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給与計算業務を複雑化させる給与天引きとは?給与計算業務を簡略化する方法とサービスを紹介

2022.07.26
オフィスのミカタ編集部

労働への対価として支払う給与だが、そこにはさまざまな控除や天引きが発生する。今回は給与から天引きできる項目や天引きする理由、天引きを簡単にするために導入したい給与計算システムについて紹介する。

給与から天引きが認められているのは社会保険料や税金などの報酬の一部

実は、労働基準法により給与は全額払いが原則となっており、天引きは禁止されている(参照:厚生労働省「労働条件・職場環境に関するルール」)。以下では法令で控除が認められている項目を紹介する。

所得税や住民税の源泉徴収
所得税や住民税は会社が従業員から徴収し、まとめて納付するため天引きが認められている。

厚生年金、健康保険、雇用保険といった社会保険料
会社と従業員が共に負担する社会保険料に関しても、天引き可能だ。従業員分の支払い分を会社が徴収して、会社負担分と一緒に納付するためだ。

社員が希望して積み立てている財形貯蓄
財形貯蓄制度とは、給与から天引きして貯蓄する制度で、利子等で税制上の優遇措置が講じられているために、利用価値が高い。財形貯蓄による控除は法令では認められていないが、労使間で財形貯蓄による賃金控除の協定を締結すれば可能となる。

労使協定があり、天引きの根拠規定が就業規則にある項目
労使協定があり、天引きの根拠規定が就業規則にある項目に関しては天引きが認められている。具体的には社宅や寮などの福利厚生施設の費用や労働組合の組合費、購買代金、労務用物資の代金などだ。ただ、労使協定と就業規則に規定があればなんでも天引きできる訳ではなく、用途や目的が明確であるものに関して対象となる。

企業側で給与の天引きをする理由

社会保険料のうち、健康保険料と厚生年金保険料、介護保険、雇用保険は会社と社員とで負担している。したがって、会社が社員から天引きした保険料に上乗せして納付する必要があるため、企業側で天引きしている。住民税は社員個人で支払うこともできるが、会社を通すことで、本来は年4回で支払う金額を12回に分けて支払えることになり、一回あたりの負担が少なく、しかも支払いに行く手間が省ける利点がある。

基礎知識としての労働基準法第24条における賃金支払い5原則

給与からの天引き以外にも、給与の支払いに関しては多くの決まりがある。意外と知らない人も多いので、ここで簡単に解説する。

通貨支払いの原則
賃金は現金で支払わなければいけないという決まりがあり、現物(会社の商品など)での支払いは禁止されている。労働者の同意を得た場合は銀行振込等の方法にできる。労働協約で現物支給が定められている場合は現物支給も可能だ。

直接払いの原則
給与は労働者本人に払わなければならない。例えば、未成年者だからといって保護者に支払うようなことがあってはならないということだ。

全額払いの原則
天引きに関する項目で紹介したが、給与は全額支払わなければならない。積立金などの項目で強制的に賃金の一部を天引きすることは禁止されている。

毎月1回以上の原則
給与は毎月1回以上、支払う必要がある。したがって、「2カ月分まとめて支払う」というようなことは認められない。

一定期日払いの原則
給与の支払日に関してはあらかじめ指定された一定の期日で支払う必要がある。一般的には「月末締めの翌月25日払い」としている会社が多いが、支払日を「毎月25日から30日の間」や「毎月第4月曜日」など変動する期日にすることは認められない。

給与天引き後の振り込みミスや個人情報漏洩を減らす方法

給与の天引き後の振込ミスや個人情報の漏洩を減らすには2つの方法が効果的だ。1つずつ紹介する。

明細書等はペーパーレス化し紙書類を社内に展開しない
給与明細は必ず従業員に渡す必要があるが、印刷して紙で渡すことが定められている訳ではない。ペーパーレス化することで、紛失リスクがなくなり個人情報漏洩のリスクを減らすことができる。

各種金融機関の給与振り込みサービスを用いて未払いミスをなくす
各種金融機関では給与振込サービスを展開しており、多くの場合はデータでの振込依頼が可能なため、給与計算ソフトのデータをそのまま活用できる。そのためわざわざ振込用に別に金額を打ち込む必要がなく、ミスを減らすことができる。

給与計算システムを導入して業務を効率化する効果的なステップ

給与計算システムを導入して業務を効率化するためには導入するまでのステップを正しく踏むことが大切だ。ここでは効果的な導入方法について解説する。

給与計算における標準月額など賃金ルールの合理性・明文化を行う
まずは自社の賃金ルールの合理性や明文化を行おう。給与が毎月一定なのか、変動することが多いのか、自社の給与計算における特徴を再認識し、それに見合った給与計算システムを選定してほしい。

給与計算システムを導入し賃金ルールをインストールする
自社に合った給与計算システムを導入し、自社独自の賃金ルールがある場合はあらかじめ入力しておくことで、より効率的に給与計算を行えるようにしたい。

給与計算システムと他の利用しているシステムを連携してデータを活用する
自社ですでに給与計算以外のシステムを導入している場合、連携する。例えば、勤怠管理システムを導入している場合は、連携させることで給与計算システムに勤怠情報が自動で入力される。データの連携は業務の効率化には欠かせない。

システム導入の際の選定基準

給与計算システムを導入するならより効率的に業務を行えるサービスを選びたいと考えるのは当然だろう。そこで、選定する際の基準にしてほしいことを紹介する。

導入する目的を明確にして必要な機能が備わっているかどうか
まずは給与計算システムを導入する際にどういった点を効率化したいのか、改善したい点は何かを明確にしてほしい。それに対して必要な機能が備わっているかでシステムを選ぼう。

既存システムとしてERPや会計システムとの連携が可能かどうか
既存システムとの連携も忘れてはならない。ERPや会計システムと給与計算システムが連携できれば、さらに効率化を推進することができる。

セキュリティやインシデント対応についてのレベルが高いかどうか
給与計算システムには重要な人事情報が含まれているため、高いレベルのセキュリティ対応は欠かせない。サイバー攻撃に対する対処を行うインシデント対応に関してもよくチェックしてほしい。

導入・運用コストと効率化できる人件費のバランスが適正かどうか
導入・運用にかかるコストと、効率化したことで削減できる人件費など、費用対効果についてもしっかりとチェックしたい。

多くの会社が導入しているおすすめの給与計算システム

多くの会社から支持されている給与計算システムを紹介する。

ジョブカン給与計算
社労士監修のジョブカン給与計算は給与計算担当者の「あったらいいな」を実現したシステム。自社独自の給与規定を設定でき、各種手当や社会保険料など控除すべきものの自動計算も可能だ。簡単な申込みで、30日間無料で試せるのでぜひ検討してほしい。
https://payroll.jobcan.ne.jp/

freee人事労務
freee人事労務は給与計算だけでなく勤怠管理もできるため、従業員情報から自動で給与額や控除額を計算できる。そのため、毎月給与が変動する会社にとって使いやすいシステムといえる。また、給与明細をWeb上で発行できるため、ペーパーレス化を促進している企業にとっても使いやすいだろう。
https://www.freee.co.jp/hr/

マネーフォワード クラウド給与
給与計算における各種保険料や税金が自動計算できるため、業務効率がアップするマネーフォワード クラウド給与。5つの項目を設定するだけで簡単に給与計算ができる。他のマネーフォワードのシステムと連携すれば、バックオフィス業務全体の大幅な効率化が叶う。
https://biz.moneyforward.com/payroll/

給与奉行クラウド
あらゆる支給・控除項目を自動で計算できることで、人的業務が大幅に削減できる給与奉行クラウド。社外の専門家と一緒に使えるライセンスを標準提供していることから、給与データを共有でき、労務などのリスク対策が簡便なのも魅力の一つ。自動バックアップ機能とプログラムの自動更新で運用管理が格段に楽になるだろう。
https://www.obc.co.jp/bugyo-cloud/kyuyo

以下の記事では給与計算システムの選び方やおすすめシステムを紹介している。参考にしてほしい。
給与計算ソフトのおすすめ比較。会社規模・業務フローなど自社に適した選び方も解説

まとめ

給与天引きには法的な制限があることを初めて知った人も多いのではないだろうか。自社の天引き項目を改めて見直して、法令違反がないか、労使協定を結んでいない天引き項目はないか確認してほしい。また、天引きを簡単に給与計算に取り込むために有効な給与計算システムの導入も同時に検討してみてほしい。