【前編】若手の「早期離職」を防ぐポイント【中小企業の“令和流” 若手・第二新卒採用を成功させる秘訣 Vol.5】
苦労して採用した人材がすぐに離職してしまうと大ダメージです。投下したコストや工数はムダになってしまいますし、人員計画も狂ってしまいます。関わった従業員のモチベーションが落ち込んだり、「うちの職場は大丈夫かな?」という疑心暗鬼が広がったりするリスクもあります。しかし、採用活動と受け入れのポイントをきちんと押さえていけば、早期離職は防ぐことが出来ます。本記事では具体的なノウハウを紹介しますので、早期離職に苦い経験がある方、久しぶりに採用活動をされる方などはぜひご覧ください。
なお、採用活動を成功させるためのポイントはここまでの連載で紹介しましたのでご興味あればご確認ください。
※第1回コラム
※第2回コラム【前編】 / ※第2回コラム【後編】
※第3回コラム【前編】 / ※第3回コラム【後編】
※第4回コラム【前編】 / ※第4回コラム【後編】
若手層の「早期離職」の現状
まず若手層の「早期離職」の現状を簡単に押さえておきましょう。大卒新卒の離職率は昔から“3年3割”と言われ、入社3年で約3割が離職します。厚生労働省が発表している「新規学卒就職者の離職状況」の最新データでは32.3%と、前年対比で0.8ポイント増加しています。好景気になると上昇する・不景気になると減少する傾向があり、過去10年間、31~33%の範囲で収まっています。
*参照)厚生労働省「新規学卒就職者の離職状況」
一方で、“3年3割”は平均値であり、小規模の事業所ほど離職率は高く、従業員5人未満の事業所では54.1%、5~29人は49.6%、30~99人は40.6%と4割~5割超です。規模が上がると受け入れ態勢等も整ってくるため、100~499人は32.9%、500~999人は30.7%、1,000人以上は26.1%と低下していきます。業界差も大きく、離職率が高い上位5産業は宿泊業・飲食サービス業51.4%、生活関連サービス業・娯楽業48.0% 、教育・学習支援業46.0%、医療・福祉業38.8%、小売業38.5%となっています。
また、データには表れていませんが、新人や若手教育の現場にいると、“会社を見切る”速度が速くなっている感覚があります。少子化を背景として、既卒や第二新卒の採用競争は激化し、慢性的な売り手市場となっています。それも踏まえて、いまの若手層は「20代前半~中盤のうちは転職できる先はいくらでもある。早いうちに見切って転職したほうが良い」と考える傾向にあります。早期離職が発生している状態で、採用活動にコストや工数を投下するのは非常に効率が悪いといえます。離職率が高い中小企業や業界ほど、早期離職の防止に力を入れることが大切です。
採用活動における「早期離職防止」のポイント
◆大切なのはリアリティギャップの解消
若手の早期離職を防止するには、まず採用活動で対策を打つことが大切です。何故なら若手の早期離職における大きな要因が「リアリティギャップ」だからです。リアリティギャップとは、入社前に思い描いていた職場・働き方と、入社後の現実の間に生じるギャップです。
仕事の大変さや厳しさを経験しているキャリア層であれば、転職する会社に「バラ色の理想像」を抱くことはないかもしれませんが、社会人経験がない新卒・既卒や初めての転職となる若手層の場合、「理想の職場」を想像してしまいがちです。このように若手層はただでさえリアリティギャップが生じやすいからこそ、採用活動の中でリアリティギャップを解消することが大切です。
◆採用活動の後半で「大変なこと」も伝えていく
中小企業における新卒や若手採用の難易度は高く、採用活動は「やりがいや楽しさなどの魅力をしっかりと打ちだそう」と考えがちです。これ自体は大切な考え方であり、応募獲得や選考初期ではしっかりと魅力を伝えて、志望度を高めることが大切です。
しかし、魅力だけを聞いた状態で内定承諾して入社するとリアリティギャップが大きくなり、早期離職の要因になります。また、Z世代は「聞いていた話と違う」ことに不信感を抱く傾向があります。入社後に「聞いていないこと」が多くなると、会社への信頼がなくなり、モチベーションを高めたり引き留めたりするためのコミュニケーションも効果がなくなります。
従って、志望度が高まってきた選考後半では仕事の大変さや泥臭い部分なども徐々に伝えていき、リアリティギャップを減らすことが重要です。大変さだけを伝えると志望度が落ちてしまいますので、「こういうやりがいもあるけど、ここは大変だよ」「仕事が幅広い分覚えることも多く大変だけど、1人前になると市場価値が高まるよ」「普段の残業は月10~15時間程度だけど、○月の繁忙期前後はこれぐらいの残業もあるよ」といった形で魅力付けとセットで伝えていきましょう。
◆残業や有給、給与、配属等のミスは絶対にNG
Z世代の若手層と昭和や平成前期の仕事観は大きく異なる部分が生じてきています。その中でも象徴的なものが「仕事>プライベート」という価値観の変化であり、「働き方改革」を契機とするサービス残業や有給利用などに対する感覚です。今のZ世代は、ワークライフバランスを重視しますし、“プライベートよりも仕事を優先することが当たり前”という感覚はありません。従って、サービス残業や事前に聞かされていない休日出勤、有給を自由に使えない職場、また、昭和や平成前半の感覚だと「そういうもの」と受け入れてしまう残業時間などは若手世代にとってはブラック企業の代名詞です。
求人票に記載している給与や配属先、勤務体系のズレ等もNGです。これは当たり前の話ですが、人手がない中で採用活動をやっていると古い情報を更新できていなかったリ、「これぐらいは普通の感覚だよな」と思って伝え忘れたりすることもあります。しかし、勤務体系や待遇面等の差異は定量的で見えやすいものであり、若手層が重視する部分だからこそ、絶対に間違いがないように、また、入社後にイメージとのずれが生じないようにしっかりと伝えることが大切です。
次回は「早期離職を防ぐポイント」後編
今回は、採用活動における「早期離職防止のポイント」を紹介しました。早期離職を防止するためには、まず採用活動で「入社後のリアリティギャップをなくす情報提供」を意識することが大事です。志望度が高まってきた選考後半から仕事の大変さも伝えたり、残業や休日出勤、待遇などに関してズレが生じないように注意を払ったりすることが大切です。
次回の「早期離職を防ぐポイント」後編では、「費用をかけずにできる若手の受け入れポイント」など、入社後における具体的な取り組みをご紹介します。