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労働基準法の内容や改正後のポイントとは?!分かりやすく解説

2020.06.09

 職場で起こりうる様々なトラブルを回避するためには、労働基準法の知識が欠かせない。労働基準法は労働者の権利を守るための法律で、企業にはこの法律を正しく理解し、法に沿って経営することが求められる。

 そこで今回は労働基準法の内容について説明するとともに、働き方改革に伴う変更点や違反事例についても解説していく。

労働基準法について

 労働基準法は、正社員やパート、アルバイトなど雇用形態を問わず、日本国内の事業に従事するすべての労働者に適用される法律である。賃金や労働時間、休日や年次有給休暇といったいわゆる「労働条件」についてその最低基準を定めるもので、労働契約関係についても規定している。

 これは労働者の生存権の保障を目的に制定されたもので、ここに定められた基準を下回る労働条件はたとえ合意があっても法的に無効とされる。

労働基準法の主な内容とは

 労働基準法は全12章から成り、労働条件や契約に関して細かな取り決めがなされているのである。では、各章の内容について一つ一つ見ていこう。

①労働条件の明示
 使用者が労働者と労働契約を結ぶ際には、賃金や労働時間など厚生労働省が定めた労働条件を明示しなくてはならない。もちろん嘘の条件を提示することも違法となる。実際の労働条件と提示された内容が異なっていた場合には、労働者は即時に労働契約を解除することができるのである。

②解雇の予告
 会社の都合で労働者を解雇する際には、少なくとも30日前には解雇の予告をしなくてはならない。もし予告をしなかった場合には、平均賃金の30日分の額に相当する解雇予告手当を支払うことが必要となる。なお、仮にこの手続きに従ったとしても、そもそも解雇の理由自体が客観的な合理性を欠いている場合は、解雇そのものが無効となる。

③賃金支払いの4原則
 労働者に対する賃金の支払い方法については、4つの原則が定められている。通貨支払いの原則(通貨で支払うこと)、直接払いの原則(賃金を労働者に直接支払うこと)、全額払いの原則(賃金を全額支払うこと)、そして毎月1回以上一定期日払の原則(毎月1回以上決められた日に支払うこと)である。労働者が使用者に対して債務を負っている場合でも、それを相殺することは「臨銀全額払い原則違反」として禁止されている。ただし法令や労働協約で別に定めがあるなどの条件を満たせば、通貨以外での支払いや一部控除したうえでの賃金支払いも可能である。

④労働時間の原則
 労働時間に関しては、休憩時間を除き週の労働は40時間を超えさせないこと、1日の労働は8時間を超えさせないことが使用者に対して義務付けられている。ただし、働き方改革に伴って従来とは異なる変則的な労働時間を取り入れる企業も増えてきており、一部例外となるものもある。例外となるのは例えば変形労働時間制やフレックスタイム制、裁量労働制などが当てはまる。

⑤休憩
 労働時間が一定の時間を超える場合、途中で一斉に休憩時間を与えることも使用者の義務とされている。労働基準法に定められた休憩時間は、労働時間が6時間を超える場合で最低45分、8時間を超える場合で最低1時間である。休憩とは労働から解放されている時間と定義されており、労働者には自由に利用させなければならない。なお、作業中のちょっとした待機時間などは労働時間の一部とみなされ、休憩時間には含まれない。

⑥休日
 使用者は労働者に対し、最低でも週に1日は休日を与える必要がある。これは労働者の心身の健康を守り、ひいては過労死などの悲劇を避けるためのものである。なお、これは必ずしも毎週1日という形ではなく、4週間を通じて4日以上の休日を与える(=1週あたり1日以上)という形でも構わない。

⑦時間外および休日の労働
 時間外労働や休日労働をさせる場合は、労使協定を締結し労働基準監督署に届け出ることが必要だ。この労使協定は、労働基準法36条に基づくことから「36協定」とも呼ばれている。時間外労働や休日労働はこの36協定の定めに従えばさせることができるが、時間数には上限がある。時間外労働(休日労働を除く)は原則として月45時間、年360時間が上限となっている。臨時的な特別の理由があればこれを超えることはできるが、その場合でも時間外労働は年720時間以内、時間外労働と休日労働の合計は月100時間未満、2~6カ月の平均が80時間以内に収まるようにしなくてはならない。

⑧時間外、休日および深夜労働の割増賃金
 時間外労働や休日労働、深夜労働に対しては、賃金を割り増しして払う必要がある。その割増率は、法定時間外労働と深夜労働で25%増、休日労働で35%増となっている。2つの条件が重なる場合はさらに割増率が高くなり、法廷時間外かつ深夜労働の場合は50%増、休日かつ深夜労働の場合は60%増である。なお、法廷時間外労働が1カ月60時間を超えた場合、超えた部分に関しては25%増ではなく50%増となる(中小企業は2023年4月から適用)。

⑨年次有給休暇
 雇入れの日から6ヶ月以上継続して勤務し、全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、使用者は年次有給休暇を付与する義務がある。これは正社員に限らず、パートやアルバイトであってもこの条件を満たす人には付与しなくてはならない。付与日数は入社6か月時で10日、その後1年に1日ずつ増え、上限は20日である。有給休暇の取得は労働者の権利であり、原則として理由を問わず取得することができる。基本的には1日単位で取得するが、労使の合意があれば半日単位での取得も可能である。

⑩就業規則
 常時10人以上の労働者を使用している場合、使用者は必ず就業規則を作成して労働基準監督署に届け出なくてはならない。この10人は必ずしもフルタイムの正社員とは限らず、いかなる雇用形態でもまた勤務時間が短くても、雇用している人はすべて含まれるのである。

⑪制裁規定の制限
 労働者に違反行為があった際の制裁には、減給や出勤停止、懲戒解雇といったものがあるが、減給に関してはその金額に制限が存在する。違反行為が1回の場合、減給額は平均賃金の1日分の半額を超えてはならない。違反行為が複数回の場合、減給の総額は1賃金支払期における賃金の総額の10分の1が上限となる。

⑫周知義務
 使用者は労働者に対し、労働基準法や就業規則などを周知する義務がある。そのため、これらのものは常時作業場の見やすい場所に掲示するか備え付ける、書面を交付する、あるいは厚生労働省令で定める方法(磁気テープや磁気ディスク)を用いるなどしてきちんと伝えなければならない。仮に訴訟が起こった場合、周知していない就業規則はその効力を否定されることとなる。

働き方改革に伴う労働基準法の変更点

 「働き方改革関連法」が2018年に成立したが、それに伴い各種労働法規制の整備が行われた。労働基準法でもいくつかの点が改正されている。

 まず、時間外労働では罰則付き上限規制が導入された。これまで時間外労働は36協定により月45時間・年間360時間まで認められており、さらに特別条項付き36協定を結べば上限なしとすることもできたが、改正後は特別条項付き36協定があっても2〜6ヶ月間の複数月いずれかの平均が80時間を超える、あるいは1ヶ月100時間・年間720時間を超える時間外労働はできなくなっている。

 フレックスタイム制については、従来その清算期間が1ヶ月だったため月をまたいで労働時間を調整することができず、繁忙期と閑散期の調整ができにくいという問題点があった。改正後は清算期間が3ヶ月まで延長可能となり、月をまたいだ調整が可能になっている。ただし清算期間を延長する際には「労使協定の届出」と「月の労働時間の上限設定」が必要である。

 年次有給休暇の取得義務化も大きな変更点だ。今回の改正で、使用者は年間10日以上の有給休暇を付与される従業員すべてに年間5日以上の有給休暇を取得させなければならないことになった。取得日数が5日未満の従業員に対しては、会社が時期を指定して取得させることが義務化されている。

 また、新たに「高度プロフェッショナル制度」が導入されている。これは、年収1,075万円以上の一部の専門職を労働時間規制や時間外労働の割増賃金支払い規定の対象外とする、というものである。これが適用された従業員は勤怠管理の対象外となるが、そのため長時間労働になりやすいというリスクが生じる。そこで健康確保措置として、年間104日以上の休日確保や働く時間の上限設定などが義務化されている。

労働基準法の違反の罰則と事例

 企業が労働基準法に違反した場合には、そのケースに応じた罰則が与えられる。例えば労働者を監禁するなどして強制的に働かせた場合は「1年以上10年以下の懲役または20万円以上300万円以下の罰金」となる。中間搾取を行った場合は「1年以下の懲役または50万円以下の罰金」である。性別や国籍等を理由に差別的な待遇をした場合は「6ヵ月以下の懲役または30万円以下の罰金」である。契約時に労働条件を明示しなければ「30万円以下の罰金」が科せられる。罰則規定は他にもかなり細かく定められているので確認が必要だ。

 実際に書類送検された例としては、賃金未払いを繰り返す、一方的に予告なく解雇する、違法な時間外労働・休日労働を課す、休憩や休日を与えない、といったものがある。

正しい知識で正しい雇用を!

 労働基準法の改正点を見ると、使用者にとって「正確な労働時間をいかに把握するか」ということが重要な課題であることがわかる。労働基準法には厳格な罰則も規定されており、「知らなかった」で済ませることはできない。

 労働者を雇用するに当たっては、正しい知識を持って正しく雇用することが大変重要であるといえる。

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