リーガルテックとは?注目される背景や主なサービスと導入メリットを紹介
先進的な企業において、電子契約サービスを筆頭にした契約関連業務のIT化が進んでいる。今回は徐々に浸透し始めた「リーガルテック」について、その定義やサービスの詳細について解説していく。
リーガルテックは法務分野の業務のDXを推進するテクノロジー
リーガルテックとは「法律×テクノロジー」を組み合わせた、法律分野にテクノロジーを用いて効率化をはかるシステムのこと。
2019年に行われた矢野経済研究所によるリーガルテック市場調査によると、市場規模の予測では右肩上がり。具体的な数字については以下の通りだ。
2021年 309億円(対前年比+107.7%)
2022年 331億円(対前年比+107.1%)
2023年 353億円(対前年比+106.6%)
リモートワークなど働き方の多様化に加え、人材不足も要因となり、より効率的に業務をこなしたい企業の思いが見え隠れしている。(参照:矢野経済研究所「リーガルテック国内市場規模推移と予測」)
https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/2224
当初は電子契約サービスがリーガルテック市場の大半を占めていたが、徐々に契約手続きに関するサービスの利用も増えてきた。現在では大きく分けて、「電子契約」「契約書管理」「契約書レビュー」の3つのリーガルテックサービスが提供されている。続いての章では、これらサービスを細かくみていくことにする。
リーガルテックの主なサービス領域とサービス例
リーガルテックで提供されている「電子契約」「契約書管理」「契約書レビュー」のそれぞれの内容、市場で提供されているサービスについて紹介していこう。
<電子契約>
判子を押して印紙を貼って郵送して、などと手間と時間と手数料がかかっていた契約書類の作成。電子契約を利用すれば、契約書の作成も定型文があるなどして素早く作成可能。作成した契約書はオンライン上でやりとりすることができ、遠方の商談でもスピード感をもった契約が可能になった。多くの企業が電子契約の利便性に気づき、現在はリーガルテック市場でもっとも浸透しているサービスだ。ここで、日本のシェアNO.1、世界シェアNO.1のサービスを紹介しよう。
❖ クラウドサイン
リーガルテックを代表する企業である弁護士ドットコム株式会社が運営する「クラウドサイン」。2020年3月末時点での業界シェアが80%以上で、国内シェアNO.1のサービスだ。
契約書の有効性を高めるタイムスタンプの付与や有効期限10年の長期署名にも対応しており(どちらも有料プラン)、名だたる大企業が採用している。ISO27001の認証も取得しており、セキュリティも抜かりない。
ただ、契約書を送信するごとに従量料金がかかるので、他社サービスと比べる際には比較のポイントとするとよいだろう。
有料プラン 月11,000円〜
https://www.cloudsign.jp/
❖ DocuSign
アメリカに本社があり、世界的シェアNO.1の「DocuSign」。43言語での署名が可能で、海外取引が多いグローバル企業にとって使い勝手のよいサービスとされている。契約書の送信ごとの従量料金がないが、年間送付契約書量が100通まで、ユーザーごとに利用料金がかかる点に注意が必要だ。
有料プラン 月40ドル〜
https://www.docusign.jp/
<契約書管理>
契約書には紙1枚のものから分厚い冊子になっているものまで、多種多様な種類がある。それらを複数年に渡って管理するのは時間も場所もとる上、必要なときに必要な書類を探すのも一苦労だ。リーガルテックサービスを利用すれば、書類を全てオンライン上で管理することができ、コストと時間の短縮につながるだろう。
❖ LegalForceキャビネ
書類整理が苦手な担当者にとって救世主となるのが「LegalForceキャビネ」だ。締結済みの書類をLegalForceキャビネに入れるだけで全テキストをデータ化し、AIが管理台帳を自動で生成してくれるのだ。格納したデータは契約更新期限や終了日に近いものから並べ替えることができ、視認性も抜群。また、紙ベースの契約をPDF化して格納しても自動でテキストをデータ化してくれるので安心だ。具体的な利用料金についてはサイトを通じて問い合わせてほしい。
https://legalforce-cloud.com/cabinet
❖ Hubble
多くの企業が導入しているMicrosoft Wordを使って管理ができることが強みの「Hubble」。契約書の作成から管理まで一括して行えるサービスだ。
電子契約の項目で紹介したクラウドサインやDocuSignと提携しており、契約締結までの一連の流れをスムーズに行うことができ、3アカウントまでなら基本機能を無料で使うこともできる。
有料プラン 月100,000円〜(30アカウント)
https://hubble-docs.com/
<契約書レビュー>
法的効力のある契約書を作成する際、厳しい内容チェックは不可欠。法務担当者がいる会社の場合は、複数の社員によるチェックを行い、いない場合は外部の専門家に委託するなどして人的コスト、外部依頼コストは避けられないものだった。しかし、リーガルテックサービスで契約書レビューを導入した場合、専門的な弁護士による監修はもちろんのこと、AI技術を駆使したシステムで契約文書内にあるトラブル・リスク回避を管理してくれる。
❖ AI-CON
「AI-CON」はAI(人工知能)とContract(契約書)を組み合わせた造語をサービス名にしている契約書チェックサービス。弁護士としてスタートアップ企業の支援をしてきた弁護士が、法務格差に問題を感じて創業した。契約書のリスク判定機能から修正例の提示まで、安心して契約書の作成ができる機能が搭載されている。秘密保持義務のチェックのみだが、何通でも無料で利用が可能だ。
https://ai-con.lawyer/
❖ LawFlow
デフォルトで42類型の契約書に対応している「LawFlow」は弁護士が開発し、元裁判官が監修したオンラインの法務AI。リスクのある項目を即座に検出し、解説する。契約書の作成支援ツールも搭載されているため、雛型作成も簡単にできるだろう。秘密保持契約と業務委託契約の2つに関しては、無料版でのチェックも可能だ。
有料プラン 5,500円〜
https://www.lawflow.jp/
リーガルテックサービスの導入メリット
リーガルテックサービスにさまざまな種類があることが分かったが、それだけでは導入のメリットがまだ見いだせないという人もいるだろう。ここでは、サービスを導入した際のメリットについて説明していく。
リモートワーク対応
リモートワークの定着化で商談や取引もオンライン化が進んでいるが、契約に関わる書類作成や承認のために結局出社せざるを得ないケースが多々ある。リーガルテックサービスを利用することで、書類の作成から申請、契約承認までの一連の流れをすべてオンラインシステム上で簡単にできるようになる。リモートワークが進む中でも出社が必要とされていた法務業務も、在宅で仕事を進められることは大きなメリットといえるだろう。
法務関連業務のコスト圧縮
契約書の作成時にかかる印刷代、印紙代、郵便代が不要になるほか、契約書レビューにAIを活用すれば、レビューに費やしていた人件費や作業時間の短縮もできる。また職場内で大きなスペースを取っていた書類の保管も、電子データになれば必要なくなるため大幅はスペースの縮小も可能だ。
リーガルテックサービスの導入の注意点
リーガルテックサービスを導入する上で注意したい点を紹介する。
利用目的を事前に明確化しておく
リーガルテックサービスは目的に合わせて特化した機能が搭載されているため、利用目的を明確化してから導入しないと「思ったよりも利用しなかった」「使いにくい」ということになりかねない。事前に「どうして利用したいのか」を突き詰めておくとよいだろう。
既存の業務フローとの整合性を確認しておく
サービス導入前に、どういった業務の負担を軽減したいのかを見極める必要がある。業務に携わる従業員たちの意見を聞かずに導入した場合、業務フローの突然の修正で余計な手間となってしまう可能性もあるからだ。しっかりと業務を担当する従業員たちと話し合って負担になっている業務を割り出し、業務フローがスムーズに進むようリーガルテックサービスを活用できるようにしてほしい。
万一の場合の専門家・有識者によるサポート体制を作っておく
AIを使った契約書レビューなどを利用したとしても、やはり人の目でチェックをしたいことが出てくることもあるだろう。そういった際に専門家によるサポート体制があると安心だ。社内に常駐スタッフがいない場合は、リーガルテックサービスの専門家サポートサービスの契約をしておくと安心だ。
まとめ
リーガルテックはリモートワークの推進や商談契約のスムーズ化において便利なサービスで、導入する企業が今後も増えていくことは間違いないだろう。法的な効力があるのか、インフラとしてシェア率はどれくらいあるのかを見極めながら、導入するサービスを決めたい。サービスの多くは無料トライアルを実施しているので、まずは試してから導入を検討してほしい。