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今月の人事・労務トレンドVol.2 2020年6月に施行される「パワハラ防止法」 人事労務が行うべき対策とは<後編>

2020.04.21

パワハラ相談件数の増加や従業員の過労死などが大きな問題となっていることを背景として、政府は2020年6月から大企業を対象に「パワハラ防止法」の施行を決定した。法施行を間近に控え、対応に追われる企業担当者もいるのではないだろうか。

 職場におけるパワハラの定義とあわせて押さえておきたいハラスメントの内容や、パワハラ防止法施行に至る背景について説明した前編に引き続き、今回の後編ではパワハラ防止法に規定された措置内容と、実際に企業の担当部署が行うべき対策について解説していく。

目次

●2020年6月に施行。パワハラ防止法とは
●人事労務が行うべき対策
●まとめ


<前編はこちら>
2020年6月に施行される「パワハラ防止法」 人事労務が行うべき対策とは<前編>

●2020年6月に施行。パワハラ防止法とは

 大企業では2020年6月から、中小企業では2022年4月からの施行が決定している「パワハラ防止法」。具体的にどのようなことが規定された法律なのだろうか。ここでは、パワハラ防止法の内容や違反した場合の規定について説明していく。

パワハラ防止法の概要

 パワハラ防止法は、「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律」によって規定されている。これにより、職場内で発生した「パワハラ」と認められる言動に対し、企業が是正措置を講じる義務を負うことになる。ここでポイントとなるのが、どのような言動がパワハラに該当するかの判断基準を明確にしておくことだろう。前編でも触れた通り、パワハラに該当するとされるのは、「①職場内での優越的な関係を背景とし」て、「②業務上必要かつ相当な範囲を超え」、「③労働者の就業環境が害される」ものだ。

 「職場とはどこまでを指すのか」「業務上必要な範囲はどこまでなのか」といったことが明確にしにくく判断に迷うことがあれば、厚生労働省による基準などを参考にすると良いだろう。また人事担当者などは、裁判等の事例をもとに、一般的な労働者の感じ方を基準とし、「問題とされる行為をした者の動機や目的、受け手との関係性」や「受け手が身体的又は精神的に抑圧された程度」など、さまざまな視点で中立的に検証することが必要だ。

パワハラ防止法における措置義務

 今回、職場におけるパワハラの定義や企業が取るべき対応が、厚生労働省より指針として示された。この指針は、職場におけるパワハラのみならず、セクハラやマタハラなどの内容も含まれているため、「総合的ハラスメント対策」として捉え、一定の対策を講じる必要があるだろう。企業を対象とした具体的な責務としては以下のような点が挙げられている。

・職場におけるパワハラ防止の社内方針の明確化や、周知・啓蒙活動を行うこと
・労働者の相談に応じ、適切に対応するために必要な対策の整備をすること、また相談したことを理由として不利益な取り扱いをしないこと
・被害を受けた労働者へのケア及び、再発防止策を講じること
・国の講じる広報活動や啓蒙活動、その他措置に対し協力すること

 注意すべき点は、パワハラ防止法自体には、ハラスメント自体を禁止する内容が含まれていないことだ。これは、業務上必要な指導とパワハラとの境界線が曖昧であり、管理者側が不必要に萎縮すること等への懸念があるようだ。

パワハラ防止法に違反した場合はどうなる?

 現状では、パワハラ防止法に違反した場合の明確な罰則はないようだ。しかし、担当大臣はパワハラ防止法の施行にあたり必要があると認めるときは、「事業主に対して助言や指導または勧告を行うことができる」とされ、その指導に従わない場合、その旨を公表することもあるとしている。直接違法にならない場合でも、企業が社会的な責任を負う可能性について、考慮するべきだろう。

 また、民法第709条、第715条によると、事業主は労働者に対し「安全配慮義務」を負っているため、仮に「パワハラの実態を知っていたにもかかわらず放置した」といったことが生じた場合、民法上の不法行為責任に問われる可能性もあるとしている。また、過去の裁判例にも、社内でのいじめに起因して病気を発症したり、自殺に追い込まれたりしたケースもあるため、刑事事件や民事事件に発展するリスクが十分にあることを理解しておくことが必要だ。

●人事労務が行うべき対策

 実際に人事や労務担当者はどのような対策を講じる必要があるのだろうか。パワハラ対策は、起きる前に防ぐ「事前の対策」と、起こった後に対処する「事後の対策」を考えておきたい。ここでは、それぞれの具体的な対策内容について考えていく。

対策①パワハラの発生を防止する

 まずは、職場内のパワハラを未然に防ぐことが重要だ。そのためには、パワハラに対し企業をあげて対策していくことをトップメッセージとして社内に発信する。「パワハラを企業全体として許さない」姿勢を示し、従業員一人ひとりの自覚を促すことが重要だ。また、パワハラが起きた際の対応方法を明文化し、就業規則や社内規定として記しておくのも良いだろう。社内規定に落とし込むことで、現実に問題が起こった時、処罰の根拠にもなる。作成した社内規定は、トップメッセージと共に従業員への周知も必要だ。資料や文章で配布するほか、社内報やホームページへの記載等を活用しよう。

 また、企業内のパワハラの理解度や自社でどのようなリスクがあるかを把握するため、定期的な社内アンケートの実施が考えられる。現状を知ることで、より自社にフィットした対策作りが可能となるだろう。

対策②早期発見できる仕組みを作る

 パワハラ対策の方針が決定したら、防止のための仕組みに合わせてパワハラが深刻化する前の段階で早期発見できる仕組み作りも重要だ。厚生労働省は、これらの取り組みに有効として、企業に相談窓口の設置と社内研修の実施を推進している。

 相談窓口の設置方法として、すでにセクハラなど他のハラスメントの相談窓口がある場合はパワハラについても対応できるようにすると良いだろう。窓口がない場合は、新たに社内で設置するほか、外部に委託する方法が考えられる。どちらの方法で設置する場合でも、特に注意したいのが個人情報などのプライバシーを保護できる仕組みだ。二次被害の発生や相談者が不利益を被ることがないよう配慮する必要がある。

 この他、社内研修を通じて「パワハラの定義と実例」や「パワハラにあった時の対処法」を伝える機会を設けるのも効果的だ。ロールプレイやグループワーク等、参加型ワークショップを活用し実施できると理想的だろう。

対策③被害者・加害者への対応方法と再発防止策を検討する

 パワハラ防止対策や早期発見対策を講じたとしても、全てのパワハラを防ぐことは難しいだろう。パワハラが発生してしまった場合は、被害者の了承を得て加害者と周囲の第三者それぞれへの聞き取り調査で事実確認を行う。その結果、内容のレベルと規定とを照らし合わせ、注意や指導、あるいは異動等の懲戒を検討しよう。

 また、パワハラの再発を予防するためには、加害者に対して一方的に懲戒を行うのではなく、当事者や周囲が本質的な原因を探ることへのフォローアップと、再発防止のための新たなルール作りを行うと良いだろう。

●まとめ

 2020年6月に施行されるパワハラ防止法には罰則規定こそないものの、企業には従業員が安心して働ける環境づくりをする、社会的な責務が求められる。そのため、企業にとってはどのような言動がパワハラにあたるかを定義し社内規定を作るとともに、具体的な対策を検討することが急務と言えるだろう。

 また、従業員一人ひとりが「パワハラは許されない」という自覚が持てるよう、企業方針を周知することも重要だ。企業にとって適切な対応を検討し、法施行に備えてほしい。

パワハラ対策ハンドブック

 パワハラ防止法の施行に向けて、法対応に追われる人事労務担当者は多いのではないでしょうか。対策方法を考える上で、「どんな対策を行えば防止できるのか」「他社はどのように対策を行っているのか」「そもそもパワハラの定義があいまい」と疑問や不安を抱いていませんか。

 このハンドブックでは、パワーハラスメントを防止するために行うべき具体的な施策について、実際の事例や調査結果を交えて解説します。

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2020年6月に施行される「パワハラ防止法」 人事労務が行うべき対策とは<前編>

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