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インボイス制度とは?2023年10月から免税事業者を含む企業の対応事項を解説

2022.06.15
オフィスのミカタ編集部

複数税率による計算ミスや不正を防ぐために、2023年10月1日から導入されることが決定している消費瀬税の申告制度「インボイス制度」。しかし、「インボイス制度を理解しきれていない」「何から始めたらいいのか分からない」という人も多いだろう。今回の記事では、インボイス制度の基本的な部分から、必要な準備まで網羅的に解説していく。

インボイス制度は2023年10月1日から導入される仕入税額控除の方式

仕入税額控除とは、課税事業者が仕入れなどで自身が支払った納税額を、自社売上で受け取った納税すべき消費税から差し引くことを指す。消費税額が1つだった頃は、仕入れ先からいくらで購入したか分かる請求書を保存する「請求書等保存方式」で仕入額控除をしていた。

しかし、2019年10月の消費税増税時に導入された軽減税率により、2022年の時点で8%と10%の2種類の税率が存在しており、以前の方式だけでは対応しきれなくなった。そこでスタートするのが、商品ごとの適用税率や税額も明記した「インボイス(適格請求書)」制度だ。2023年9月末まではインボイスへの移行期間として「区分記載請求書等保存方式」が利用されている。

インボイス制度による経理事務への影響

インボイス制度の開始により経理業務はより複雑になるため、事前の準備は欠かせない。いざ制度がスタートしたときに慌てないように、どのような影響があるのか確認しておこう。

税額計算方法の一部が変わり財務会計のワークフローを見直す必要がある
現行法とインボイス制度施行後で一部税額の計算法が以下のように変わる。

現行法:請求書の品目ごとに消費税の計算、端数処理もその都度
インボイス制度:税率ごとに金額を集計して消費税を計算、端数処理も税率ごと

それにより財務会計のワークフローを見直す必要がある。インボイス制度に対応した受発注・請求書管理システムでは、これらの計算も自動で処理できる。

免税事業者と課税事業者を分けて経理処理をする必要がある
免税事業者はインボイス制度を利用することができないため、免税事業者と課税事業者を分けて経理処理しなければならない。制度施行前にインボイスに対応しているのかを確認し、混合して経理処理しないように気をつけたい。

免税事業者等からの課税仕入れに係る経過措置

免税事業者等からの課税仕入れに係る経過措置

年間の課税売上高が1000万円以下の事業者を免税事業者といい、納税義務が免除される。ただインボイス制度施行後は、免税事業者はインボイスを発行することができないため、例えば課税事業者は免税事業者から仕入れてしまうと仕入税額控除ができなくなってしまう。インボイス制度開始とともに完全廃止してしまうと混乱が生じるとのことから、段階的に免税事業者からの仕入れ税額控除が廃止されることが決定している。

消費税の仕入税額控除の適用を受けるための方法

インボイス制度を導入しないと仕入額控除の適用が受けられず、仕入れにかかる税額を全て自社で支払わなければならないため、課税事業者は必ず制度を利用したい。では、どうしたら適用となるのか、解説していく。

消費税の仕入税額控除の仕組み
まずは仕入額控除の仕組みについて説明していこう。一言で言ってしまうと、仕入れにかかった消費税を納税すべき消費税額から差し引くことを指す。

売上(消費税)-仕入れ(消費税)=納税税額

しかし、実際には下記の図のように生産者から消費者の間にはさまざまな工程があり、取引が発生するごとに消費税が発生する。これを累積しないようにするのが仕入税額控除だ。

出典:国税庁「消費税のあらまし(1.消費税はどんな仕組み?)

適格請求書発行事業者登録により登録番号の通知を受ける
適格請求書発行事業者になるには、税務署に登録申請書を提出しなければならない。
インボイス制度スタート時から運用したい場合は、2023年3月31日までに申請する必要がある。

適格請求書を交付し適格請求書の写しを保存する
適格請求書発行事業者への登録が済めば、インボイスの発行が可能となる。適格請求書は、交付はもちろんのこと写しの保存も義務となるため、注意したい。

インボイスと区分記載請求書との記載事項の違い

インボイス制度と区分記載請求書との記載事項の違いは3つの追加項目にある。3つの項目をそれぞれ見ていこう。

課税事業者のみ登録可である登録番号
適格請求書発行事業者になると交付される登録番号を記載する必要がある。

適用税率
現状ならば10%と8%の税率が使われているが、取引品目がそのどちらの対象となっているかを記す。

税率ごとに区分した消費税額等
適用税率で計算した消費税額の記載が必須となる。

免税事業者等は適格請求書発行事業者になるため課税事業者になるかを選択

現在、消費税の免税措置を受けている小規模事業者や個人事業主、フリーランスといった免税事業者にとっても顧客が課税事業者・免税事業者のどちらがメインなのかで、インボイス制度は避けて通れない問題となる。

課税事業者がメイン取引先の場合、自身もインボイス制度を導入しないと取引先が仕入税額控除を行うことができず、仕入分の税金を取引先が負担する必要が生じる。最悪の場合取引を断られてしまう危険性がある。主な収入源となる取引先が課税事業者の場合は、自社も課税事業者となることを視野に入れてほしい。ただ、インボイス制度を利用するには課税事業者となる必要があり、そうなると今まで免除されていた消費税の支払い義務が生じるので、その点も熟慮する必要がありそうだ。

免税事業者との取引がメインとなる場合は、現状は免税事業者として運用して問題ないだろう。

インボイス制度に対応するために必要な経理業務・準備

経理担当者がインボイス制度に対応するために準備しておく事項を紹介する。

取引先の適格請求書発行事業者登録の有無を確認する
まずは取引先が適格請求書発行事業者登録をしているのかどうかを確認しよう。また、自社も忘れずに適格請求書発行事業者の登録申請をしなければならない。

インボイスに対応した受発注・請求書管理システムの導入をする
インボイス制度に対応したシステムの導入はぜひ検討してほしい事項だ。政府は企業のバックオフィス業務のDX化を推進しており、電子帳簿法改正などにより導入障壁はグッと下がっている。

今回のインボイス制度では、適格請求書の保存も求められるため、さらなる保存書類の増量が想定される。保管スペースや管理業務の負担が増大するため、このタイミングでのインボイスに対応した受発注・請求書管理システムの導入は最適といえよう。

デジタル化を進めて経理業務の負担を軽減し、ミスなく業務を進められるようにしていきたい。

税額計算方法に対応した社内ワークフローや書式の見直しなどを行う
インボイス制度に対応したシステムを導入するのを機に、社内ワークフローの見直しも検討したい。社内の各組織の書類等を電子化して効率的に回覧・承認することができるため、業務効率が大幅にアップする可能性がある。インボイス対応のシステムとの連携も可能なサービスが多いため、連携できるサービスを利用してほしい。

まとめ

インボイス制度は2023年10月から開始だからとのんびりしていると、あっという間に施行がスタートしてしまう。今からしっかりと準備を進め、スムーズな導入をしてほしい。