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育児・介護休業法の改正が2022年4月より施行。取得期間や要件の改正ポイントや対応方法をわかりやすく解説

2022.02.10

育児・介護休業法が改正され、2022年4月から段階的に施行される。今回の改正は育児休業に焦点を当てたものになっており、特に男性の育児休業が取得しやすくなると注目を集めている。ここでは、改正のポイントや法改正への対応について解説していく。

育児・介護休業法の目的のこれまで

育児・介護休業が施行されたのは1992年。時代の変化に合わせて少しずつ改正しながら、該当者が使いやすい法律へと進化してきた。しかし、根本的な目的は施行当初から変わらない。どういったことを目指しているのか見ていこう。

育児や介護を理由に退職せずに仕事を続けることができること
「育児・介護を理由にキャリアを中断せざるを得ない状況を改善するため」というのが育児・介護休業法の大きな目的だ。
一方で、法律の施行後であっても職場の理解が得られず、育児・介護休業を取得できなかったり、育児休業の場合に男性が取得しにくい雰囲気があったりと、現在でも取得しにくい状況にある人も多い。

育児や介護を理由に退職した労働者の再雇用を促進すること
もう1つの目的は、育児や介護によって一度退職した場合の再雇用の促進だ。退職時に再雇用の希望の申し出をしていた場合には、特別な配慮を講じることが事業者には求められている。

改正育児・介護休業法は「男性育休」がキーワード

2022年から施行される改正育児・介護休業法では、男性の育休取得を促進するための枠組みが注目されている。2020年に厚生労働省が発表したデータによると、ここ20年間の男女別の育休取得率は以下の図の通りだ。

出典:厚生労働省「令和2年度雇用均等基本調査」

女性の育休取得率は20年前と比べると高い水準を維持しているが、男性の取得率に関しては2020年にやっと10%台に上がったばかり。今回の法改正によって、この男女の乖離を少しでも解消するのが狙いだ。

2022年4月の育児・介護休業法の改正のポイント

では、先陣を切って2022年4月から施行される改正育児・介護休業法のポイントについて紹介しよう。

事業主に対して育児介護の環境整備を義務化
育児休業の申請や取得が円滑にできるよう、事業主側が雇用環境を整備することが義務化される。具体的には、下記のような項目からいずれかを整備しなければならない。

・本人はもとより上司への育児休業関連の研修実施
・育児休業に関する相談窓口の設置

育児休業を取得する人だけでなく、周囲の人にも育児休業への理解を深めてもらい、該当者が気持ちよく制度を利用できるようにすることがこの改正の狙いだ。

妊娠や出産の申し出をした社員本人または配偶者に対して個別の周知・意向確認
妊娠した本人または配偶者から妊娠・出産の報告があったとき、改正育児休業制度について個別に周知し、取得の意向を事業者側が確認しなければならない。周知の方法は面談での口頭説明や書面による情報提供等のどちらでも構わないが、どちらにせよ、育休取得を控えさせるような形での意向確認は認められないので注意しよう。

これまでは妊娠・出産した本人または配偶者から事業者に対して育児休業の取得を申請することが常だったが、改正によって事業者側から意向確認することが義務化された。さらに妊娠・出産した本人だけでなく、父親側にもその義務が適用されたことがポイントだ。

有期雇用労働者について育児・介護休業の取得要件が緩和
改正前の育休法では、有期雇用労働者(契約社員、パート、アルバイトなど)の育児・介護休業には以下の要件があった。

・引き続き雇用された期間が1年以上
・子どもが1歳6カ月になるまでの間に契約が満了することが現時点で決まっていない

今回の改正ではこのうち、「引き続き雇用された期間が1年以上」の要件が撤廃され、無期雇用労働者と同様の取り扱いとすることになった。正社員以外の従業員が多い会社にとっては大きな影響があるため理解漏れがないようにしたい。ただ、労使協定により「雇用期間が1年以上」とする要件を締結している場合は残すことができる。

2022年10月の育児・介護休業法の改正のポイント

2022年秋から施行される改正点は以下の通りだ。特に大切なポイントについては後述する。

出生直後の育児休業取得の規定の柔軟
男性の育児休業取得を促進するために、取得規定が柔軟に使えるよう「産後パパ育休(出生時育児休業)」が創設された。

もともと女性は子どもを出産した直後から、産後休業として最大8週間取得できる制度がある。そこに、男性にもこの期間に休業取得しやすいようにと今回新たに生後8週間以内に4週間まで取得可能という項目が追加された。

育児休業を分割して取得可能にする緩和
改正前は不可だったが、育児休業期間を分割して2回に分けて取得することが可能になる。ただし、産後パパ育休を分割取得する場合には1回目の育休申請時に2回目までまとめて申し出る必要があるため、従業員に事前に周知するようにしたい。

雇用保険法の計算起点の特例追加
育児休業や産後パパ育休(出生時育児休業)中に多くの従業員が気にするのは給与についてだろう。今回の法改正に合わせて雇用保険法も改正され、育休はもちろんのこと、男性の産後パパ育休の場合でも要件を満たしていれば休業開始時の賃金の67%(180日経過後は50%)の給付を受けることができる。

また、育児休業中(産後パパ育休含む)の給与にかかる社会保険料は被保険者・事業主どちらの負担も免除されるが、今回の改正ではさらに、同一月内で育休が開始・終了した場合、その日数が14日以上の場合はその月は保険料免除となるという点が追加された。

2023年4月の育児・介護休業法の改正のポイント

従業員数1000人以上の企業は育児休業等の取得状況の公表が義務付けられ、より多くの企業に育児・介護休業法が浸透するよう国が後押しする。以下で詳しい内容について触れていこう。

育児休業取得状況の公表の義務化
1000人以上を雇用する会社では、年に一回、育児休業等の取得状況を公表することが義務付けられる。公表方法は一般の人が閲覧できる方法であれば種類は問わない。公表する情報は①か②のいずれかを選択できる。

①育児休業等の取得割合
「公表する事業年度の直前の事業年度で男性労働者が育児休業等を取得した人数」から「公表する事業年度の直前の事業年度で雇用する男性労働者の配偶者が出産した人数」を割った取得割合

②「公表する事業年度の直前の事業年度で男性労働者が育児休業等を取得した人数および小学校就学前に達するまでの子どもを養育する男性労働者が育児目的で休暇制度(※1)を利用した人数の合計」から「公表する事業年度の直前の事業年度で男性労働者の配偶者が出産した人数」を割った取得割合。

※1 育児休業等と看護休暇は除いた、子どもの園行事や予防接種等の通院など勤務時間中の外出を認める制度

クラウド型の労務管理システムで育休申請の法律改正に準備

改正育児・介護休業法は歓迎すべき法改正だが、業務を担当する者にとって負担が増してしまうのは否めない。そこで、少しでも負担軽減をするために導入したいのがクラウド型の労務管理システムだ。法改正に迅速に対応している上に、簡単に申請書類の作成ができる。ここでは特におすすめしたいサービスを紹介しよう。

SmartHR
入社時に入力した従業員情報で社員名簿を作ることができ、更新事項がある場合は従業員自らが入力するため、常に最新の正しい従業員データベースが作成できる「SmartHR」。育児休業が申請されると担当者は育児休業給付金申請を提出する必要があるが、SmartHRであれば簡単に電子申請ができる。法改正にも迅速に対応してくれるため心強い存在だ。

人事労務 freee
労務業務をひとまとめにして細かなミスと作業時間を大幅に減らすことができる「事労務 freee」。育休申請後、従業員名簿から簡単に給与の設定変更ができる。休職中の社会保険料や住民税の控除にもしっかりと対応可能だ。

ジョブカン労務管理
労務業務の自動化・効率化を進める切り札となる「ジョブカン労務管理」では、産前産後休業取得者申出書の作成・提出・変更・終了届の全てがサービス上で可能。さらに時系列のToDoリストもあるため、安心して申請手続きが進められるのも強みだ。

jinjer労務
「jinjer労務」はバックオフィスに関わるデータを集約し、すべてを連携させて効率化を図るクラウドサービス。育休取得者に対して簡単に特別休暇と称して設定が可能だ。設定には時間休申請や有給無給の選択など、育休取得者にも対応できる内容だ。

オフィスステーション
使いたいシステムだけをチョイスできるアラカルト型労務管理システムの「オフィスステーション」。「オフィスステーション 労務」を導入すれば、育児休業給付金支給申請書や育児休業等取得者終了届を簡単に電子申請できる。

まとめ

2022年から順次施行される改正育児・介護休業法。従業員のモチベーションアップはもちろんのこと、これから新しく入社する社員にとっても改正法を遵守しているかは会社選びの新しい指針になるだろう。しっかりと改正ポイントを把握し、対応するための準備を進めてほしい。

クラウド型の労務管理システムを上手に活用すれば、労務担当者の負担を大幅に増やすことなく対応可能だ。システム導入を検討している会社については、ぜひこの機会に進めていってほしい。

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