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社内規程や就業規則違反への正しい対応方法は?懲戒の種類や処分の手順、注意点など

2022.11.21
オフィスのミカタ編集部

社内規程や就業規則違反は、会社が独自で定めたルールを、社員が守らなかった場合に起こるものだ。しかし、具体的にどのような行為が違反にあたるのか、違反の内容が懲戒に該当するのかなど、対応方法に苦労する担当者もいるのではないだろうか。本記事では、社内規程および就業規則違反に該当する行為の具体例や、対応方法、注意点などをまとめて解説するので参考にしてほしい。

目次

●社内規程違反に該当する行為
●規程違反をした社員への対応方法
●社内規程違反をした社員への懲戒の手順
●懲戒処分の注意点
●違反を防ぐ方法

社内規程違反に該当する行為

社内規程とは、会社が独自で定めた社内における決まりのことだ。社内規程にはさまざまな種類があり、日々の業務の中で社員が遵守するべき規程には「就業規則」がある。まずは、就業規則違反とは具体的にどのようなことなのかを解説する。
関連記事:『社内規程とは?作成のポイントや、注意事項を解説! 』

就業規則違反とは?
就業規則違反は、就業規則に定められたルールに違反する行為を指す。就業規則には、社員が就業にあたり守るべき規則が定められており、代表的なものには「就業時間」「服務」「秘密保持」「ハラスメント」などがある。これらの規則に違反する行為が認められた場合に「就業規則違反」となる。

就業規則に違反する行為とは
代表的な就業規則違反行為は、下記が挙げられる。

・タイムカードの不正打刻
・正当な理由のない欠勤や遅刻
・会社のルールに違反した副業
・機密情報、顧客情報の持ち出し
・取引先からの個人的なリベートの受領
・不注意により会社に損害を与える事故
・経費精算の不正
・業務命令違反、業務上の指示に対する違反
・転勤の拒否
・ハラスメント
・クレームの隠ぺい

規程違反をした社員への対応方法

ここでは、就業規則違反を行った社員を発見した場合の対応方法をみていこう。

対応方法の種類
違反行為に対する対応方法は、主に以下のようなものがある。

・口頭で問題行為を指摘し、該当社員の反省を促す
・始末書の提出を求める
・懲戒処分を行う

ここで大切なのは、違反行為の重大性の程度に応じ、適切な対応を選択することだ。例えば、軽い就業規則違反にもかかわらず、懲戒処分などの重い処分を行ってしまうと、違法処分となり、場合によっては訴訟を起こされるリスクがある。また、「始末書の提出」「懲戒処分」には法律上のルールがあり、慎重に対応を検討する必要がある。

懲戒処分の種類
懲戒処分とは、社員が問題行動を起こした際に正式に罰を与える行為を指す。懲戒処分には下記の種類がある。

<戒告(かいこく)>
戒告処分は、就業規則違反をした社員に対し、口頭や書面での厳重注意を行う処分だ。懲戒処分の中では最も軽い処分とされている。特別な事情のない遅刻・欠勤が多く認められる場合など、軽微な就業規則違反の際に利用されるのが一般的だ。また、給与や昇給に影響を与えないケースが多いとされている。

<譴責(けんせき)>
譴責処分は、口頭や書面での厳重注意に加え、社員に始末書を提出させ、同じ違反を繰り返さないよう戒めることを目的とした処分だ。始末書を提出しない場合には、人事考課に影響を与えるなどの規則を設ける場合もある。

<減給>
「減給」処分は違反行為が認められた社員の給与を一部差し引く処分だ。減給は重い処分であり、労働基準法第91条に減給する金額の上限が下記の通り定められている。

・1回あたり、1日の賃金の半分以上を超えないこと
・総額が1ヵ月の賃金の1/10を超えないこと

1回の減給処分において、1日分の賃金すべてを差し引くことは違法となるため注意しなければならない。
(参考:『労働基準法第9章就業規則 (制裁規定の制限)第91条』

<出勤停止>
出勤停止処分は、就業規則違反が認められた社員に対し一定期間、出勤を停止する処分だ。また、この処分期間においては、賃金の支払いは行わず、有給休暇の利用も認めない。出勤停止期間は法律上の定めがないため、就業規則に期間を明記する必要がある。出勤停止処分は、給与支給がないことから、違反行為の重大性の程度と出勤停止期間の長さが妥当なものでなければならない。

<降格>
降格処分は、管理職である場合には役職を、管理職でない場合には職能資格や給与等級を引き下げる処分を指す。また、降格処分は、人事異動となるケースもあるため、該当社員への説明が必要だ。降格処分によって役職手当の減給のみならず、基本給を減給する場合には、就業規則に明記されていることが条件となる。

<諭旨(ゆし)解雇>
諭旨解雇は、従業員に退職を促す懲戒処分だ。この場合は、社員が自ら退職届を提出すれば退職金の支払いを行う必要がある。諭旨解雇処分は、違反行為に対し、深い反省が認められるなど、懲戒解雇では重いと判断される場合に行うことが多い。

<懲戒解雇>
懲戒解雇は就業規則違反をした社員を解雇する処分だ。会社が一方的に社員を解雇するもので、懲戒処分の中で最も重い処分だ。懲戒解雇の場合、普通解雇とは違い下記のような対応が行える。

・即日解雇できる
・退職金を支給しない

ただし、「即日解雇」は「解雇予告除外認定」が必要なこと、「退職金の不支給」は就業規則への明記が必要などの条件がある。また、懲戒解雇を行う際には相当の理由が必要となり、違反行為の証拠を集めたり、社員の弁明の機会を与えたりする必要があることを覚えておきたい。

関連記事:『社内規程とは?作成のポイントや、注意事項を解説!』

社内規程違反をした社員への懲戒の手順

社員による就業規則違反行為に対して懲戒処分を適用するには、正しい手順を踏む必要がある。ここでは懲戒の手順をみていこう。

1.就業規則に懲戒規程を設ける
懲戒処分を行うには、就業規則に「懲戒規定」を設ける必要がある。この際「懲戒事由」を明記し「どのような行為に対し懲戒を行うか」を定義し、それぞれの懲戒事由に対し、どの懲戒処分を適用するかを規定しなければならない。就業規則に「懲戒」に関する規定がないのに、社員に懲戒処分を下すことは違法行為となるため、処分を行う前に就業規則をしっかり確認しておこう。

2.「相当」な懲戒処分を検討・選択する
就業規則に則り、懲戒処分を行うこととなったら、処分の「相当性」を検討し、適切な処分を選択していく。懲戒処分は労働契約法第15条において「相当性」が要求されている。また、「相当性」を欠く処分を行った場合には、処分が無効となる。

懲戒処分の注意点

ここでは、懲戒処分を行う際の注意点を紹介する。

労働契約法の「社会通念上相当」を守る
懲戒処分を行う際には、労働契約法第15条の「社会通念上相当」を考慮することがポイントだ。社会通念上相当とは、処分内容と社員の違反行為が釣り合っていることを指している。懲戒処分が「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」には会社側の権利濫用として無効となる。そのため処分を決定する前には、社会通念上相当であるかや、過去の処分実績との平等性を意識する必要がある。
(参考:厚生労働省『労働契約法のあらまし』

規程違反となる事実が確認できる証拠を揃える
懲戒処分を行う際には、違反の事実が確認できる証拠を揃えることが必要だ。証拠になりえるものは、一概に判断できないこともあるため、証拠になるかもしれないものは、全て収集しておくことが望ましい。

退職勧奨とならないように注意が必要
懲戒処分を下す際には、退職勧奨とならないように気を付けなければならない。退職勧奨とは、会社側が社員に対し退職の手続きを行うよう迫ることを指す。また、パワハラのような発言も退職勧奨と受け取られかねないため、適切な言葉選びや伝え方が必要だ。万が一社員が「退職勧奨」だと受け取った場合、後々大きな問題に発展する可能性もあるため、細心の注意を払って対応しよう。

不当解雇への対策をする
懲戒処分を行う際に問題となるのが、不当解雇を主張されることだ。解雇に至るまでのプロセスをしっかりと整備し、該当社員には丁寧な説明を行わなければ違法解雇となりかねない。具体的には下記を明確化しておくことが重要だ。

<懲戒解雇に該当する事由を定めておく>
不当解雇を主張されないために重要なことは「懲戒解雇に該当する事由」をしっかり定めておくことだ。懲戒解雇処分とする事由には主に下記のようなものがある。

・経歴詐称
・犯罪行為(横領、窃盗、傷害、脅迫等)
・損害行為(機密漏えい、信用失墜等)
・業務命令違反(異動の拒否、出勤不良等)
・服務規律違反(パワハラ、セクハラ、暴言等)
・二重就職

これらの事由を就業規則に明記していないと、企業側は懲戒解雇を行えないため、懲戒解雇に該当する事由は漏れなく明記することが重要だ。ただし、想定できる事由には限界があり、想定外の出来事も起こり得るだろう。そういった場合に備え、「その他前各号に準ずる事由」といった包括的な項目を設けることで、想定外の事態に対応できる。

<解雇予告を行う>
懲戒解雇の場合でも、解雇を行う30日前までに解雇予告を行うことが一般的だ。懲戒解雇の場合は、先述の通り、管轄の労基署所長に解雇予告除外認定の申請を行えば、解雇予告は不要であるが、多くの資料を提出することとなるため、実際には解雇予告を出し解雇するケースが多い。

社内規程違反を防ぐ方法

最後に就業規則などの社内規程違反を未然に防ぐ方法を紹介する。就業規則に違反した社員が出ることは、会社にとっても大きな痛手となる。そのため、日頃から違反者を出さないよう事前の対策が大切だ。具体的な方法をみていこう。

就業規則の「懲戒事由」を周知する
違反を未然に防ぐにはまず、社員に対し自社の就業規則への理解を促すことが有効だ。就業規則は周知しているものの、懲戒事由を全て把握できていない場合もあるだろう。懲戒処分に該当する事例を社員へしっかりと周知しておくことで、違反行為の抑止にもつなげられるだろう。

相談しやすい職場環境を整える
社内に気軽に相談できる環境があることも、違反行為の予防に効果的だ。例えば金銭的な困難を抱えている社員がいる場合などは、誰に相談したらよいのかがわからず、目の前の現金に手を付けてしまうケースも想定される。このような状況を防ぐためには、相談窓口の設置や相談フローの整備などの対応方法を検討するとよいだろう。

ケーススタディを行う
実際に起こってしまった違反行為の事例を基に、ケーススタディを行うことも有効な予防策だ。違反事例をもとに社員同士で議論してもらうことで、より就業規則への理解を促せるだろう。また、どうしたら懲戒処分を防ぐことができたかも検討でき、違反をしないための行動指針も共有できるため効果的といえる。

まとめ

就業規則をはじめとした就業規則に違反する行為を見つけた場合は、厳正な対応が必要だ。また、違反行為に対して懲戒処分を行う場合には、「懲戒事由」を明記した規則が整備されているかを確認をしておきたい。加えて、労務トラブルを回避するためには、懲戒事由を明確に伝えることや、事実確認ができる証拠を揃えておくこともポイントとなる。社内規程違反を未然に防止するための方法なども、参考にしてほしい。