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【経理担当者必見】「税務」の基本や他の会計業務との違い。注意したいポイントなど

2022.09.13
オフィスのミカタ編集部

「税務」は経理業務の中でも重要とされる業務のひとつだ。一方で、経理業務の中でも特に複雑で、思うように理解が深まらない担当者も多いのではないだろうか。そこで本記事では、経理担当者として押さえておきたい「税務」の概要や、基礎知識等を解説するので、参考にしてほしい。

税務会計とは?

税務とは、国や地方自治体に納める税額を決定することを目的とした業務を指す。経理部門における「税務」に関わる業務は「税務会計」とも呼ばれ、「財務会計」「管理会計」と並び重要とされている。税務会計においては、企業側は「できるだけ法人税を抑えたい」、税務署側は「課税額を大きくしたい」という両者相反するの意識が働くことが特徴だが、課税の公平性の観点から、法人税法の規程に基づいた税金の計算を行わなければならない。

また、税務会計は、正確には「財務会計」の一部とみなされているが「財務会計」と「税務会計」は異なる会計であることを覚えておきたい。まずは、それぞれの会計の違いを理解しておくことが重要だ。

税務会計と財務会計の違い

「税務会計」と「財務会計」は1文字違うだけだが、全く異なる会計であることを覚えておきたい。ここでは、税務会計と財務会計の概要や、それぞれの会計上で異なる「利益」の考え方について見ていこう。

財務会計とは
財務会計は、会社の経営成績および財務状況をまとめ、「決算書」・「財務諸表」を作成することを目的とした会計業務だ。経営判断の基準となるもので、実際の取引に応じて計算される。財務会計上での利益は「収益」から「費用」を差し引いて得られた分となる。

利益(会計上)=収益-費用(損失)

税務会計とは
税務は会社が納めるべき税金を算出した「法人税の申告書」の作成を目的とした会計業務だ。税務で課税対象となる収益は、「益金」、費用は「損金」と称される。会計上の利益は税務においては「所得」となり、益金から損金を差し引き所得を算出する。

所得(税務上の利益)=益金-損金

財務会計上では「費用」と計上できても、税務では一部の費用を費用(損金)として扱わないものもある。これは、会計が「経営状況の開示」を目的としているのに対し、税務では「公平な課税所得の計算」を目的としていることが理由となっている。

費用と損金の扱いにおける注意点
財務会計上の費用と税務会計上の費用(損金)の扱いにおける注意点は下記の通りだ。

・役員報酬
取締役や監査役などに支払われるものを役員報酬という。これは財務会計では費用として計上できるが、税務においては原則、費用(損金)に算入できない。ただし、「定期同額給与」(一定期間決まった額を支払う役員報酬)や「事前確定届出給与」(事前に税務署に届出を出した役員賞与)などは費用(損金)に算入できる。

・原価償却費
財務会計上では原則、減価償却費は使用年数によって計上できる。一方、税務会計では償却資産の種類や用途によって「法定耐用年数」が決められており、両者の償却額には差が生じることがあることを覚えておきたい。

・引当金
引当金は、いずれ発生するであろう費用損失のためにあらかじめ準備しておく金額のことだ。代表的な引当金は下記の通りだ。

・退職給与引当金
・賞与引当金
・売上割戻引当金
・修繕引当金
・貸倒引当金
・損害補償損失引当金
・返品調整引当金

財務会計上では、いずれも費用(損失)として計上できるが、税務上の損金として算入できるのは「貸倒引当金」のみとなる。また貸倒引当金も会社規模によって算入できる金額が変わるほか、場合によっては認められないこともあるため注意が必要だ。

税務申告が必要な税の種類

ここからは、税務業務で申告が必要とされる税の種類を紹介する。

1.法人税
法人税は、会社の所得に応じた税率により納める税金のこと。決算日から2ヵ月以内に所管の税務署へ申告する必要がある。

2.消費税
消費税は、会社で発生する取引に対し課せられる税金のこと。ただし会社設立後2年間は例外として消費税が免除される。資本金1,000万円以上、もしくは、前々年度の売上が1,000万円以上となった時に納税義務が発生するものだ。申告は、法人税と同様に決算日から2ヵ月以内に所管の税務署にて行う必要がある。

3.法人事業税
法人事業税は、会社が行う事業に対し課税される税金だ。法人税と同じく、所得に応じた税率により税額が決定する。申告は、決算日から2ヵ月以内に、都道府県の税務事務所へ申告を行う。

4.法人住民税
法人住民税は、個人の住民税と同じく、会社が所在する地域に納める税金だ。法人住民税は資本金や従業員数に応じ課税される「均等割」と、法人税額を課税標準とし課税される「法人税割」がある。こちらも決算日から2ヵ月以内の申告が必要だ。

知っておきたい税制改正4つのポイント

税務会計を行う上で注意しておきたいのは、毎年実施される税制改正への対応だ。全ての改正内容を把握するのは困難なため、自社と関連しそうな項目を重点的に確認することをおすすめする。ここでは、近年の税制改正において、一般企業に関連があると思われるポイントを4つ紹介する。

<ポイント1>賃上げ促進税制
賃上げ促進税制は、高い賃上げを行う企業に税制控除の割合を増やす等の支援を行う制度だ。一般的に、企業の収益の増減により雇用や賃金も増減するとされている。企業の収益向上による、賃上げや消費・投資の増加という好循環を生み出すべく、高い賃上げを行う企業に法人税からの税額控除割合を増やす支援を行うというものだ。自社に該当する場合には利用したい制度だろう。

参考:経済産業省『中小企業向け 賃上げ促進税制ご利用ガイドブック』

<ポイント2>法人税等の申告期限の延長期限が拡大
これまでは、事業年度終了の翌日から3ヵ月以内に定時総会の招集が必要とされており、さまざまな企業でスケジュール調整が困難なものとなっていた。そこで、定時総会の開催日程に余裕を持たせられるように改正が行われた。具体的には、法人税などの確定申告の延長可能月数が1ヵ月から4ヵ月に拡大する内容に改正されている。これにより、3月決算の会社では従来、5月末~6月末頃に集中していた株主総会が最長で9月末まで開催できるようになった。余裕を持ったスケジュールが組めることで、企業とステークホルダーの間で充実した対話が可能になると見込まれている。

参考:国税庁『申告期限の延長の特例の申請』

<ポイント3>中小企業経営強化税制
中小企業であっても平均所得金額が15億円を超える場合は、一部の租税特別措置について適用除外の対象となる。具体的に適用除外とされているのは「研究開発税制」「公害防止用設備の特別償却」「貸倒引当金の法定繰入率」の3項目だ。なお、他の租税特別措置についても今後適用除外とされる可能性があるため、定期的に確認を行うことをおすすめする。

参考/関連記事:中小企業庁『中小企業等経営強化法に基づく支援措置活用の手引き』

<ポイント5>役員給与等の見直し
役員給与に関して、株式交付や、中長期の業績目標の達成度合いに応じ給与を支払うパフォーマンスキャッシュなど、欧米先進諸国で採用されている多種多様な報酬形態が利用できるようになっている。これまでの役員給与は一定期間ごとに同額を支給する方法が一般的で、不相当に高額な部分等を除き、損金に参入されていた。これにより役員の業務実態に合わせ、インセンティブを効かせることが困難となっていた。攻めの経営を促し企業の持続的成長の実現を目指すため、取り入れてみてはいかがだろうか。

参考:国税庁『役員に対する給与』
参考:経済産業省「攻めの経営」を促す役員報酬~企業の持続的成長のためのインセンティブプラン導入の手引き~

※本記事は2022年9月時点の情報を基に作成したもので、今後の法令改正等により取り扱いが変更になる可能性があります。

まとめ 

経理業務における税務は、企業の正しいの納税のために欠かせない業務だ。日常的に行う会計処理と異なる点もあり、しっかりと知識を身に付けておくことが望ましい。また、毎年行われる税制改正にも注意が必要だ。税務に関わる業務の担当者は、正しく納税を行えるよう、本記事を参考に理解を深めてほしい。