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経費精算の基礎知識から申請フローの整備方法までわかりやすく解説

2022.03.24
オフィスのミカタ編集部

企業活動を行う上で、業種や規模に関係なくすべての企業で発生する経費精算業務。申請から承認、精算、仕訳までのフローをスムーズにすることは、経理担当者のみならず、申請する社員の業務効率化にもつながる。

この記事では経費精算の基礎知識から申請フローの整備方法まで詳しく解説していく。経費精算業務の煩雑さにお悩み方や業務効率化を図りたい方はぜひ参考にしてほしい。

経費精算とは従業員の立て替え払いの経理処理

まずは経費精算の基礎知識から説明していこう。

経費精算とは、事業活動に要する費用を従業員が立て替えた際に企業側がその費用を払い戻すことである。処理方法や経費の種類によって、以下のような種類に分けられる。

小口精算
小口精算とは、振り込みではなく社内の小口現金から精算する経費精算方法を指す。飲食店などの現金商売を行う企業で用いられることが多い。精算までの期間が短いため、領収書を紛失するリスクは低い点や、立て替えた従業員にかかる負担が少ない点がメリットである。

一方で経理担当者には、現金を管理する手間や都度精算が発生するという手間が生じる。

交通費精算
経費精算の中でも特に頻度が高いのが、移動交通費を精算する交通費精算である。頻度が高い上に、領収書が発行されないケースも多く、ルートと金額の確認に手間がかかることで申請者・承認者双方の負担は大きくなっている。

旅費精算
出張にかかった交通費や宿泊費などを精算するのが旅費精算である。従業員が立て替える経費の中でも高額になりやすいことや、出張内容自体の事前申請・事後報告が必要なことから、他の経費精算とは別のフローで運用している企業も多い。

経費対象として損金計上できる仕訳対象

ここでは、経営者や経理担当者に向けて経費の仕訳に関する基礎知識を解説する。しっかり理解して正確かつスムーズな処理を心がけたい。

経費の対象になる費用及び勘定科目の代表例
会計を行う上で、経費扱いになるかどうかは重要なポイントである。経費とは事業に必要な費用のことであり、経費に該当する勘定科目の代表例は以下のものが挙げられる。

広告宣伝費
旅費・交通費
交際費
通信費
水道光熱費
事務用品費
消耗品費
図書費
減価償却費
支払手数料
地代家賃
保険料
租税公課
人件費
外注費
法定福利費など

経費精算の対象にならない費用及び勘定科目の代表例
一方で、社長、役員、従業員が個人として行った支出に関しては事業に必要な費用とはみなされず、経費精算の対象にもならない。
具体的には以下のようなものである。
・プライベートで行った旅行にかかった旅費・交通費・宿泊費
・家庭で消費する日用品や私物の購入費用
・友人との会食費

また、税金の中でも自動車税や固定資産税、印紙税などは経費として算入できるが、法人税・住民税など法人の所得に対して課税される税金は経費には該当しないため注意が必要だ。

税務調査のリスクから経費計上を慎重に行うべき勘定科目
一般的に経費として処理される勘定科目であるものの、税務調査時に論点となりやすいものが交際費、飲食接待費、会議費、福利厚生費などだ。いずれも公私混同されやすく、事業上必要なものであったかが判断しにくいものである。内部統制の強化のためにも、必要に応じて金額や頻度、あるいは上長への事前申告などのルールを設けることも重要だ。

経費計上と税金の関係

企業の会計は報告する対象に応じて、企業会計(財務会計・管理会計)と税務会計に分けることができる。企業会計では、収益と費用から利益を算出するのに対し、税務会計では益金から損金を差し引いて課税所得額を算出する。
「費用」と「損金」は概ね同じであるものの、一部取り扱いが異なる。また、「経費」という言葉は、企業会計上の「費用」の意味合いで使われることもあれば、税務会計上の「損金」の意味合いで使われることもあるため注意が必要である。

上述のように、
課税所得=益金―損金
であるため、損金として計上できれば課税所得を抑えることができ、節税につながる。経営者としてはできるだけ損金として処理したいと考えるのは当然だが、税務上のルールに沿うのが大前提となるため、適切に処理しなければならない。

経費精算を行う際の処理・ワークフローの例

ここからは、実際に経費精算を適正かつスムーズに処理するフローについて解説していこう。経費精算の大まかなフローは以下の通りである。

従業員が経費を立替払いにて支出し領収書を受領
旅費や業務で使用する文房具、取引先との会議費などを従業員が立て替える。その際、いつ、何にいくら使用したのかがわかる証拠として領収書をもらう。

従業員が立替払いの領収書とともに関連申請書類を作成し提出
立て替えた従業員は申請書類と作成し、領収書とともに会社に提出する。経理に直接提出する場合もあれば、上長等の承認を必要とする場合もあるだろう。内情に応じて適切な承認フローを構築しよう。

バックオフィス(経理担当者)が経費の仕訳と申請書類内容を確認
申請書は最終的に経理担当者に届き、申請内容を確認するとともに経費の仕訳を行う。会計知識が必要となる上に、確認や差し戻しの手間もあって経理担当者にかかる負担は大きい。いかに効率化を図ればよいかは後述する。

規定日に会社から従業員へ立替払い費用を払い戻す
申請内容が最終承認されたら、従業員へ立て替えた費用の払い戻しを行う。小口精算で即時精算を行うケースもあるが、多くは規定日にまとめて振り込むケースが多いだろう。

大枠では上記の流れとなるが、費用の内容や金額などによって細かくフローを変えている企業も多い。次の項では経費精算に用いられる書類としてどのようなものがあるかを説明しよう。

経費精算のワークフローにて必要な関連申請書一覧

経費精算に使用される書類としては以下のものが挙げられる。全てを使用している企業は少ないだろうが、記載すべき項目やワークフローが異なる場合には分けて運用する方がミスも減り効率的になる場合もある。自社の状況を鑑みながら、必要かどうかを検討しよう。

仮払い申請書
従業員が費用を立て替える負担をおさえるために仮払い制度を導入している企業も多いだろう。事前に仮払いを申請するために用いられるのが仮払い申請書である。運用時には、購入後の精算書とセットで用いられる。

交通費精算書
従業員が費用を立て替える負担をおさえるために仮払い制度を導入している企業も多いだろう。事前に仮払いを申請するために用いられるのが仮払い申請書である。運用時には、購入後の精算書とセットで用いられる。

交通費精算書
経費精算の中でも移動交通費の精算に特化した書類が交通費精算書だ。移動手段やルートを細かく記入できるフォーマットにしておくことで記入ミスが減り、チェックもしやすくなるだろう。

出張申請書
出張費は経費の中でも税務調査リスクが高いものの一つであることなどから、事前申請のルールを設けている企業も多い。その際に用いられるのが出張申請書である。出張日や出張先、移動ルート、費用の概算とともに、出張の目的を記入する欄が設けられる。

出張精算書
交通費精算書と同様、内訳の細かいチェックが必要となるため、出張費専用の精算書を用意するのも良いだろう。また出張申請書を運用していない場合でも、出張精算書に出張先や出張の目的・成果を記入してもらうことで、いわゆる「カラ出張」を防ぐ効果もある。

海外出張申請書
為替レート計算が必要になり、国内出張よりもさらに煩雑な手続きが必要となる海外出張。費用も高額となるため、事前申請をすることで会社も費用の概算を前もって知ることができ、外貨を仮払いで渡しておくことで出張者の負担も抑えられる。

海外出張精算書
費用の内訳を記載し領収書とともに提出する点は国内出張と同じだが、海外の領収書を読み取った上でレート計算をするなど、海外出張の場合はチェックにも手間がかかる。処理を間違えることのないよう、海外出張の頻度が高い場合には専用の精算書を用意しておくと良いだろう。

交際費申請書
公私混同がされやすく財務監査リスクが高い交際費や接待飲食費、会議費、福利厚生費などは事前申請のルールを設けている会社も多いだろう。会社の経費として見なすことができる内容なのか、上長や経理担当者の判断を仰ぐことで不正の防止や経費の削減にもつながる。

交際費精算書
財務監査への備えとして交際費等の精算についても専用のフォーマットを作っておくと良いだろう。何にいくら使ったのかだけでなく、参加した取引先や社員の人数などを細かく記載してもらうことで、損金計上できるかどうかを適正に判断することが重要だ。

経費申請書
後述の経費精算書が事後申請であるのに対し、事前申請用に経費申請書を運用するワークフローを設けるのも良いだろう。透明性を高め、経費を削減する効果が見込まれる。

経費精算書
経費精算書は恐らくどの会社でも運用しているだろう。上述のような個別の精算書でカバーできない文房具等の消耗品や図書費などの精算に用いられ、個別の精算書を設けていない場合には経費全般の精算に用いられる。

支払依頼書
支払依頼書とは取引先への買掛金や経費の立替金の支払いを経理に依頼する社内文書だ。比較的規模の大きい会社の場合、各部署の担当者が請求書を受け取り、内容を確認した上で経理に支払依頼書を提出するフローを組んでいる会社も多い。

振替伝票
経費精算に関わる書類には、仕訳を行う経理担当者のみが使用する振替伝票なども含まれる。

このように一口に経費精算と言っても、会社によっては多くの書類やワークフローを使い分けて運用している。次の章では、この複雑な経費精算業務が抱える課題について触れていこう。

経費精算における課題はコア業務以外への投資コスト

企業には適正な経費処理やガバナンス強化が求められる一方で、経費精算業務は申請者や経理担当者、企業全体の負担にもなっている。経費精算業務にはどのような課題があるのか2つの視点から解説する。

申請・承認作業の手間や人件費コストが発生する
1つ目の課題は、申請・承認などの煩雑なワークフローにかかる人件費である。経費精算業務は利益を生まないノンコア業務であり、可能な限り減らしたいところである。しかし、交通費や旅費の精算は入力項目も多く、申請側にもチェックを行う側にも大きな負担となる。ガバナンス強化のために、承認者を増やしたり、申請書と精算書を併用したりすればその分だけ手間も増えてしまう。

紙書類の電子保存など書類データの管理コストが発生する
2つ目の課題は書類データの管理コストである。元来、国税関連帳簿書類は紙での保存が原則となっているが、電子帳簿保存法によって急速にペーパーレス化が進んでいる。その結果、過渡期の今は紙とデジタルデータの併用や転換などで一時的に業務量が増えている企業も多いだろう。

2022年1月に改正された電子帳簿保存法では、電子データの保存要件が緩和されるとともに、規制や罰則も強化されている。下の記事を参考に、自社の対応が改正法に適応しているかどうか確認してほしい。

2022年1月に改正される電子帳簿保存法とは?概要と改正内容のポイント

経費精算のワークフローを効率化する方法

上述のように社内の負担も大きい経費精算業務を効率化する方法を3つ紹介しよう。

経費精算用の法人カードの支給
1つは法人カードの支給によって現金精算を減らす方法である。クレジットカードやETCカード、交通系ICカードでも法人利用が可能なものは多い。こうしたサービスを活用すれば現金の精算自体を省くことができる。

経費精算業務のアウトソース
2つ目は経費精算業務をアウトソースする方法だ。バックオフィス業務が立て込む月末月初の負担を緩和できるため組織的な効率化につながる。信憑チェックや仕訳、支払い処理まで一貫して対応してくれるため、経理業務の中でもアウトソースしやすいと言えるだろう。

経費精算システムの導入
3つ目は経費精算システムの導入だ。領収書の読み取りや経路の自動反映、エラー表示などによって入力の手間やミスが大幅に減る上、仕訳や振込データ作成を自動で行うなど経理の負担も軽減できる。

経費精算業務の効率化や経費精算ツールの導入を検討している方はぜひ下の記事も参考にしてほしい。

クラウド型の経費精算ツールのおすすめサービスと選び方のポイントを解説

まとめ

この記事では、経費精算の基礎知識から、経費精算業務の課題、改善のポイントまで詳しく解説してきた。リモートワークの推進や電子帳簿保存法の改正などによって、経理業務のワークフローを見直している企業も多いだろう。これを機会と捉えて、経費精算ツールの導入などを含めて、抜本的な業務改善に取り組んでみてはいかがだろう。

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