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企業の組織開発とは?人材開発との違いや押さえておきたいポイント

2022.12.26
オフィスのミカタ編集部

組織開発とは、組織の内部で活動している当事者による、組織をより良くしていくための取り組みのことだ。社員同士や部署間など関係性にアプローチすることで、社員一人ひとりの能力を引き出し、組織全体の生産性を向上する効果が期待できる。この記事では、組織開発の目的や人材開発との違い、組織開発の具体的なフローや手法などを紹介する。導入する際に押さえておきたいポイントも解説しているので、組織開発を導入する検討材料にしてほしい。

目次

●企業における組織開発とは
●組織開発のフロー
●組織開発のフレームワーク
●組織開発を進めるときに押さえておくべきポイント
●まとめ

企業における組織開発とは

企業における組織開発とは、組織内部や組織間の問題にアプローチし、組織をより良くしていくための取り組みのことを指す。英語表記の「Organization Development」を略して「OD」とも呼ばれている。経済産業省では、組織開発を以下のように定義している。

『組織内の明示的/暗黙的な行動規範や価値観等に意識的・計画的に働きかけることで、個々の構成員の組織への信頼・貢献意欲、組織内の関係性を強化し、組織としてのアウトプットの質の向上や必要な人材の確保・リテンションを図るための一連の活動』

組織開発では、組織の内部で活用する当事者自らが活動を行うことがポイントだ。

(参考:経済産業省『「経営競争力強化に向けた人材マネジメント研究会」』

組織開発の目的
組織開発は、組織を環境に適合しながら変化させて、健全・効果的に機能する組織にしていくことを目的としている。広義では、集団の相乗作用が高まるような組織をつくり、個々の従業員のモチベーションを高め、生産性を向上させていくこととされている。

組織開発が注目される背景
企業で組織開発が注目される背景には、終身雇用制度の崩壊や年功序列の廃止、成果主義の導入などといった、働き方の変化がある。さらに、昨今のテレワークやフレックスタイム制などをはじめとして多様化する働き方により、組織内部の個々人のつながりは希薄化しているのが実情だ。このような変化に応じて、企業を取り巻く環境に適合しながら組織をきちんと機能させるための手法のひとつが組織開発である。

組織開発と人材開発の違い
「組織開発」と混同されがちなものに「人材開発」がある。組織開発は、チームや部署内、あるいは部署同士など、関係性に対してアプローチするのが特徴だ。一方の人材開発は、個々の能力を高めることで組織の成長を図ることである。例えば新入社員のモチベーションを上げるために、本人に研修や面談などを行うのが人材開発で、業務を教える先輩や上司との関係性に着目して社内での立ち位置や評価制度等を改善するのは組織開発といえる。このように、同じ課題でも組織開発と人材開発では、アプローチの仕方が違う。

組織開発のフロー

組織開発の実施は、以下のプロセスで段階的に行うのが一般的だ。ここでは、どのようなプロセスを踏んでいくのか、基本的な流れを紹介する。

基本的な流れ
組織開発の基本的な流れは以下の通り。

1.組織の目的の明確化
まずは、企業理念やミッション・ビジョン・バリューと照らし合わせながら「どのような組織を目指すのか」を組織内で共有しよう。組織開発そのものは目的ではなく、企業を良い状態にしていくための手段であるということを念頭に進めるのがポイントだ。

2.現状の把握
目指す姿に対する現状の課題を、客観的事実をもとに言語化する。漠然とした印象では課題解決につながらないため、社員へのインタビューや調査等を行い、組織の現状をできるだけ具体的に把握することが望ましい。

3.課題の絞り込み・設定
現状が把握できたら、課題の仮説をいくつか立てよう。組織開発の目的は企業によって異なるが、いずれの場合でも最初に「組織の目的」をしっかり設定していると、現状とのギャップから具体的な課題を見つけやすい。課題は複数の要因が複雑に絡み合っていることも多いため、さまざまな角度から検証を行い、課題の絞り込み・設定を行うのも重要だ。

4.アクションプランの検討・試験的な実施
課題を設定したら、具体的なアクションについてプランを練ろう。研修のように数日で終了するものではないため、長期的視点で、小さなことから実施していくのが重要である。始めは小規模のチームに絞って試験的に実施していくことで、比較的早く効果が出るだろう。スモールステップで進めることで、想定外のことが発生した際に早めに中止の決断を下すことも可能だ。

5. 効果の検証とフィードバック
試験的な実施が終了したら、効果検証とフィードバックが欠かせない。どのような成果があったか、課題は解決できたか、改善点は何かなど、検証とフィードバックは、できるだけ早期に行うのがポイントだ。小規模なチームで起きた問題は、大きな組織では深刻なトラブルになりかねないため、検証とフィードバックを繰り返してデータを蓄積しておきたい。

6.成功事例を全社に展開
試験的な効果があったプランは、なぜ成功したのかや具体的な取り組みを整理して、全社に展開していこう。併せて、マニュアルの整備や、関係者間でフィードバックや成果をすぐ共有できる仕組みの構築など、組織が目的に向かって自走できる環境を整えることも重要だ。全社へ展開した後も効果の検証とフィードバックを継続的に行い、さらなる改善を目指そう。

組織開発のフレームワーク

組織開発にはさまざまなフレームワーク(手法)がある。それぞれのフレームワークに特徴があり、課題や目指す目標に応じて選択したい。ここでは、組織開発に用いられるフレームワークから3つ紹介する。

コーチング
コーチングは、コーチと受ける側の双方向コミュニケーションにより、本人のやる気を引き出すための手法だ。「解決策は本人の中にある」というスタンスで、その人が持つ考えや行動を引き出して課題解決へつなげていくという特徴がある。組織にコーチングを取り入れると、社員の自主性が高まることで、組織全体が活性化していく効果が期待できる。
(関連記事:『コーチングとは?メリット・デメリットと、企業の人材育成に必要な理由』

マッキンゼーの7S
コンサルティング業界で有名な「マッキンゼー・アンド・カンパニー」が提唱した、組織を分析するフレームワークがマッキンゼーの「7S」だ。7Sでは、組織の改革には戦略や組織などのハード面だけでなく、人材やスキルなどのソフト面も併せて、7つの要素に相互関係があるとされている。7つの要素は以下の通り。

ハード:組織構造 (Structure)、戦略(Strategy)、体系(systems)
ソフト:人材(Staff)、スキル(Skills)、経営スタイル(management Style)、共通の価値観(Shared Value)

どちらが大事ということではなく、ハードとソフトが整合性を備えていることが重要だ。

タックマンモデル
アメリカの心理学者ブルース・W・タックマンによるフレームワークで、組織を結成から解散まで5つのステージに分けて、状態に応じた組織づくりを行うよう提唱している。自社がどの段階にいるかを認識して、ステップを踏んでチームとして目標に向かっていくため、チームビルディングにおいて効果があるとされている。

他にも「フューチャーサーチ」「ワールドカフェ」「アプリシエイティブ・インクワイアリー」「ナレッジ・マネジメント」など、いろいろなフレームワークがある。比較して、自社の課題解決に役立ちそうなものを検討・導入してほしい。

(関連記事:『組織開発と人材開発の違いと組織開発を進める具体的手法についてわかりやすく解説』

組織開発を進めるときに押さえておくべきポイント

組織開発のフローやフレームワークは重要だが、それだけで組織開発が成功するわけではない。組織開発の目的や必要性について上層部の合意がないままスタートすると、社内で混乱が生じる恐れがある。また、個人ではなく人と人との関係性にアプローチしていくため、社員の感情をマネジメントしていくことも重要だ。対人関係トラブルの発生や誰かが感情を押し殺しているような状況下では、生産性が下がっていき、深刻な事態になりかねない。社員の反応をよく観察して、問題が小さなうちに解決していくのが組織開発を成功させるポイントと言える。

まとめ

個人ではなく人同士の関係性に着目して組織開発を行うことで、企業の課題を解決することができる。ただし組織開発の実施は手法であって、目的ではない。最初に組織開発の目的を明確にしてから、成功事例を全社に展開するまでにステップを踏むことが必要だ。自社の課題解決に効果的なフレームワークを選び、関連書籍や組織開発を行った企業の事例なども参考にして、組織開発に取り組んではいかがだろうか。

(関連記事:『組織開発と人材開発の違いと組織開発を進める具体的手法についてわかりやすく解説