将来への安定性を実績で支援 電子保存から始めるデジタル化
2022年1月、電子帳簿保存法が改正され、企業は電子保存の導入を迫られている。そんな中「電子保存には長期間安定したツールの導入が必要」とセイコーソリューションズの中嶋勝治氏は指摘する。同社では改正要件を満たすソリューションとして「かんたん電子契約forクラウド」を提供。担当者の中嶋氏と中村氏に話を伺った。
度重なる改正に対応が追い付かない企業も
2022年1月、改正電子帳簿保存法が施行された。電子帳簿保存法は、1998年に施行された法律だ。従来紙での保存しか認めていなかった国税関係の帳簿や書類に、電子保存を認めることにより、企業の業務効率化を後押しすることが目的だった。その後、2005年にはスキャナ保存も認められペーパーレス化の促進が図られたが、要件の厳しさから導入企業が広がらないといった背景から、要件緩和を図るべく幾度も改正を繰り返してきた。
「2015年以降には、細かな改正が何度も行われています。規制緩和の方向に向かっていますが、具体的にどこが変わったのか、情報を追いきれていない企業が多い印象です。またそれに伴い、どういう仕組みが社内で必要か、理解しにくい状態が続いているといえます」(中嶋氏)
2022年の改正では、電子取引したデータの保存要件が変更された。それまでデータを紙面に出力し保存することが認められていたが、この措置が廃止。電子取引データは、電子保存するように求めている。ところが、多くの事業者で準備期間が不足しているとの指摘があったため、令和4年度税制改正大綱により、2023年12月31日までは、紙面での保存が宥恕されている状態だ。そのため、企業はこの期間に電子取引データを電子保存する仕組みを整える必要がある。
「メールに添付された書類のほか、FAXも電子取引データの対象となります。今回の改正以降、こうした電子取引データは電子保存する必要があります。改正への対応にあたっては、まずは自社がどういった形態で書類を保存しているのか、また電子取引にあたるものがどれかについての見極めから始めることが大切です」(中嶋氏)
電子帳簿保存法は大企業のみならず、中小企業や個人事業もその対象となっている。改正への対応を巡っては、大企業と中小企業の間で二極化が進んでいると中嶋氏は指摘する。大企業は事業規模が大きいため、当然書類数も多い。加えて既存のシステムも複雑で、システム連携のために、基幹システム側での更新が必要となる。そのためコストや時間もかかる大規模な開発が伴う。一方中小企業では、人材が少なく多忙な中、改正への応対が求められる。そのため、簡便な形できちんと要件を満たす仕組みの導入が必要となる。このように、企業がそれぞれ自社の状況に合った仕組みを検討し、導入していくことが欠かせない。
長期間の運用実績により高い信頼性を確保
こうした中、セイコーソリューションズでは、2020年に「かんたん電子契約forクラウド」をリリースした。新型コロナウイルスの国内での感染拡大に対応すべく、2012 年にスタートした「かんたん電子契約」をリニューアル。タイムスタンプと電子署名といった基本的な機能を維持しながら、クラウドサービスとなった。電子契約、電子配信、電子保存の三つの機能で、改正電子帳簿保存法の要件を満たしながら、簡単に利用が始められるサービスとなっている。
同サービスの特徴は、長期間の運用実績による高い信頼性だ。タイムスタンプは自身が認定されたサービス事業者であり、前身の企業から継続して、20年に及ぶ事業継続を行っている。PDF書類への国際標準形式でのタイムスタンプ付与を、同社は早い段階から国内でのサービス提供を行ってきた。電子カルテや融資契約など、幅広い業種で利用され、2020年に国内で発行された認定タイムスタンプのうち、同社発行のものは66%のシェアを誇る。
一方、電子署名機能は、国内初のリモート署名サービスとして、2010年にリリースされた。タイムスタンプ・電子署名という電子契約、電子帳簿保存法で必要な二つの機能とも、自社で開発しており、自社販売だけでなく、他事業者にも機能提供している。このような、20余年にわたる機能提供の結果、データの長期保存や契約効力の維持、タイムスタンプの更新対応などの実績を有している。将来的に発生する可能性があるリスクに、安心して利用できる仕組みを既に構築し、提供している。
またサービスの利便性も追求している。Webブラウザさえあれば、ファイルをアップロードするだけで、簡単に電子保存ができる。価格体系は、基本料金と実際に使ったサービスの使用料を支払う仕組みだ。クラウドサービスでは対応しきれない事業者に対しては、同サービスをベースとしたカスタマイズも行っている。また、APIも提供しているため、基幹システムとの連携といったシステム開発にも対応でき、電子配信を利用した場合、相手先には費用が発生しないため、取引先へ配慮した電子配信の導入が可能だ。
先々を見据えたシステムの導入が将来の安心につながる
同サービスと連携した「クラウドリフト」も提供している。クラウドリフトは、企業内のパソコンなどで使用している既存の会計ソフトをパッケージごと、そのままクラウド上に移行する機能だ。移行する際に、タイムスタンプや電子署名の仕組みを同時に導入することで、電子帳簿保存法の改正の要件を満たすこともできる。
「中小企業の中には、社内のパソコンで会計ソフトを利用しているため、リモートワークや電子帳簿保存法対応に苦慮したというケースも見受けられます。クラウドリフトを利用することで、今まで使っていたソフトやデータをそのままクラウド化し使い続けることができます。その上、今回の改正要件を満たせるため、電子保存やテレワークへの対応といった、電子化によるメリットを受けやすくなります」(中村氏)
電子保存では、長期間データを保存することを前提としている。例えば帳簿書類は、最低7年間保存する必要がある。また一部の企業では、書類の永年保管をルール化しているケースもある。同社では、そうした長期間のデータ保存にも、長年の実績と経験で対応し、将来にわたってリスクマネジメントを支援している。
法律改正への対応は一時のものに思われがちだ。しかし今回の改正への対応は、その後長きにわたり社内業務へ影響を与える可能性がある。そのためにも、先々まで信頼のおけるシステムを導入することが、将来のリスク対応にとって重要となる。