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法律から考える生理休暇。賃金や申請の方法なども解説!

2021.03.26

 女性従業員が利用できる休暇制度の1つに、「生理休暇」がある。対象となる従業員から生理休暇の請求があった場合、企業にはどのような対応や配慮が求められるのだろうか。

 今回は、生理休暇の基礎知識や賃金の支払いの有無、取得のフローや必要書類などについて紹介する。

目次

●生理休暇とは?企業の取得実態も紹介
●生理休暇中の賃金はどうなる?
●生理休暇取得のフローを紹介。取得のために必要な書類はある?
●まとめ

生理休暇とは?企業の取得実態も紹介

 生理休暇とは、法律で認められている女性従業員の権利だ。まずは、生理休暇の概要や対象、日数制限や企業の取得状況について見ていこう。

生理休暇とは
 「生理休暇」とは、1947年に制定された労働基準法内に盛り込まれた休暇制度のこと。働く女性を保護するために取り入れられた、日本独自の制度だ。

 同法第68条によると「使用者は、生理日の就業が著しく困難な女性が休暇を請求したときは、その者を生理日に就業させてはならない」とされている。法律で定められた制度であるため、就業規則に規定がない場合でも、従業員から請求があった際は必ず付与しなければならない。

対象となる従業員
 生理休暇は雇用形態にかかわらず取得が可能とされており、正社員に限らず、契約社員やパートタイマー、アルバイトでも請求することができる。ただし、「生理日の就業が著しく困難」であることが条件となるため、生理日だからという理由のみでは取得できないことに注意が必要だ。

生理休暇の日数制限
 生理の日数やその間の体調の程度、就労の可否には個人差があるため、就業規則などで生理休暇の日数を制限することはできない。なお、必ずしも1日単位で付与する必要はないため、従業員から半日単位や時間単位で請求された場合はその範囲で付与することが可能だ。

企業の取得状況
 厚生労働省が実施した調査によると、女性がいる企業のうち2014年度(2014年4月1日~2015年3月31日)に生理休暇の請求者がいた企業は2.2%で、2007年度の5.4%から3.2%低下した。また、同年度、女性従業員のうち生理休暇を請求した人の割合は0.9%だった。

参考: 厚生労働省「『平成27年度雇用均等基本調査』の結果概要」P23

生理休暇中の賃金はどうなる?

 生理休暇を取得した従業員に、賃金を支払う必要はあるのだろうか。ここでは、法律上の生理休暇の取り扱いについて紹介する。

賃金が発生するかは企業によって異なる
 生理休暇を有給とするか無給とするかは法律で明記されていないため、企業が定めることができる。前述の通り生理休暇の取得日数を制限することはできないが、「有給とするのは1カ月につき1日に限り、それ以上の日数を取得した場合は無給とする」というように、有給扱いにする日数を定めることは可能だ。

 なお、賃金が発生する生理休暇を取得した場合でも、年次有給休暇の日数が減ることはない。そのため、賃金が発生するか否かに関わらず、既に年次有給休暇を使い切ってしまった従業員でも生理休暇を請求・取得することができる。

出勤扱いにする必要はある?
 生理休暇取得日を出勤扱いとするか否かについても、労使間の合意に委ねられている。ただし、年次有給休暇の付与要件には「全労働日の8割以上出勤していること」がある。そのため、生理休暇を欠勤として扱う場合、生理休暇の取得日数が多くなると、有給休暇が付与されなくなる可能性がある。企業は上記を踏まえて、生理休暇の扱いを検討する必要があるだろう。

生理休暇を「有給」として設けている企業の割合
 前述の厚生労働省の調査によると、生理休暇中の賃金を「有給」とする企業の割合は2014年度時点で25.5%(2007年度42.8%)、そのうち70.6%(同70.0%)が「全期間100%支給」としている。無給としている企業は74.3%という結果であった。

参考: 厚生労働省「『平成27年度雇用均等基本調査』の結果概要」

生理休暇取得のフローを紹介。取得のために必要な書類はある?

 従業員から生理休暇の請求があった場合、企業はどのように対応するとよいのだろうか。ここでは、取得のフローや申請に必要な書類、請求を拒否した場合の罰則について紹介する。

取得のフロー
 生理休暇はその性質上事前に申請することが難しいため、当日に口頭で申請すること一般的だ。半日や時間単位の取得も可能であるため、以下のような取得方法が考えられる。

例)就労時間が8:00~17:00、休憩時間が12:00~13:00の場合

(1)日数単位で取得:終日(8:00~17:00)休暇を取る
(2)半日単位で取得:午前(8:00~12:00)または午後(13:00~17:00)に休暇を取る
(3)時間単位で取得:8:00~9:00に休暇を取る、15:00~17:00に休暇を取るなど

 例として、「出社したものの急に体調を崩したため、半日単位で休暇を取る」「著しい体調不良のため、1時間休暇を取り出勤を遅らせる」などのケースが考えられるだろう。

申請に必要な書類
 従業員が生理休暇を取得する際、医師の診断書などの提出を求めることは体調不良中の外出を促し本来の権利の行使を妨げることになるため、基本的に不要とされている。

 生理中の体調不良が何カ月も続く場合、生理中は「月経困難症」、生理前は「月経前症候群(PMS)」の診断をしてもらうことも可能なようだが、本来は、仮に企業が証明を求める場合でも、上司や同僚の証言など、簡単な証明で足りるとされている。

従業員の請求を拒否すると罰則の対象になる
 企業が生理休暇の取得を希望する従業員の請求を拒否した場合、労働基準法第120条第1項に違反し、30万円以下の罰金の対象となる。スムーズな取得が行えるよう、企業内への周知や、フォロー体制の見直しをしておくとよいだろう。

まとめ

 生理による体調不良で就業が困難な場合に女性従業員が請求できる「生理休暇」について紹介した。労働基準法で定められている権利であるため、従業員から請求があった場合、企業はすみやかに許可することが求められる。賃金や出勤の取扱は各企業によって異なるため、一度就業規則や企業ルールを確認しておこう。

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