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【2022年10月施行】産後パパ育休(出生時育児休業)とは?制度の特徴や育休取得のポイントを解説!

2022.08.03
オフィスのミカタ編集部

産後パパ育休(出生時育児休業)とは、改正育児・介護休業法の施行にともない、2022年10月から新たに導入される、育児のための休業制度だ。男性の育児休業取得に関心が高まる中、どのように対応を行えばよいのかを知りたい担当者も多いだろう。本記事では、産後パパ育休の特徴や、同制度が施行後における男性の育児休業取得のポイントと、社会保障制度の内容などを解説する。

目次

●産後パパ育休(出生時育児休業)とは?
●産後パパ育休の特徴
●産後パパ育休を取得した際の社会保障
●まとめ

産後パパ育休(出生時育児休業)とは?

産後パパ育休(出生時育児休業)とは、男性育児休業の取得率の低さを改善することを目的として新設された制度だ。まずは、産後パパ育休(出生時育児休業)とは何かを解説する。

産後パパ育休とは
産後パパ育休とは、男性が、子の生後8週間以内に4週間まで休業を取得できる制度。取得可能な期間が女性(妻)の産後休業期間と同時期であるため、「男性版産休」とも呼ばれる

産後パパ育休は通常の育児休業とは別の制度で、取得前に申し出を行えば2回に分割して休業を取得できる。通常の育児休業と合わせると、子が1歳になるまで最大4回の育児休業の取得が可能になるほか、2022年まで認められていなかった、休業中の就労も可能になる(労使協定を締結している場合に限る)。育児休業取得の柔軟化が図れることから、男性の育児参加促進が期待されている。

 

 

参考:『厚労省「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内」』

「パパ休暇」は2022年9月末で廃止
2022年9月まで運用される「パパ休暇」は、産休の対象でない男性のため、「子の出生日から8週間以内に取得する育児休業」を指す。パパ休暇を取得した場合に限り、育児休業の再取得が認められているが、育児・介護休業法の改正により2022年9月末をもって廃止となる。名称が似ていることから「産後パパ育休(出生時育児休業)」と混同されやすいが、別の制度であることを覚えておきたい。

産後パパ育休創設の背景
厚生労働省が2021年7月に発表した令和2年雇用均等基本調査によると、男性の育児休業取得率は2020年に12.65%と、初めて1割を超え、過去最高の取得率記録している。一方で、政府が目標として定めた取得率の13%を下回り、いまだに男性の育児休業取得率は低水準で推移しているのが現状だ。

男性の家事・育児への参加時間は女性を大きく下回る実態も明らかとなっており、世界各国との比較でも男性の家事・育児参加率は低いのが現状だという。このような背景から、希望に応じて男女ともに仕事と育児を両立できるようにするため、2021年6月に育児・介護休業法が改正された。これにより男性の育児参加を促し、女性に偏りがちな家事・育児を分散させることで、女性の就業機会の拡大や、出産意欲向上、男女雇用格差の是正につながることが期待されている。
参考:『厚労省「令和2年雇用均等基本調査/事業所調査結果概要」』

 男性の育児休業取得のポイント

産後パパ育休(出生時育児休業)が新設されたことで、実際に男性が育児のために取得できる休業は、どのように変わるのだろうか。ここからは、2022年10月以降の育児休業の取得のポイントをみていこう。

分割取得が可能に
2022年9月末までの育児休業制度は下図の通りで、原則として育休を分割取得することはできない。しかし先に記述したとおり「パパ休暇」を取得すれば、2回に限り分割取得が認められている。

 一方、2022年10月以降は、下図の通り、通常の育児休業が分割して2回まで取得可能となる。これにより、産後パパ育休と合わせると、子が1歳までの間に最大4回の育児休業を取得することが可能だ。

  

  

また、子が1歳に達した際に保育所に入所できない場合は、最長2歳までの育児休業取得が可能だが、2022年9月までは1歳以降の期間延長についての育児休業開始日が1歳、1歳半の時点に限定されていた。しかし2022年10月からは、育児休業開始日を柔軟化し、夫婦が育休を途中交代できるようにするとともに、1歳以降の育児休業再取得についても、特別な事情がある場合(注1)に限り再取得が認められるようになる。

(注1)1歳以降の育児休業が、他の子についての産前・産後休業、産後パパ育休、介護休業または新たな育児休業の開始により育児休業が終了した場合で、産休等の対象だった子等が死亡等したときは、再度育児休業を取得できる。

休業中の就業が可能
産後パパ育休(出生時育児休業)の期間中は原則就業することはできない。しかし、労使協定を締結することで、休業中の就業が可能となる(ただし、休業中の就業日数や就労時間数に上限がある)。会社から就業可能である申出を一方的に求め、従業員の意に反するような休業中の就業は避ける必要があるため、就業させる場合は従業員の意向確認を慎重に行う必要があるだろう。
参考:『厚労省「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内」』

「産後パパ育休(出生時育児休業)」を取得した際の社会保障

育児休業の取得は、通常会社から給与を支給することが無いケースが多い。しかし、産後パパ育休(出生時育児休業)中および育児休業中は、一定の要件を満たせば社会保障を受けられる。ここでは育児休業の申し出を受け付けた際に申請が必要となる社会保険制度を改めて確認しておこう。

雇用保険「育児休業給付制度」
一定の要件を満たせば、育児休業期間中において雇用保険から「育児休業給付金」の申請を行うことが可能だ。従業員が安心して育児休業を取得できるよう、遅滞なく申請を行うことが大切だ。

<受給要件>
1.育児休業開始前2年間に雇用保険被保険者期間(※1)が通算して12か月以上あること
2.有期雇用労働者は、休業開始前に同一事業主の元で1年以上雇用継続されており、かつ、子が1歳6か月までの間に労働契約が満了することが明らかでないこと

※1:原則、賃金の支払いの基礎となった日数が月に11日以上ある場合を1か月として計算

<支給額>
休業開始時賃金日額(※2)×支給日数×67%(育児休業開始から6か月まで(※3)

※2:原則、育児休業開始前6か月間の賃金を180で除した額
※3:育児休業開始から6か月経過後は50%
参考:『厚労省「育児休業給付金の内容及び支給申請手続きについて」リーフレット』

健康保険・介護保険料・厚生年金保険料などの社会保険料の免除制度
育児休業期間中は、要件を満たせば、健康保険料・介護保険料・厚生年金保険料などの自己負担分および事業主負担分がともに免除される。現行法の免除の要件は「その月の月末が育児休業中である場合」だが、2022年10月以降はこれに加え以下の要件が追加されるため、忘れずに申請を行おう。

・「その月の末日に育児休業中でなくとも、同一月内で14日以上の休業期間がある場合」を新たに保険料免除の対象として追加。
・「賞与に係る保険料については、連続して1か月を超える育児休業を取得した場合」に限り保険料を免除。
参考:『厚労省「育児・介護休業法の改正について」』

まとめ

改正育児・介護休業法は、男性の育児参加を促すことで、女性の社会進出拡大による労働人口の確保や、育児負担の分担による女性の出産意欲向上が、出生率低下の防止につながることが期待されている。企業側は、男女問わず育児に参加しやすい環境を整えていくことが急務だろう。従業員の求めに応じ対応できるよう、本記事を参考に、制度の理解を高めてほしい。