電子インボイスへ移行する?インボイス制度で必要となる対応とは─インボイス制度の処方箋Vol.2
多くの事業者が不安を抱き、対応に悩んでいる「インボイス制度」。第1回では、インボイス制度の基礎編として、インボイス制度とは何か、これまでの請求書との違いなどを解説しました。2回目は、実際にどのような対応が求められるのかについて、具体的に解説していきます。
具体的にはどんなことをすればいいのか
インボイス制度移行後は請求書を発行する企業(消費税をもらう企業)と、請求書を受領する企業(消費税を国に納付し、仕入れ控除を受ける企業)双方に対応が求められますが、やるべきことがそれぞれ異なってきます。
【請求書を発行する企業が対応すべき3つのポイント】
1) 所轄の税務署に行き、適格請求書発行事業者の登録申請を行う
2) 必要な項目を記載した請求書を発行する
3) 発行した適格請求書の控えを保存する
【請求書を受領する企業が対応すべき3つのポイント】
1) 適正な適格請求書かどうかチェックする
2) 帳簿への所要事項の記録と保存を行う
3) 受領した請求書を保存する
請求書発行企業と受領企業のどちらにとっても重要なのは、(3)の「請求書の保管」です。なぜなら、電子インボイスにした場合、その保存には「電子帳簿保存法」という法律への対応が必要になるからです。
電子インボイスと電子帳簿保存法との関係とは
前回Vol1でお伝えしたように、インボイス制度は請求書の電子化を義務付けるものではありません。しかしながら、今後は業務プロセスのデジタル化が進んでいく中で請求書の授受もデジタル化され、電子インボイスが主流となっていくでしょう。
「電子インボイス」とは、適格請求書を電磁的記録形式にしたもの。パソコンで作ったファイルやデータなど、電子的にやりとりできるようなものをさします。取引先と電子インボイスのやり取りを行った場合、その保存には「電子帳簿保存法」という法律への対応が必要になります。電子帳簿保存法の令和3年度改正により、基本的には電子インボイスを紙に印刷して保存できなくなり、電子データのままで保存することが義務付けられました。それにより電子保存の仕組みを含めて請求書業務の電子化を推進する流れが加速しています。
なお、インボイス制度が始まるのは2023年の10月ですが、2カ月後の2024年1月からは電子帳簿保存法により、”基本的に”電子インボイスの電子保存が義務化されます。本来、この電子保存の義務化は2022年1月から開始予定でした。しかしその準備が間に合わない事業者が圧倒的に多かったため、2年間の宥恕期間が設けられました。その2年間の宥恕期間が切れるのが2023年の12月末なのです。
「基本的には」であって、「2024年の1月1日以降も相当の理由がある場合は認めます」という方針も発表されています。しかしながら大前提として、法律自体は原則として「紙で保存してはいけない」というのは変わりません。ですから引き続き、電子インボイスの電子保存対応は進める必要があります。
電子インボイスは、Excelで作っても大丈夫?
新しいツールは苦手でもExcelならこれまでも使ってきているという事業者は多いでしょう。ですから「電子インボイス」と聞いて、使い慣れたExcelで作ることを想定しているかもしれません。確かに電子帳簿保存法の中でも「税務調査で求められた際にデータで提示できればいい」とのような言い方になっているので、そこだけを見ると「ではExcelでもいいじゃないか」と思うかもしれません。
ただし、コンプライアンスの観点から言うと、Excelでは書き換え阻止などを担保するには十分ではありません。電子インボイスや電子帳簿の導入を進めているのは、企業の活動のレコーディング(記録)を明確にするのが目的の一つ。書き換えや変更はあったのか、あったのはいつで、誰が変更したかといった情報をきちんとレコーディングするためには、やはり一定のシステムを導入することが、最終的には効率的といえるでしょう。
電子インボイスとデジタルインボイスの違いとは?
政府はペーパーレス化・デジタル化政策を推し進めているので、適格請求書の授受を含めた取引業務のデジタル化を強くプッシュしています。
「電子インボイス」が、主に書面状態のインボイスを電子ファイル化したものをさすとすると、「デジタルインボイス」とは、標準化され構造化されたCSVやXMLといった形式のデータそのものです。「デジタルインボイス」を用いることで、データのやり取りや活用を容易にし、業務のデジタル化を促進できます。
デジタル庁は官民連携のもと、グローバルな標準仕様である「Peppol(ペポル)」をベースに、2022年10月にデジタルインボイスの標準仕様(JP PINT)を正式発表しました(※)。
次回は、電子インボイスの保存を含めた請求書業務のシステム化を進めるためのポイントについて、解説します。
※参考:JP PINT|デジタル庁 (digital.go.jp)