分も)の連絡先など必要最低限の電話番号を登録し、「LINE」などのビデオ通話アプリをインストールします。このとき子どものほうでアカウント取得までやっておきます。

 スマホや各アプリのID・パスワードは紙にメモをして端末と一緒に送ってあげましょう。自分の控えとして手元にも残しておくこともお忘れなく。端末を送る際フォントを大きめに設定しておくと親は見やすいかもしれません。

 それと、通信料は毎月数千円とはいえ、年単位で考えると相応の金額になります。基本的に親が使うものは親のお金で。利用料金は親の口座から落ちるようにしておきましょう。

② ホームルーターもセットで購入
 親の自宅でWi-Fiが使える環境にしておくと、通信容量を気にせずコミュニケーションをとることができるのでお勧めします。

 Wi-Fi設定は面倒と思われがちですが、現在は数社からモバイルルーターやホームルーター(置くだけWi-Fi)が販売されています。
 これらは面倒な工事は不要でその日から使えます。スマホやタブレットにWi-Fiパスワードを入力し、接続を確認したらルーターも一緒に親元へ送りましょう。

 モバイルルーターは外出先でもWi-Fiが使えます。ホームルーターはコンセントを差すだけですぐにWi-Fiが利用できるので、利便性に優れています。引っ越ししてもそのまま利用できることもメリットといえます。

親に適したスマホの選びかた

 スマホは多数の機種が発売されているなか、親が使えそうな機種はどれなのか?この機種選びも一苦労ですよね。機種選定には3つの考え方があるので参考にしてください。

① シニア向けスマホ
 ”親が使うのならシニア向けスマホ”とイメージしている方も多いのではないでしょうか。
 らくらくスマートフォンやかんたんスマホなど、各社からシニア向けスマホが発売されています。

 フォントやアイコンが大きく表示された画面、機能はシンプルながら必要十分、LINEアプリが標準インストールされた機種もあります。

 ただし、現在はどのスマホでもフォントサイズは変更できるので、シニア向けにこだわりすぎる必要はありません。

② 自分(子ども)と同じOSにそろえる
 スマホ・タブレット購入後も、使い方をサポートするのは子どもの役目。
 しかし、iOSとAndroidのようにOSが異なると操作方法が違うため、遠隔で説明することが非常に困難です。OSはなるべく同じものにそろえましょう。

 また、慣れないうちは、プッシュ通知やアップデートのアラートなどが表示されると「何かメッセージが出てるけどどうしたらいいのかしら?」と不安に感じるもの。こうした通知が来ることも事前に伝えておきましょう。それでも親から連絡が来ることもあるでしょう、その時は再度やさしく教えてあげます。

③ ガラホという選択肢もあるが…
 スマホの機能は魅力だけど、親はどうしてもタッチパネルが苦手、操作が難しいといったときにはガラケーにスマホの機能を搭載した(通称)ガラホという選択肢もあります。

 Android OSを搭載し、従来のガラケー同様にテンキーがあるので、物理ボタンを押す感覚に慣れ親しんだ親世代なら敷居も低いでしょう。ウェブページの閲覧、ビデオ通話も可能です。

 しかし、各社ラインナップが少ないうえLINEが使える機種も限定されます。また、アプリの機能に制限があることや、ウェブ閲覧は十字キー操作のためスムーズではない部分もあり、購入時はショップに「できること・できないこと」をよく確認しておきましょう。

 親に適した端末選びにはこのような視点があります。できれば購入時は親と一緒にショップへ足を運び、実機を触ってもらいたいですね。

最初にインストールしておきたいアプリ

 便利なアプリが利用できることもスマホのメリット。参考までに無料で利用できるおすすめのアプリを紹介します。日々アプリを使うことで、親もスマホに慣れ親しんでいくはずです。

「LINE」:もはや説明不要の国民的メッセージアプリ。ビデオ通話の入門にも最適。
「スマートニュース」:ニュース配信アプリ。その人に最適化されたニュースが届く。
「ウェザーニュース」:天気予報アプリ。
「グーグルマップ」:地図アプリ。使い慣れると外出意欲の向上にも。
「乗換案内」:路線検索アプリ。電車だけでなくバス路線も検索できる。
「YouTube」:分からないことは動画で調べる。
「歩数計」や「血圧記録」などのヘルスケア系アプリ。データ化で管理もラクに。
「radiko」:災害時にも活躍。無料でラジオが聴けるアプリ。
「EPARKお薬手帳」:お薬手帳アプリ。調剤の待ち時間短縮にも!
「i読書(青空文庫)」:読書アプリ。電子書籍の入門にもおすすめ。

「怒らない、諦めない」で最後まで伴走を

「怒らない、諦めない」で最後まで伴走を

 前回も少し触れましたが、親は未知の端末に初めて触れるわけです。分からなくて当たりまえ。「ググれば分かるから」では分からない世代なのです。みなさんが忙しくても、時間に関係なく何度も同じ質問が来る、これはあらかじめ想定しておきましょう。

 親が気軽に聞ける相手は他でもなく子どもです。そして子どもからデジタル化を勧めたのであれば、面倒と感じても途中で投げ出さずに、最後まで付き合ってあげましょう。
 これは私の経験上ですが、最初の一ヶ月がヤマ場で徐々に連絡は減っていくはずです。

 しかし、仕事や家事・育児に追われるなか連日のように質問が来るとさすがにストレスになります。そんな子どもの「サポートセンター化」は避けたいところ。そこで、本来のサポートセンターの連絡先や、ケータイショップで開催している「スマホ教室」なども早めに伝えておきましょう。

 スマホ教室は大手キャリアのショップでおこなわれており、シニア層の参加率が高いようです。親と同世代の参加者がいれば、気持ちも分かり合えるし交流の場にもなりますね。
 参加は事前予約制です。親が通いやすいショップのスマホ教室を予約してあげるとよいでしょう。

親が使うものだから、親の意思を尊重しよう

 ちなみに私の場合、70歳になる母親のスマホデビューにシニア向けスマホをすすめたところ「それは高齢者が使うものでしょ。お母さんはiPhoneがほしい」と拒否されました。

 聞くと母の友人はみんなiPhoneユーザーだったようで、自分だけシニア向けスマホなんてありえないとのこと。
 契約当日は私も立ち会い、その後初期設定に4時間ほど付き合うことになりましたが、今となっては良い思い出になっています(笑)

 「65歳以上=高齢者」という定義はあるものの、現代のシニア層は精神的・肉体的に若い人が多く、自分のことを高齢者だと思っていません。
そういった世代に、シニア向けなら何でもよいだろうと考えるのは早計で、本人が使いたいデザインやこだわりを尊重することでスムーズなデジタル化にもつながります。

 次回は実家のデジタル化第3弾「スマート家電による親の見守り」についてお伝えします。

※本文中の情報は2021年4月1日時点のものです。