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今月の人事・労務トレンドVol.3 従業員がコロナウイルスに感染した場合の対応

2020.05.12

 感染拡大が続く新型コロナウイルス感染症の脅威は、職場という身近な場所にも迫っている。日々変わる状況の中、従業員を感染から守るためにどのような対策を講じるべきか、対応に追われる人事・労務担当者も多いだろう。

 今回は、新型コロナウイルス感染症の症状を改めて理解するとともに、従業員が罹患した場合や感染の恐れがあるときの対応方法、従業員の感染に備えて企業として準備しておきたいことについて解説する。企業の担当者として適切な対応を検討する際の参考にしてほしい。

目次

●注意したい「感染の疑いがある症状」
●従業員の感染に備えて企業が考えておきたいこと
●感染者のケース別の対応方法
●感染対策にかかる休業の場合の手当について
●まとめ

注意したい「感染の疑いがある症状」

 新型コロナウイルスに感染した疑いがある場合、どのような症状が出るのだろうか。厚生労働省が発表している、感染の疑いがある症状は次のようなものだ。

①4日以上続く、37.5℃以上の発熱
②強いだるさ(倦怠感)
③息苦しさ(呼吸困難)


 ただし、「65歳以上の高齢者」「糖尿病や心不全、呼吸器疾患等の基礎疾患がある人」「免疫抑制剤や抗がん剤治療を受けている人」「妊娠している人」の場合は、発熱が2日以上続いた時点で疑わしい症状と捉え、正しく対処することが必要としている。今後も状況に応じて受診の目安が変わる可能性もあるため、国の方針やニュースは日々チェックしておきたい。

 これらの思い当たる症状が従業員に見られる場合は、早めに対処することでその後の感染拡大の防止にもつながる。小さな変化を見逃さないよう、日頃から自身の体調の変化を把握するよう、企業からもアナウンスしておきたい。

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従業員の感染に備えて企業が考えておきたいこと

 従業員に感染の疑いがあるときは、「他の従業員へ伝染させない」「本人の症状を悪化させない」の2つの観点から対処する必要がある。また適切な対応を取るためには、企業がガイドラインを定め、社内に周知しておくことも重要だ。ここでは、従業員の感染に備えて事前にしておくべき対策について見ていこう。

報告のフローを決めておく
 従業員に何らかの症状が出た際、企業側がスムーズに状況を把握し、その後の対応に当たれるよう報告フローを決めておこう。従業員も「いつ」「だれに」「どのように」連絡を行う必要があるかを知っておくことで、慌てずに対処ができる。派遣労働者がいる場合は、自社への連絡に加えて派遣元への報告も必要となる。誰がどのように対応し報告するのか、役割分担を明確にしておくと良いだろう。

 また、報告をする前の従業員の不安を取り除くためには、熱や疑わしい症状が続く場合の相談先として、各自治体ごとに開設されている「帰国者・接触者相談センター」の情報をアナウンスしておこう。いざという時の対応方法を正しく冷静に判断できるよう促すことが大切だ。

企業としての方針を定め、周知する
 企業としての対応方針を打ち出し、従業員に対して周知することも、混乱防止として効果的だ。その際は、「①就業規則への規定」「②出社するスタッフへの対応方法の決定」「③休みやすい労働環境の構築」がポイントとなる。

 まず、「有症状の場合、〇日間は自宅待機」「軽症で業務可能なら在宅勤務の実施」「業務が滞ってしまう場合や在宅ワークを導入していない業務の場合はすぐに上司へ相談する」など、企業で決めた方針は就業規則に規定することで、従業員の正しい判断にもつながる。状況にあわせて従業員がどのように対応したらよいか一目でわかるよう、フローチャートを作成するのもおすすめだ。

 また、勤務中に職場内で発熱者が出た場合に備え、対応を検討しておくのも良い。具体的には、定期的な消毒の実施や、マスクの着用、体温計測などが考えられる。その際は、有症状者との接触機会の有無などから、同じ部署内や企業全体など、対策を実施する範囲を定めておくと良いだろう。

 ただ実際に働く中では、少しの体調の変化を理由に休むことにうしろめたさを感じ、休むことで業務が滞ることを懸念する従業員もいると考えられる。柔軟なシフト調整やゆとりある従業員の配置などを行い、従業員が休みやすい労働環境を構築するのも、事態の悪化や感染拡大の防止に有効だ。「もしかしたら」と思ったときは、無理をして出社するより休養することを促したい。

感染者の情報開示の範囲を検討する
 仮に、従業員の感染が確定した場合は、感染経路や濃厚接触者を把握し、その後の感染拡大を防止するためにも感染者の情報開示を検討したい。情報を開示する際には、誰にどこまで情報を伝えるのかを決めておくことも必要だ。「内勤のみの事務職で、業務上接する人も限定的なのか」「営業職で外部との交流もあるのか」など、従業員の就業状況によっても異なるだろう。従業員ごとの状況を正しく把握した上で情報開示の範囲を決定し、予めリストを作成しておくと迅速に対応できそうだ。

 また、情報開示の際は、個人情報の取扱いには注意しよう。感染拡大を防ぐ目的で個人情報を開示する可能性があることを予め社内に通知し、該当する従業員に対しては、開示する前に本人にからも了承を得ておくとトラブルの防止にもつながる。加えて、情報開示により該当する従業員が心無い誹謗中傷を受けることがないよう、企業として配慮することも重要だ。

感染者のケース別の対応方法

 実際に、従業員やその近親者が感染した場合どのように対応していけばよいのだろうか。ここでは、感染者のケースごとに、必要な対応方法を解説する。

従業員が感染した場合
 従業員本人が感染した場合、本人に対しては、症状の有無に関わらず最低2週間は出社を禁止し、テレワークや自宅待機を伝えよう。症状が重い場合は入院治療となるが、軽度でものちに重症化する事例もあるため、できる限りの療養を促したい。

 同時に周囲に対する対応も必要だ。まず、感染拡大や十分な対策を講じるため、社内の必要な範囲への告知を検討したい。さらに、複数のテナントが入るビル内にオフィスがある場合は、同じビル内のテナントなど、外部に対しても感染の事実を伝えることが望ましい。その他、クライアントなど外部との接触がある場合や、不特定多数の人との接触を伴う業務に就く場合なども、企業として情報開示を行うことが必要になるだろう。その際は、事態への対応方法も同時に示すことが重要だ。

同居の家族が感染した従業員の場合
 配偶者や子どもなど、従業員と同居する家族が感染した場合は、下でも説明している「濃厚接触者」の範囲に含まれる。そのため従業員本人の症状の有無に関わらず、検査を促そう。また、在宅ワークが可能であれば2週間の在宅勤務を、難しい場合は自宅待機等の対応を取ることが望ましい。

取引先で感染者が出た場合
 自社の営業職が行き来する取引先などで感染者が出た場合も、従業員の接触状況によって2週間の在宅勤務を検討しよう。従業員には体調の経過観察と報告を行うように指示し、変化がある場合は早めに報告するなど、個別で対応方法を共有しておくと良いだろう。また、感染のリスクがあることで心理的な負担がかかっていることも考えられるため、相談窓口を決め十分なケアに努めたい。

従業員が濃厚接触者に該当した場合
 国立感染症研究所のHPによると、濃厚接触者とは患者の感染可能期間(発症の2日前)から、「①感染者と長時間接触した者」「②感染防護なしに診察や介護を行った者」「③気道分泌液や体液などに直接触れた者」「④1m以内の距離で、15分以上の接触があった者」とされている。従業員が濃厚接触者に当てはまるときは、検査を促し、症状の有無にかかわらず最低2週間は自宅待機、または在宅勤務を行うように指導しよう。上述と同様に、従業員の不安に対しての相談窓口を設けるのも良い。

感染対策にかかる休業の場合の手当について

 感染対策として自宅待機を命じたり、実際に感染して仕事を休んだりした場合、従業員に対してどのような補償をする必要があるのかも予め知っておきたい。ここでは、ケースごとにどのような補償対象となるのかを解説していく。

感染が疑われるため自宅待機を企業が命じた場合
 感染が疑われる状況で従業員に自宅待機を命じた場合は、一般的には休業手当の支給対象となる。休業手当とは、労働基準法第26条に規定され、「雇用主の責任において発生した休業に対し、賃金の6割以上の手当の支払いを義務づける」ものだ。従業員本人の感染の可能性が低い状況で企業が休業を求めた場合は、「使用者の責任」があるとみなされるため、休業手当の支給対象となる。

従業員の自主判断で休む場合
 反対に、感染が疑われる状況で本人の自主判断で会社を休む場合は、「使用者の責任」には当てはまらないため、休業手当の支給対象外となる。この場合、「連続3日以上を含む4日以上の休業」「業務とは無関係のケガや病気」など、一定の要件を満たせば他の疾病での休業の場合と同様、傷病手当の支給対象となる。ただ傷病手当は健康保険組合から支給されるものなので、従業員本人の申請が必要だ。

実際にコロナウイルスに感染した場合
 実際に新型コロナウイルスに感染した場合も、「傷病手当」の支給対象だ。ただし、傷病手当の支給要件には、給与や手当の支払いがないことも条件の一つとなっており、二重支払いは出来ないため注意が必要だ。ただし、「業務中」「通勤中」に感染した場合は、傷病手当ではなく、労災保険給付の対象となるので合わせて覚えておきたい。

子どもが家にいるなどで出勤できない場合
 実際に新型コロナウイルスに感染した場合も、「傷病手当」の支給対象だ。ただし、傷病手当の支給要件には、給与や手当の支払いがないことも条件の一つとなっており、二重支払いは出来ないため注意が必要だ。ただし、「業務中」「通勤中」に感染した場合は、傷病手当ではなく、労災保険給付の対象となるので合わせて覚えておきたい。

子どもが家にいるなどで出勤できない場合
 新型コロナウイルス感染症拡大の防止対策として小学校等の臨時休校が続いていることから、家庭での育児のために従業員が有給の休暇を取得した場合、正規雇用・非正規雇用問わず、費用を助成する制度が創設された。企業が特別休暇を導入した後に従業員がこの制度を利用した場合、申請すれば費用の一部が助成されるため、必要に応じて活用してほしい。

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まとめ

 世界的な流行により、終息の気配が見えない新型コロナウイルスの感染拡大。都市部では感染元が特定できない事例も目立つようになり、いつ誰が感染しても不思議ではない状況だ。企業における感染対策は、「感染を拡大させないこと」「症状を悪化させないこと」の2点が重要なポイントとなる。事業継続と従業員の健康を守るためにも、状況を踏まえた適切な対応を検討してほしい。

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