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おさえておきたい!人事・労務の基礎知識Vol.1 コロナウイルスでの欠勤は「休業手当」の対象? 対象となるケースや金額の計算方法を詳しく説明

2020.04.14

 会社の休業時に労働者に対して支払われる休業手当。どのような場合に支払われ、いくら支払う必要があるのだろうか。人事や労務担当者は、支払い義務の有無や金額などのポイントを押さえておくことで、トラブルを未然に防ぐこともできるだろう。

 今回は、「どのような場合に支払われるのか」などの休業手当の基礎知識と計算方法、類似する制度との違いについて見ていく。また雇用形態の違いや休業の理由など、具体的なケースを挙げて、休業手当の支払いが必要になるか考え方のポイントや手当の計算方法を解説する。

目次

●休業手当とは
●休業手当の対象となるケース
●具体的なケースごとに対象になるかを検証
●まとめ

休業手当とは

 休業手当とは、労働者が休業した場合に賃金と同様に支払う手当を指す。ただし、支給する必要があるのは、一定の条件を満たす休業に対してだ。ここでは、どのような休業の場合に休業手当を支払う必要があるのか、休業手当の概要と実際に支払う金額、類似する制度との相違点を見ていく。

休業と休暇・休日の違い
 前提として、「休業」と「その他の休日」の違いを確認しておきたい。休業、休暇、休日は3つとも全て出勤しない・働かない日を指すが、それぞれの意味が異なる。「休日」は労働する義務がない日を指すのに対し、「休業」と「休暇」は本来使用者により労働日として労働の義務を課された日のなかで、なんらかの事情や理由によって労働義務を免除された日を指す。休業手当の「休業」もこれに当たる。

休業手当の支払い義務があるケース
 休業手当は労働基準法第26条に規定されており、使用者の責任において発生した休業に対しては、一定額以上の手当の支払いを義務づけている。具体的には以下のようなケースが挙げられる。

・経営の悪化により仕事量が減少した場合
・ストライキの結果
・生産調整のための一時帰休
・原材料の不足による休業
・監督官庁の勧告による操業停止

休業手当で支払う金額
 続いて、具体的にどの程度の金額を支払う必要があるのか見ていく。労働基準法第26条によると、休業手当の額は「平均賃金の百分の六十以上」と定められている。平均賃金は過去3ヶ月分の賃金の合計額を、その3ヶ月の暦日数で割って出た金額のことで(労働基準法第12条)、その60%以上に対して支払い義務が生じることになる。

 また一日のうち半日だけなど一部のみ業務に当たった場合の規定もあり、実際の労働時間に対する賃金が平均賃金の60%に満たない場合は、その差額分を支払う必要がある。ただし、使用者が予め定めた休日は支払いの対象外だ。

休業手当の支払い方法
 では、休業手当の支払いはどのように行なうのか。休業手当は労働基準法が定める「賃金」の一つとして扱われる。そのため支払いは賃金と同じように毎月1回以上一定の期日を定めて支払うとされている。(労働基準法第24条・支払いの5原則)よって、休業手当は労働者側の支払い申請手続きは不要だ。

 また賃金として支払われるため、労災や雇用保険、健康保険、厚生年金保険の保険料計算の対象であり、源泉所得税の課税対象にもなる。そのため通常の給与と同様に、労働者負担分を手当から控除することができる。また給与と同じ扱いのため、所得税の対象にもなる。

休業手当と「有給」「休業補償」との違い
 「有給」(年次有給休暇)は労働基準法39条に定められており、休業手当と大きく違うのは、支払い賃金の割合だ。休業手当は平均賃金の60%以上となっているのに対し、有給の場合は100%の支払い義務が生じる。また正規雇用・非正規雇用などの雇用形態に関係なく、全ての労働者の権利として認められている。労働者の希望があれば、休業手当の代わりに使用することも可能で、その場合は平均賃金の60%以上ではなく、100%を支払うことが必要だ。

 一方「休業補償」とは、労働基準法76条に規定されており、業務災害によるケガや病気の治療をするために働けなかった日に対し、使用者が平均賃金の60%を支払うものだ。休業手当との違いとして、休業補償では、「①支払い割合が定められていること」「②会社の所定休日でも支払われること」「③休業補償は非課税になること」が挙げられる。休業補償の支払い義務が生じた場合は、休業手当との違いをよく理解しておく必要があるだろう。

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休業手当の補償対象とは。感染症による休業の場合も解説

 労働者が休業する場合、その事由によっては使用者に休業手当を支払う義務が発生する。休業手当の補償対象となるのはどういったケースなのか、対象となるもの・ならないものを見ていく。また、新型コロナウイルス等への感染症を起因とする休業が補償対象となるかについて説明していく。

対象となるもの
 休業手当の支払い対象となるのは、基本的に「使用者の責に帰すべき事由による休業」だ。「使用者の責に帰すべき事由」とは、「使用者が休業になることを避けるための社会通念上最善の努力をしたかどうか」が判断の基準となる。事由には「使用者が何らかの事由であえて休業した」「過失で休業するしかない」「経営上の障害」などが挙げられ、具体的には次のようなケースだ。

・使用者が労働者を違法に解雇・出勤停止した場合
・機械の故障、検査
・原料や材料の不足
・電気等の燃料の供給不足
・運転賃金の不足等による操業の一部または全部停止
・新卒内定者に対する企業都合による自宅待機期間中

対象にならないもの
 休業の中には休業手当の対象とならないケースもある。使用者側に過失がなく、不可抗力で休業になる場合などだ。具体的には、以下のような休業が当てはまる。

・台風や地震などの自然災害による休業
・労働安全衛生法の規定による、健康診断の結果に基づいて行なった休業
・ロックアウト(ストライキなどへの対抗措置として会社が工場等を閉鎖すること)による休業
・ストライキ決行後、操業再開にあたって流れ作業の時間的格差のために一斉に就業させることが出来なかった場合
・解雇予告期間中

 また、休業期間中に使用者が定めた休日や、代休も支払い対象外だ。

新型コロナウイルスに関連して休業する場合は休業補償の対象?
 新型コロナウイルスなどの感染症に罹患した場合や、発熱や呼吸器症状がある場合に労働ができない場合もあるだろう。その場合に使用者に支払い義務が発生するかどうかは、ケースによって変わってくるようだ。

 例えば新型コロナウイルスに感染して休業する場合。この場合は使用者側の「責に帰すべき事由」には該当しないと考えられるため、休業手当を支払う必要はない。労働者が要件を満たせば、各保険者から傷病手当が支給されることになる。

 また感染が疑われるので休業する場合、「①労働者の自主判断で休む場合」と、「②使用者が自主判断で休ませる場合」とで手当発生の有無が変わる。「①労働者が自主判断で休む場合」は、通常の病欠と同じ扱いになる。そのため病気休暇制度等の活用を検討するとよいだろう。
 
 一方「②使用者が自主判断で休ませる場合」は、咳や発熱などの症状があることのみをもって一律に労働者を休ませる措置をとるなど、一般的には「使用者の責に帰すべき事由による休業」に当てはまるため、休業手当の支給対象になる。

 実際には、感染拡大の防止策として、一部の症状があることや、感染が疑わしい状況にある労働者を休業させることもあるだろう。その際には、国が雇用保険を活用し、休業手当の一定割合を企業などに助成する、雇用調整助成金の特例の利用も検討したい。一定の条件を満たすことで受け取れ、労働者に支払う休業手当の原資になるものだ。

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【ケース別】休業手当の支給対象になるかや金額を検証

 休業手当は、具体的なケースに応じて支払い義務の有無を見極める必要がある。使用者と労働者間のトラブルを防止するためにも、ここでは具体的な事例を挙げて、休業手当の支払い義務の有無や、金額を検証していく。

採用内定者
 採用内定者が経営不振のため自宅待機となる場合を考えてみる。一般的に経営不振は「使用者の責に帰すべき事由」にあたると考えられるので、業績労働契約が成立したと認められている期間は休業手当の支払い対象だ。

 新型コロナウイルス感染症の拡大を要因とする企業の業績不振の場合、「使用者の責に帰すべき事由」についての判断は難しいが、天災などの不可抗力に該当しない限りはこれに含まれるとされている。自宅待機を回避するための努力がなされたのかを、総合的に勘案して判断する必要があるだろう。

午前中のみ勤務した場合
 午前中のみ勤務など、所定労働時間の一部だけの勤務とし、それ以外の時間を休業としたことで、その日の賃金が平均賃金の60%に満たない場合は、その差額分を休業手当として支払う必要がある。一方で、半日分の賃金が平均賃金の60%以上に達していれば、使用者が休業手当を支払う必要はない。

<例>
【時給】1000円
【通常の平均賃金】8,000円
【平均賃金の60%】8000円×0.6=4,800円

①5時間働いて、残りを休業とした場合
1000円×5時間=5000円
→【平均賃金の60%】以上のため、休業手当を支払う必要はない

②4時間働いて、残りを休業とした場合
1000円×4時間=4000円
→【平均賃金の60%】より800円少ないため、差額の800円分を休業手当として支払う必要がある。

時給制のパートやアルバイトの場合
 時給制で働くパートやアルバイトの場合も、正社員と同様に休業手当の支払い対象になる。ただし労働日数が少ないことから、平均賃金が低くなりがちだ。そのため平均賃金の計算方法が、「通常」以外にも「最低保証額」の算出方法がある。それぞれの計算方法で平均賃金を算出し、いずれか高い方を休業手当の計算に適用することとされているので、覚えておきたい。

以下の条件で例を挙げて見ていく。

<例>
【時給】1,000円
【勤務時間】8時間/日
【日数】15日/月
【直近3ヶ月】4月1日~6月30日の91日間

①平均賃金の通常の計算方法
直近3ヶ月の賃金総額÷直近3ヶ月の総歴日数
=(1,000円×8時間×15日間×3カ月)÷91日
=3,956円

②最低補償額の平均賃金の計算方法
=直近3ヶ月の賃金総額÷その期間の実労働日数×60%
=(1,000×8時間×15日×3カ月)÷(15日間×3カ月)×0.6
=360,000円÷45×0.6
=4,800円

 この場合、通常の平均賃金の算出方法より最低保証額の方が高額になる。そのため最低補償額の4,800円が平均賃金となり、一日の休業手当はその6割の2,800円となる。

派遣社員
 派遣労働者も休業手当の支払い対象となり、支払い義務を持つのは派遣先の企業ではなく、派遣元の企業となる。ただし、派遣元が休業手当を支払う代わりに、新しい就職先を紹介することもあるようだ。トラブルを避けるためにも、予め休業の際の対応方法について派遣会社と使用者、労働者との間で合意が必要だろう。

まとめ 

 企業など、使用者の責に帰する要因から休業する場合に支払われる休業手当。平均賃金の6割以上が支払額となる点や、休業補償など類似する制度との違いも重要なポイントと言えそうだ。また、実際に支払う義務が生じるかどうかは具体的な事例によって変わってくる。企業側には、休業手当のポイントを押さえ、企業と労働者を守る対策を講じる必要があるだろう。

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