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おさえておきたい!人事・労務の基礎知識Vol.10 健康保険の種類と手続きに必要な書類

2020.09.09

 社会保険における「健康保険」の手続きでは、企業による申請が義務付けられている。保険の手続きで必要な書類にはどのようなものがあり、どのような手順で申請を行うと良いのだろうか。

 今回は、社会保険における健康保険の種類、入社時や退職時、扶養者ができたときに必要となる書類、手続きの流れについて解説する。それぞれの項目を理解し、スムーズな手続きが行えるよう役立ててほしい。

目次

●社会保険における健康保険の種類
●健康保険の各手続きに必要な書類
●健康保険の各手続きの流れ
●まとめ

社会保険における健康保険の種類

 社会保険制度における健康保険の運営主体には、「健康保険組合」と「全国健康保険協会」の2種類がある。ここでは、それぞれの健康保険の特徴について説明する。

健康保険組合
 健康保険組合は企業が設立した健康保険の運営団体で、組合員の健康保険を管掌している。健康保険法で定められた保険給付などの事業を行う他、一定の範囲で付加給付を行う、人間ドッグの助成といった保健事業を任意に実施するなど、自主的な事業運営を行うことが可能だ。独自に保険料率を設定できるため、保険料が全国健康保険協会に比べ低めの傾向がある。

 健康保険組合には企業が単独で設立する「単一健保組合」と、2つ以上の企業が共同して設立する「総合健保組合」がある。組合の設立には事業所で常時働いている従業員数などに条件があるため、大企業が単独で設立する、または中小企業が何社か集まって設立することが一般的だ。

全国健康保険協会
 全国健康保険協会は、独自に健康組合を設立することが難しい中小企業で働く従業員やその家族などの健康保険を管掌している。従来は国(社会保険庁)が運営していたが、2008年の全国健康保険協会の設立に伴い、同協会が運営することとなった。

 運営母体が変わったことで、従来の「政府管掌健康保険」は愛称「協会けんぽ」となって運営されている。また、健康保険の給付手続や相談などは協会の各都道府県支部で行い、健康保険の加入や保険料の納付手続は日本年金機構(年金事務所)で行うことになっている。

健康保険の各手続きに必要な書類

 健康保険の手続きではどのような書類が必要なのだろうか。ここでは、従業員が入社したとき、従業員に扶養者ができたとき、従業員が退職するときそれぞれのケースで必要な書類を説明する。

従業員が入社したとき
 従業員が入社したときには、健康保険と厚生年金保険の加入手続きを同時に行うことが一般的だ。手続きに必要な書類は以下の通り。

・「健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届」
・氏名、生年月日、性別、住所を確認できる書類(運転免許証、パスポートなど)
・マイナンバーまたは基礎年金番号を確認できる書類(マイナンバーカード、通知カード、年金手帳など)

【必要に応じて】
・「健康保険被保険者資格証明書交付申請書」

「資格取得届」は従業員の「氏名」「生年月日」「性別」「住所」「マイナンバーまたは基礎年金番号」を確認した上で事業主が記入することになっているため、従業員にそれらの書類の提出を求め、確実な本人確認を行う必要がある。

 なお、健康保険被保険者証が交付されるまでには通常2週間ほどかかる。入社から20日以内に医療機関で受診する必要がある場合には、企業または従業員本人が「健康保険被保険者資格証明書交付申請書」を随時提出することで「健康保険被保険者資格証明書」が交付され、保険証と同様の負担額で医療機関を受診することができる。

参考:日本年金機構「従業員を採用したときの手続き」
参考:日本年金機構「従業員に健康保険被保険者資格証明書を交付するときの手続き」

従業員に扶養者ができたとき
 従業員に配偶者や子、父母や祖父母などの扶養者の追加があった場合には、その都度手続きを行う。なお、被扶養者に該当するには、原則として以下の要件を満たしていることが必要だ。

・日本国内に住所(住民票)を有しており、被保険者が主に生計を維持していること
・配偶者、直系尊属、子、孫、兄弟姉妹以外の3親等内の親族の場合、同一世帯であること
・年間収入が130万円未満(60歳以上又は障害者の場合は、年間収入180万円未満)かつ
 同居の場合、収入が扶養者(被保険者)の収入の半分未満
 別居の場合、収入が扶養者(被保険者)からの仕送り額未満であること

上記の要件を満たした上で、必要となる書類は以下の通り。

・「健康保険 被扶養者(異動)届」
・「被扶養者の戸籍謄(抄)本(被保険者との続柄がわかるもの)」または「被保険者の住民票(被保険者が世帯主で、被扶養者と同一世帯である場合に限る)」
・収入要件確認のための書類

原則として、「健康保険 被扶養者(異動)届」に「続柄確認のための書類」と「収入要件確認のための書類」を添付する必要がある。収入要件確認のための書類は「課税(非課税)証明書」や「退職証明書」など被扶養者の状況によって異なるため、詳しくは管轄の年金事務所に問い合わせると良いだろう。

参考:日本年金機構「従業員が家族を扶養にするときの手続き」

従業員が退職するとき
 従業員が退職するときに必要な書類は、以下の通り。退職日を過ぎると健康保険証が使用できなくなるため、協会けんぽの被保険者の場合は本人と被扶養者の保険証を添付しなければならない。

・「健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届」

【協会けんぽの被保険者の場合】
・健康保険被保険者証(本人分及び被扶養者分)
・高齢受給者証、健康保険特定疾病療養受給者証、健康保険限度額適用・標準負担額減額認定証(交付されている場合のみ)

なお、退職後の保険について、従業員は以下の3つのいずれかを選択し、加入する手続きを行わなければならない。

①これまでの健康保険を任意継続する
②国民健康保険に切り替える
③家族の社会保険に被扶養者として入る

任意継続する場合は「健康保険任意継続被保険者資格取得申出書」、国民健康保険に切り替える場合は「健康保険・厚生年金保険 資格取得・喪失等確認請求書」などが必要となるため、退職前に従業員に意向を確認し、あらかじめ必要書類を準備しておこう。

参考:全国健康保険協会「退職後の健康保険について」
参考:日本年金機構「従業員が退職・死亡したときの手続き」

健康保険の各手続きの流れ

 健康保険の手続きは短期間で申請が必要なため、あらかじめ手続きの流れを理解し、スムーズに処理を行うことが大切だ。ここでは、企業が行う健康保険の手続きの流れを説明する。

従業員から書類を回収する
 各手続きにおける書類の提出は、従業員の入社や退社、扶養者が増えた日から5日以内に企業が提出することになっている。そのため、事前に従業員に必要な書類を明示し、回収しておく必要がある。例えば、採用通知書を送付する際「入社日に持参する書類一覧表」を同封する、退社日の数週間前に本人と面談し意向を聞いた上で必要な書類の提出を求めるなどすると良いだろう。

書類を整えて提出する
 従業員から書類の記入に必要な書類を回収したら、それをもとに届出書などの記入を行って書類を作成しよう。添付書類を含めて必要な書類が整ったら、事実の発生から5日以内に日本年金機構へ提出する。

 健康保険の手続きにおける書類の提出方法には、以下の3つがある。届出用紙の他、電子媒体(CDまたはDVD)による提出が可能だ。

①各都道府県にある事務センター(もしくは所在地を管轄する年金事務所)に郵送
②所在地を管轄する年金事務所の窓口へ持参
③インターネットを利用して電子申請

参考:日本年金機構「健康保険・厚生年金保険適用関係届書・申請書一覧」

まとめ

 健康保険の手続きでは従業員や家族の状況によって必要な書類が異なるだけでなく、書類の提出期限が短いため、スムーズな流れで行うことが重要だ。迅速で正確な対応ができるよう、担当者は手続きについての理解を深めておこう。

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