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ワクチン接種に伴い発生する労働問題とテレワーク実施に伴う就業規則の具体例

2021.08.31

新型コロナのワクチン接種が急激に進んでいますが、これに伴い労働問題も発生しています。
本記事ではワクチン接種に伴い発生した労働問題をご紹介した上で、テレワークを実施する際の就業規則の変更例を具体的にご紹介いたします。

ワクチン接種に会社は干渉できないので注意が必要

ワクチン接種に対する会社の対応は様々です。
まず、ワクチン接種を推奨する会社においては、①ワクチン接種を行うよう会社が命令することができるのか、反対にワクチン接種に反対する会社もあり、②ワクチン接種を行なった者を出勤停止などにできるのかが問題となっています。
例えば、ある大手住宅メーカーは、“ワクチン禁止令”を出し、接種した場合には、無期限の自宅待機命令、業務上のPCへのログイン禁止としていることが先日、話題になりました。
以上のような問題が発生していますが、従業員がワクチン接種を行うのか、行わないのかの判断に会社は干渉することができません。
2020年12月に成立した改正予防接種法では、接種は国民の努力義務とされているにとどまり(同法9条)、同法の附帯決議においても、「新型コロナウイルスワクチンの接種の判断が適切になされるよう、(略)、接種の判断は国民自らの意思に委ねられるものであることを周知すること」(附帯決議第1文)とされています。
このように予防接種は法律上もあくまで個人の自由であり、会社が強制することはできません。
仮に会社が予防接種を行っていないことを理由に不利益に取り扱うことも「ワクチンを接種していない者に対する差別、いじめ、職場における不利益取扱い等は決して許されるものではない」(附帯決議第2文)と明記されています。
したがって、ワクチン接種をしているか、していないかで会社が従業員を不利益に扱うことは違法となり、損害賠償問題に発展する可能性があるため、注意が必要です。

では、次にテレワークを実施する際の就業規則の変更例を具体的にご紹介していきます。

テレワークの対象者を定めよう

初めのステップはテレワークの対象者を決定することです。
ただし、拒否する労働者にテレワークを命令することができない可能性があるため、テレワークの対象者には、希望する者とする会社が多いです。
加えて、テレワークは従業員が企業情報を自宅に持ち込むことになるので、セキュリティ環境を適正であることを会社が確認する仕組みや扱う仕事内容を予め会社が決定しておくとトラブルの未然防止につながります。
具体例として以下のとおりです。

● 就業規則例----------------------------------------------------------------------------------------------------------
(テレワークの対象者)
第○条 テレワークの対象者は、次の各号を全て満たした者とする。
テレワークを希望する者
自宅の執務環境、セキュリティ環境、家族の理解のいずれも適正と認められる者
その他、会社がテレワークを行うことが適当であると認め、所属長の承認を行った者
2 テレワークを希望する者は、所定の「テレワーク申請書」をテレワーク開始希望日の1週間前までに所属長に提出し、その承認を得ることとする。
3 会社はテレワークの承認にあたり、一定の頻度で出勤を義務付け、あるいは仕事内容、所定労働日数、所定労働時間を変更するなど、一定の条件を付すことがある。
4 会社は業務上のその他の事由により、前項によるテレワークの承認を取り消すことができる。
(情報の取扱い)
第○条 会社から業務に必要な資料や機材その他の情報を持ち出す際には、所属長の許
可を得た上で、厳重に管理しなければならない。
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労働時間の管理についても定めよう

次のステップは、労働時間管理を就業規則に規定することです。
労働時間管理を行なっていない場合、万が一、長時間労働は発生した場合、会社には重大な不利益が発生します(前回のコラム参照)。
これを未然に防ぐ仕組みとしては、残業には上司の許可が必要であることを明記し、実際の運用においてもそのように行うことです。
加えて、パソコンの利用状況を確認できるサービスなどを利用して、従業員が残業時間を過少に申請していないかもチェックするとよいでしょう。様々なサービスがありますが、例えば、NECの「働き方見える化サービス Telework」は、PCの利用情報や顔認証情報を通じて勤務情報の取得ができるため、企業はテレワークにおける勤務の申告漏れや長時間勤務など、勤務実態の把握が可能となるため、とても有用であるとの声を聞きます。
労働時間管理にかかる就業規則の具体例は以下のとおりです。

(テレワーク時の労働時間)---------------------------------------------------------------------------------------
第○条 テレワーク時の労働時間は、就業規則第〇条の定めるところによる。
2 前項にかかわらず、会社の承認を受けて始業時刻、終業時刻及び休憩時間の変更をすることができる。
(時間外及び休日労働等)
第○条 会社、テレワークを行う従業員はともに、時間外、休日、深夜のメール送信等を原則禁止とし、従業員が時間外労働、休日労働及び深夜労働をする場合は所定の手続を経て所属長の許可を受けなければならない。
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加えて、休憩時間も以下のとおり規定して、中抜け時間の扱いを明確にしておくとよいでしょう。

(休憩時間)------------------------------------------------------------------------------------------------------------
第○条 テレワークを行う従業員が業務から離れる時間が15分を超える場合には、その開始と終了の時間を報告させること等により、休憩時間として扱い、始業時刻を繰り上げる、または終業時刻を繰り下げることとする。
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テレワークの費用負担のルールを定めよう

テレワークに伴い、従業員が契約した電話回線等を用いて業務を行ったり、通話 料、インターネット利用料などの通信費が増加したり、労働者の自宅の電気料金等が増加することがあります。
実際の費用のうち業務に要した実費の金額をテレワークの実態(勤務時間等)を踏まえて 合理的・客観的に計算し、支給することも望ましいのですが、毎回の複雑な計算を行うことが現実的ではないことから、テレワーク手当を支給して解決することが最も現実的と思われます。
就業規則の具体例としては、以下のとおりです。

(テレワーク手当及び費用の負担)----------------------------------------------------------------------------
第○条 テレワークを行う従業員が業務の遂行上発生する費用負担のうち会社負担分として毎月月額○円を支給する。
2 前項のテレワーク手当を除き、テレワークにともなって発生する光熱費、通信費等の費用は従業員本人の負担とする。
3 前項にかかわらず、業務上発生する交通費その他会社が認めた費用については、会社負担とし、「テレワーク業務報告書」で連絡のうえ復帰時に精算する。
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東京都が行うテレワーク助成金を活用しよう

テレワークを実施する企業のうち、常時雇用する労働者が2人以上999人以下で、都内に本社又は事業所を置く中堅・中小企業等には、是非活用すべき助成金制度があります。
東京都(東京しごと財団)が実施する「テレワーク促進助成金」という制度です。この制度は令和3年12月24日までの制度です。
ノートパソコンなどのテレワーク機器、パソコンに入れるセキュリティソフト、財務会計ソフト、Microsoftの「office」等の環境整備に係る経費の助成が受けられるなど、極めて充実した助成制度です。申請手続きも複雑なものではないため、テレワークの導入を考えている企業はこの助成金制度を活用しない手はないでしょう。
助成率や支給対象費用などに諸々の条件があるため、ホームページでご確認ください。

就業規則を労基署に届け出る

以上のようなテレワークに関連の就業規則を作成した後は、従業員に就業規則案を説明して、要望を聞き、従業員代表から意見を聴取し、意見書を作成する、従業員にも周知すること、従業員代表の意見書を添えて、就業規則を所轄の労働基準監督署へ提出することになります。

以上のような手続きを経て、就業規則を変更することで、テレワークを実施する上でも紛争を未然に防止することができます。
是非、参考にしてください。