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おさえておきたい!人事・労務の基礎知識Vol.9 年末調整の流れと手順

2020.10.27

 従業員がいる企業では、毎年必ず行わなくてはならない「年末調整」。取り扱う申告書が多く、従業員によって必要な書類が変わるため、複雑で手間のかかる業務になりがちだ。また、年に1回の作業なので、そのたびに手順に戸惑う担当者もいるのではないだろうか。

 今回は、年末調整の概要や対象者、それぞれの手順を見ていく。また、複雑になりがちな年末調整業務を効率化するためのおすすめサービスも紹介する。年末調整業務全体の流れやポイントを押さえ、役立ててほしい。

目次

●年末調整とは
●年末調整の対象者
●年末調整の流れと手順
●年末調整おすすめサービス
●まとめ

年末調整とは

 年末調整は、給与支払いがある従業員に対し、企業が毎年必ず行わなければならない業務の一つだ。まずは、年末調整の概要を確認しよう。

年末調整の概要
 年末調整は、企業が従業員の給与や賞与から天引き(源泉徴収)した所得税と、本来支払うべき所得税の金額を調整し、確定させる業務だ。

 所得税は年間の所得に対して課税されるため、本来は一年間の所得が確定しないと正確な金額を把握できない。しかし、正確な金額を把握してから一括請求すると、従業員にとって大きな負担となる。そのため、通常は従業員の所得税を概算で算出し、毎月の給与から源泉徴収している。年末調整は、「概算の源泉徴収税合計」と「一年間の所得に応じて本来の年収で支払うべき所得税」との過不足を精算するために行う。仮に徴収額が多ければ、差額の返金が必要だ。

確定申告との違い
 年末調整と同じく、個人が支払う税金を確定させるための手続きには「確定申告」もある。年末調整は給与所得者を対象として事業主が行うのに対し、確定申告は各個人が税務署へ確定申告書を提出して行う手続きだ。年末調整と確定申告の主な違いは次の通り。

 

年末調整の対象者

 年末調整は基本的に、「給与の支払いがある従業員すべて」が対象となる。ここでは、年末調整の対象者を詳しく確認していく。

12月に行う年末調整の対象者
 12月に行う年末調整の対象となる人は、「企業などに一年間を通じて勤務している人」や「年の途中で就職し、年末まで勤務している人」だ。企業に雇用されている人は雇用形態を問わず年末調整の対象となるが、派遣社員については、派遣元が年末調整を行う。

年の途中で行う年末調整の対象者
 次の要件のいずれかに当てはまる人は、年の途中で行う年末調整の対象者となるので注意が必要だ。

①海外支店などに転勤したことにより、非居住人となった人
②死亡により退職した人
③著しい心身の障害のために退職した人(退職後再就職をし、給与を受け取る見込みのある人は除く)
④12月に支給の給与などの支払いを受けた後に退職した人
⑤いわゆるパートタイマーとして働く人が退職した場合で、本年中に支払いを受ける給与総額が103万円以下である人(退職後、その年に他の勤務先から給与の支払を受ける見込みのある人は除く)

年末調整の対象にならない人
 次のいずれかに当てはまる人は、年末調整の除外対象だ。

①一年間の給与総額が2,000万を超える人
②災害減免法の規定により、その年の給与に対する所得税および復興特別税の源泉徴収について、徴収猶予や還付を受けた人
③副業などで2ヶ所以上の収入源があり、他の給与支払者が扶養控除等(異動)申告書を提出している人

参考:国税庁「No.2665 年末調整の対象となる人」

年末調整の流れと手順

 年末調整では取り扱う書類が多く、従業員毎に計算などの業務が発生することから、担当者の負担が大きい。さらに、その年の最後に支払う給与でまとめて精算するため、時期に間に合うように実施することが大切だ。このように煩雑な年末調整をスムーズに行うためには、業務手順を大きく3つのステップに分けて考え、実施すると良いだろう。それぞれのステップで行う業務を紹介する。

【ステップ1】従業員による申告(~11月)
 まず、対象となる従業員に年末調整に必要となる各種書類を配布し、必要事項の記載を依頼しよう。年末調整の必要書類には、「必ず提出が必要な書類」と「該当者は提出が必要な書類」の2つのパターンがある。それぞれの書類は以下の通りだ。

①必ず提出が必要な書類
・「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」

②該当者は提出が必要な書類
・所得控除が受けられる保険料や確定拠出年金などの掛金がある人
→「給与所得者の保険料控除申告書」と「控除証明書類」

・配偶者控除を受けられる人
→「給与所得者の配偶者控除等申告書」

・住宅ローンを利用しマイホームの取得をした人
→「住宅借入金等特別控除申告書」

・転職で途中入社した人
→前職の「源泉徴収票」

 2020年の年末調整から、「給与所得者の配偶者控除等申告書」は、基礎控除や所得金額調整控除の適用を受けるための兼用様式として「給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」に様式が変更になっている。

参考:国税庁「変更を予定している年末調整関係書類(事前の情報提供)」

【ステップ2】年末調整の計算(~12月)
 各種申告書の回収が完了したら、年末調整の計算を行い、結果を源泉徴収票にまとめる。年末調整の計算は次の通りだ。

①課税給与所得金額の計算
課税給与所得金額=給与所得控除後の給与等の金額-所得控除の合計額

所得控除額=(社会保険料控除額・小規模企業共済等掛金の控除額・生命保険料の控除額・地震保険料の控除額)+      (配偶者控除額・配偶者特別控除額・扶養控除額・障害者等の控除額・基礎控除額)

なお、「平成30年度税制改正大網」を受け、2020年1月から源泉所得税の改正が行われる。これにともない「給与所得控除額と基礎控除の引き下げ」や「所得金額調整控除の創設」、「配偶者・扶養親族等の合計所得金額要件等の見直し」が行われるため、注意しよう。

参考:国税庁「変更を予定している電子計算機等による年末調整に使用する表(令和2年分)(事前の情報提供)」

②年調所得税額の計算
 年調所得税額の計算は、「課税給与所得金額に対する算出所得税額の速算表」から算出所得税額を確認。算出所得税額から住宅借入金等特別控除額を差し引いて算出する。

 なお、2020年の年末調整から国税庁の「課税給与所得金額に対する算出所得税額の速算表」(令和元年分年末調整のしかたのⅥ電子計算機等による年末調整82~83p)は、次のように変更される予定だ。

 課税給与所得金額が18,050,000円を超える場合は年末調整の対象外だ。

参考:国税庁「変更を予定している電子計算機等による年末調整に使用する表(令和2年分)(事前の情報提供)」
参考:国税庁「令和元年度分年末調整のしかた」

③年調年税額の計算
年調年税額=年調所得税額×102.1%(100円未満の端数切捨て)

 年調年税額(年末調整の金額)が計算ができたら、従業員毎に源泉徴収票を作成する。源泉徴収票は、税務署への提出用、本人への交付用、市町村へ提出する給与支払報告書の3種類がある。

【ステップ3】法定調書の作成・提出と源泉徴収税の納付(~1月)
 源泉徴収票の作成後は、税務署や市区町村に提出する法定調書の作成・提出、および源泉徴収税の納付を行う。提出が必要になる法定調書は4種類で、「支払調書」「法定調書合計表」「源泉徴収票」「給与支払報告書」だ。それぞれの書式は国税庁と総務省のホームページからDLできるので、活用しよう。

 2020年の年末調整から、提出書類が100枚以上ある場合は電子申請での提出が義務付けられた。法定調書が100枚以上発生するかどうか、予め確認しておこう。

 源泉徴収税の納付期限は1月10日となっており、法定調書の提出期限よりも早い。「所得税徴収高計算書(納付書)」を作成し、税務署に提出・納付しよう。ただし、納期の特例事業者に関しては、1月20日が納付期限となる。

参考:国税庁「法定調書関係」

参考:国税庁「No.7455 法定調書の提出枚数が100枚以上の場合のe-Tax又は光ディスク等による提出義務」

年末調整おすすめサービス

 複雑で手間がかかる年末調整だが、サービスを利用することで業務の効率化をはかれる。年末調整を効率的に行えるおすすめサービスを紹介する。

株式会社SmartHR 年末調整パーフェクトガイド
  「申告書の印刷、配布、回収」「記入例等のマニュアル作成」「大量のチェック業務」「提出が遅れている方へのリマインド」など、多岐にわたる年末調整業務をなるべくスムーズに行いたい、少ないリソースで効率的に行いたいと考えることもあるだろう。株式会社SmartHRが提供するサービスSmartHRには、年末調整を行う機能が搭載されてる。「従業員による必要事項の入力」や「CSVを使った情報出力」、「源泉徴収票の作成」など、年末調整の各ステップをすべてWeb上で完結でき、効率化がはかれる。

参考:株式会社SmartHR「年末調整パーフェクトガイド」
参考:株式会社SmartHR「年末調整が、ペーパーレスに。

まとめ

 源泉徴収された税金と、本来支払うべき税金との差額を調整するために行う年末調整では、従業員各々に対し、各種申請書の提出や複雑な計算が必要だ。年末調整と源泉徴収税の納付には期限が定められているため、対象者やフローを押さえ、早めの準備を心がけると良いだろう。また、手間のかかる業務の効率化がはかれるサービスの利用を検討してみてはいかがだろうか。

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