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法人契約における契約書の効率的な作成方法と契約締結のマナーを詳しく解説

2022.05.13
オフィスのミカタ編集部

契約書はビジネスを進める上で避けては通れない書類。効率的に作成する方法やマナーについて詳しく解説していく。

法人契約における契約書の存在意義と法的効力

法人契約を行う上で、契約書は必須のものではないが、作成せずに契約するリスクはあまりにも高い。契約書を作成する意義や法的効力を発揮するタイミングについて解説する。

取引における契約書の作成義務はない
原則として、契約は当事者の合意があれば成立するため、多くの場合は契約書がなくても取引は成立する。ただ、契約書を作成すれば証拠を残すことができ、細かいルール等を記載しておくことでトラブルを防止することもできるため、作成するのが一般的だ。

口頭形式でも契約は成立する
実は口頭でのやり取りでも契約は成立する。契約は双方の合意が確認できれば有効とされているが、トラブルが起きた時に口頭契約ではお互いに「言った」「言わない」の水掛論になる危険性がある。

取引におけるコンプライアンス担保やトラブル防止を目的に作成
契約書の作成は、コンプライアンス(法的遵守)に関する潜在的なリスク回避に役立つ。企業にとって法的制裁を受けることは、企業イメージの低下や取引先からの信用失墜など大きなダメージを受ける。しっかりと契約前に確認するためにも契約書を作成し、法務の面からも内容を精査する必要がある。

取引における損害発生時の範囲と補償の正当性担保の法的効力
取引がスムーズに進まなかった場合の対応や補償に関しても、契約書に記しておくことが必要だ。それにより、双方がイレギュラー時の対応に合意したとみなされ、法的効力を持たせることができる。ただし、法律に反していないことが前提だ。

契約書の種類と違い

契約書にはいくつか種類があるので紹介しよう。

個人契約書と法人契約書に差はない
2名以上の個人が当事者となる個人契約書と法人が当事者になる法人契約書には、実は大きな違いはない。ただし、法人のみに適用される法律やルールも存在するため、契約内容を決める際には注意したい。

覚書は法的に契約書と見なされる場合がある
覚書は契約書の形態の一つで、契約書を作成する前段階の内容を取りまとめた書類や、契約書の内容に変更や修正が生じた場合に取り交わす書類を指す。変更契約書と呼ぶ場合もあり、覚書のタイトルで作成された書類も契約書と同じ法的効力を持つ。

誓約書は合意ではなくNDAなどの義務を課すための書類
誓約書とは、当事者の一方が相手に対して約束してもらいたいことを書面にし、相手方がそれを守ると意思表示するための書類だ。企業が従業員に対して秘密保持契約(NDA)の義務を課すためなどに用いられることがある。法的証拠とはなるものの、契約書とは異なり、合意を示すものではない。

業務委託には基本契約と個別契約の形態を取ることが通例
基本契約とは、取引の基本ルールを記したもので、全ての取引に共通するものだ。継続的な取引をする場合、毎回契約条件を交渉するのは双方にとって負担となる。基本契約を締結して、取引を迅速に進めるのが基本契約の狙いだ。個別契約とは、その名の通り個別の契約条件を記した契約書で、商品・サービスの内容や納期など都度変更される事項について定めるものである。

契約書にはどの額の収入印紙が必要か?

印紙税が課税される契約書は「課税文書」と言われているが、全ての契約書が課税文書となるわけではない。文書の種類ごとに収入印紙の金額が変わるため、主な契約書に関しては下記表にまとめた。詳しくは国税庁の印紙税の手引きをチェックしてほしい。

もし、印紙税を納めず、印紙を貼付しなかった場合でも法的効力がなくなるわけではない。しかし万が一、印紙貼付不備が発覚した際には適用印紙税額と、その倍相当の金額を合わせて支払う過怠税が課されるので忘れないようにしたい。故意の未納付には「1年以下の懲役、20万円以下の罰金」の刑罰も定められている。

また、電子契約に関しては、印紙は不要とされている。

契約書の作成の要点

契約書を作成する際のポイントについて挙げていくので、参考にしてほしい。

類似する商取引に関連する判例・法律を事前に調べておく
契約書を作成する取引と類似した商取引に関連する判例や法律を事前に調べておきたい。それにより、取引に潜むリスクを事前に察知することができ、契約書を取り交わすことでリスク回避ができる。リスクについて詳しくは後述する。

取引におけるリスクを記載する
取引上のリスクを想定しそれをカバーすることは、契約書を作成する際に気をつけたいポイントのひとつだ。代金の回収不能、納品前の商品破損などの売主側のリスク、商品不備への未対応、支払い済みの商品の未納品など買主側のリスク、どちらもしっかり想定してほしい。

取引における権利と義務を記載する
契約書とは自社と取引先の権利と義務を記載する必要がある。

・自社の権利と義務
・取引先の権利と義務

この全てを網羅しているか、確認するようにしたい。

司法の立場から分かるように平易な言葉で記載する
万が一、契約にトラブルが生じて裁判にまで発展してしまった場合に判断材料として使われるのが契約書だ。そのためには取引先と自社にしか分からないような言葉が使われた契約書では裁判官の判断に差し支えがある。よって、裁判官が分かる一般的な言葉で内容を明記する必要がある。

契約書を専門家に依頼をした方が良い場合と専門家の種類と費用相場

契約書は専門家でなくても作成が可能で、自社内で作ることもできる。ただ、専門家への依頼が妥当とされる案件もあるため、ここではそういったケースと費用の相場について紹介する。

行政書士・弁護士・司法書士・社労士を専門家として頼る
契約書を作成する際に頼れる専門家としては、「行政書士」「弁護士」「司法書士」「社会保険労務士(社労士)」の4つの士業が存在する。

契約書の作成でトラブルを未然に防ぎたい場合に最も頼りになるのは、法的トラブルに関与することが多い弁護士だろう。万が一、トラブルが発生した場合には引き続き依頼ができるという強みがある。また、契約締結の交渉代理ができるのは弁護士だけという点からいっても他の士業とは違う強みを持つ。費用相場としては、契約内容によって変わるため5万円から100万円以上と大きな幅がある。さらに、この金額には相談費用等は含まれていないため、さらに上乗せされると考えて間違いない。費用に不安を感じる場合は、事前に依頼内容を伝えて大まかな金額を提示してもらうと良いだろう。

行政書士は契約の内容が決まっていて書面化する段階にあれば、依頼が可能だ。難易度によって金額が異なるが、定形計画書の場合は2万円を切ることも。

司法書士は、本来は登記が専門分野で登記申請などを独占的に行える専門家だ。登記に関連する契約書であれば司法書士でも契約書の作成ができるため、付属書類として契約書が必要な場合は頼むとよいだろう。契約書作成に関しては5万円程度が相場となっている。

社労士は人材に関する専門家で、労働や社会保険に関する問題を扱っている。よって、契約書の中でも雇用契約書や業務委託契約書など、労働に関する書類作成を依頼できる。料金としては数万円であるケースが多い。

それぞれに強みのある分野が違うため、契約内容にあった専門家を選んでほしい。

取引内容を契約書に具体化して落とし込むことが難しい場合
取引内容を契約書に書面として落とし込むことは意外に難しい。漏れがないようにとたくさんの条項を盛り込むと矛盾が生じる危険性が高まり、具体性のない内容では契約書の効力が発揮できなくなってしまう。この辺りのさじ加減は素人では難しい。専門家に見てもらい、効力を発揮する契約書を作成しよう。

契約書と取引の整合性を確認する機能が社内にない場合
契約書の内容に整合性はあるか、内容にトラブルの元になりそうな要素が含まれていないか、違法性はないかなどリーガルチェックを行う必要があるが、社内にチェック機能がない場合は専門家に依頼するとよいだろう。

効率的な契約書の作成と運用・保管方法

月に何枚も契約書を作成する場合には効率的な作成と運用が必須だ。ここでは、効率的な作成・運用・保管方法を紹介していく。

契約書のひな形を探し自社取引に合わせて調整する
インターネット上には数多くの契約書のテンプレートがある。まずは当該の取引内容にもっとも近い契約書のひな形を探し、さらに自社にとって使いやすいように修正する。

調整した契約書を専門家か社内法務に内容の確認を求める
調整した契約書は専門家か社内法務に確認してもらう。

類似取引において使い回しができるように社内にてテンプレート化させる
確認後の契約書はテンプレート化し、社内で類似取引が行われた際にすぐに適用できるようにしておきたい。

会社法による10年保管の義務のためデジタルデータに変換して保存する
契約書は会社法にて契約終了後10年間の保管が義務付けられている。しかし、平成17年に創設されたスキャン保存制度により、一定の要件下でスキャン文書での保存が認められるようになった(参照:電子帳簿保存法一問一答【スキャナ保存関係】)。それにより、保管スペースの問題はある程度解決したが、スキャニングの手間やコストがかかることが問題として発生している。

電子契約ソフトなどにて契約を締結する
契約自体を電子契約ソフトへ移行すれば、スキャニングの手間やコストも0になり、保存スペースの確保ももちろん必要ない。電子契約の導入時には一定の手間やコストがかかるが、一度導入してしまえば紙ベースやスキャンベースの保存に比べて労力が大幅に減ることは間違いない。

電子契約の認知度は急速に上がっており、今後も普及が見込まれている。以下の記事では電子契約の認知度等について調査した結果が公表されているので、ぜひ一読してほしい。

電子契約の認知度と導入率に関する調査結果【2022年版】

契約書の締結に必要な押印・署名・記名のルール

契約書のサインの効力と信用度は、
(1)署名+捺印
(2)署名のみ
(3)記名+押印
の順に高い。
印鑑は実印でも認印でも、契約書上ではどちらでも問題ない。しかしトラブルが起きた際に本人の印を証明できる実印の方が有利になる可能性がある。トラブル防止のためにも、署名+実印による捺印を定型としておきたい。

契約書作成の商慣習やマナー

契約書作成時には多くの企業間で暗黙の了解となっている慣習やマナーがある。

契約書が複数に渡る場合は割印をする
契約書の偽造や改ざんを防ぐ方法として有効なのが割印だ。契約書が複数枚になる場合はページをまたぎながら割印を押すようにしてほしい。これにより、双方が安心して契約書の改ざんや偽造を疑うことなく保管することができる。

郵送の場合は返送用封筒と送り状を同封する
契約書を郵送する場合には、まず契約書を作成した側が契約書に署名や記名・押印をする。さらに、取引先にも契約書に署名や記名・押印をしてもらい、一部を返送してもらう必要がある。郵送する際に返送用封筒と一部を返送してもらいたい旨を記した送り状を添付してほしい。

契約書原本を取引双方が管理できるように必要数発行する
契約書原本は取引をする会社全てが所持するため、契約書は必要数発行するのを忘れないようにしたい。

紙ベースの契約書には1部ずつに印紙の貼付が必要だったり、郵送や保管が必要だったりと手間が多い。こういった苦労を全て取り払ったのが電子契約だ。リモートワークでも対応しやすいことから、今後多くの会社で導入が進むと予想される。多くのベンダーから優秀な電子契約サービスが提供されているので、詳しくは以下のリンクをご覧いただきたい。

電子契約のサービス比較・無料資料ダウンロード

まとめ

契約書に関わるワークフローには、電子契約を導入することで見直せる部分が多い。電子契約は契約書類を簡易に作成できるだけでなく、契約を一元管理する機能も搭載されている。業務効率化を進める上で有効となるサービスだろう。ぜひ導入を検討してみてほしい。