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2025年に働き盛り世代の危機到来!?30代40代を襲う「ダブルケア」とは

2022.03.14

「ダブルケア」とは、子育てと家族介護のタイミングが重なり、そのふたつを同時に行うことです。ダブルケアを行う人は「ダブルケアラー」と呼ばれています。

ダブルケアは平均寿命の延伸、少子高齢化や女性の社会進出などによる晩婚化・晩産化の影響などにより増加しています。そして、「子育てや介護は女性がするもの」という昔ながらの価値観をもつ人がいまだ少なくないことも影響して、その負担は女性に集中しがちです。
今回はダブルケアの現状、企業・当事者双方の問題点と対策について解説します。

ダブルケアラーは25万人で30~40代が8割を占める

ダブルケアが増加した大きな要因の一つが晩婚化・晩産化です。平均初婚年齢と平均出産年齢はこの30年間で上昇の一途を辿っています。厚生労働省の「令和3年版少子化社会対策白書」 によると、2019年の平均初婚年齢は夫31.2歳、妻29.6歳で、1990年と比べると夫は2.8歳、妻は3.7歳上がりました。第一子出産時の母親の平均年齢も27.0歳から30.7歳へと、3.7歳上昇しています。

出典:厚生労働省 「令和3年版少子化社会対策白書」

その影響がダブルケアラーの増加に寄与しているのでしょう。内閣府の発表 では、日本にはダブルケアラーが約25万人いると言われ、その内訳は男性が約8万人、女性が約17万人で、やはり女性に負担が集中しています。
近年、自分の親の介護は自分でみる潮流もあり、男性の割合が徐々に増えています。さらに年代別にみると、男女ともにダブルケアラーの約8割が30〜40代で、働き盛りの世代が大部分を占めています。
性別に関係なくダブルケアを担っていること、働き盛りの世代にその負担が直撃していることは、企業にとって見過ごすことはできません。

介護は予期せぬタイミングで始まり平均期間は約5年

介護は予期せぬタイミングで始まり平均期間は約5年

ダブルケアとひとことで言っても、その内容は人それぞれです。たとえば、出産の半年後に同居する義母が脳梗塞で突然倒れて育児と介護の両方を担うことになった。

産休を終えて職場復帰するはずが、実家で父の介護をしている母が入院したことで父の遠距離介護を担うことになった。このように、ダブルケアにはたくさんのパターンが存在します。

その理由は、育児と比べて介護は対象者や始まり方が十人十色で異なるからです。育児のほとんどは、ケアの対象者は同居する自分の子どもでしょう。一方、介護の対象は実両親だけではなく祖父母や義理両親の場合もあり、同居ではなく通いや遠距離介護の場合もあります。

妊娠・出産を経て始まる育児とは違って、介護の多くは予期せぬタイミングで突然始まり、場合によっては同時に複数人の介護を担うこともあります。さらに、子どもは成長すれば手を離れていきますが、介護の対象者はできないことが増えます。

このような違いからか、前途の内閣府の調査では、男女ともに約7割が「育児より介護の方が負担に感じている」と答えています。

このほか、少子化によって介護の負担はより大きくなっています。兄弟がいない人の増加に伴って、一人っ子同士の夫婦も増加。加えて近所関係が希薄ないま、周囲に助けを求めづらい人も多いでしょう。夫婦二人だけで、双方の両親の介護をしなければならない可能性もあるのです。

平均的な介護期間は約5年 と言われていますが、それも人それぞれ異なるために長期化することもあり、終わりが見えづらいことも負担増につながっているでしょう。介護を長期間続けるためのコツは、適切なサービスを利用することで家族の負担軽減を図ることです。

ダブルケアが増加する!?2025年問題との根深い関係

要支援、要介護という言葉を聞いたことはありますか。要介護とは誰かの手を借りなければ生活が成り立たない身体状態のことです。要支援とは要介護の前段階で、自力で生活はできるものの、家事などの一部に支援を必要とする状態です。

「昔に比べて、いまの高齢者は若くて元気」そんな印象を抱き、「介護が必要な高齢者はそれほどいない」と感じている人も多いかもしれません。しかし、75歳を超えると要介護者になる割合が増加します。

要支援・要介護の認定を受けた人の割合をみると、65〜74歳で要支援認定を受けた人が1.4%、要介護認定を受けた人が2.9%。一方、75歳以上では要支援認定が8.8%、要介護認定が23.3%と、いずれも75歳以上で増加します。

出典:令和元年版高齢社会白書

加えて、2025年には約800万人の団塊の世代全員が75歳以上の後期高齢者となり、医療や介護を必要とする人がさらに増えると言われています。いわゆる「2025年問題」です。

これは団塊の世代当事者だけの問題ではありません。その子どもの団塊ジュニア世代が、子育てと親の介護のダブルケアに。場合によっては子育てと両親二人の介護という「トリプルケア」になる可能性もあり、介護離職の増加も予想されます。

2025年問題に直面する前に、とくに30代以上の従業員が多数を占める企業では、総務部や人事部が介護についての知識を身につけ、理解を深めることが必要です。

従業員からダブルケアの相談があった場合の相談機関

従業員からダブルケアの相談があった場合の相談機関

総務部や人事部の担当者が従業員から介護やダブルケアについて相談を受けたとき、大切なことの一つは専門の相談窓口を紹介することです。使える公的制度を知り、適切なタイミングで利用することで、介護離職回避に繋がります。ここからはダブルケアで利用できる相談機関を紹介します。

介護と仕事の両立の相談は労働局へ
介護と仕事の両立については、各都道府県に設置された労働局(労働基準監督署、公共職業安定所)で相談できます。介護離職を回避するために利用できる制度の説明や助言を受けることが可能です。
「介護休業」や「介護休業給付金」など、現在会社に規定がなくても従業員の申し出により利用できる制度もあり、その申請方法なども相談できます。
(詳細はこちら)

介護の相談は地域包括支援センターへ
地域包括支援センターは高齢者介護の専門機関で、介護に関することであればどんなことでも相談できます。相談する際は、介護を必要とする親の住所地にある地域包括支援センターに行きます。

ダブルケアの状況を伝えれば、介護保険サービスの使い方や職場復帰のための適切なサービスの利用方法、負担軽減のための助言をもらえるでしょう。介護が始まる前やこれから始まるかもしれない人も利用可能です。電話だけでなく対面での相談も可能ですが、予約をして訪問するとスムーズです。

育児の相談は自治体の育児相談窓口へ
育児に関する相談は、各自治体が設けている総合相談窓口が利用できます。
対象は0歳から就学前の子どもです。育児や子どもの健康相談に、社会福祉士、心理士、保健師、助産師などの専門家が対応してくれます。名称が自治体によって異なりますので、対象の従業員が住む「自治体名 育児相談窓口」で調べてみましょう。

子育て・女性健康支援センター
日本助産師協会が運営する「子育て・女性健康支援センター」は全国に設置され、助産師による電話相談を受けつけています。地域によっては電話だけでなく、LINEで気軽に相談ができます。来所や家庭訪問など対面での相談にも対応してくれます。
(詳細はこちら)

まとめ

まとめ

社会の変化に伴って増えてきたダブルケアは、2025年問題を機にさらに増加すると予想されます。介護を担う人たちの多くは30〜40代の働き盛りの世代で、介護離職が増えれば企業にとっても大きな損失です。

ダブルケアは始まり方もその内容もさまざまで、解決策も多岐に渡ります。従業員の相談窓口となる総務部・人事部の担当者は、まずは専門の相談機関について知っておきましょう。従業員が必要な公的制度を適切なタイミングで利用することで、介護離職の回避につながるはずです。