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定額減税とは?人事労務担当者がおさえておきたいポイント【freee解説勉強会より】

2024.03.29
奥山晶子

2023年12月22日、「令和6年度税制改正の大綱」が閣議決定され、方針が示された。これを踏まえ、2024年2月28日には人事労務や会社設立を支援するクラウドサービスのフリー株式会社が「2024年 労務で対応が必要な法改正に関する解説勉強会」を実施した。

勉強会では、税制改定大綱を受けた定額減税の解説と、今年人事労務での対応が必須となるパートアルバイトの社会保険適用拡大(※)について解説。本記事では定額減税について、人事労務担当者がおさえておきたいポイントを紹介する。
※解説記事:パート・アルバイトの社保適用拡大で何が変わる?人事労務担当者がおさえておきたいポイント

定額減税とは?

定額減税とは、対象となる全ての国民に対して2024年分の所得税3万円、個人住民税1万円の計4万円を減税するものだ。過去2年間で所得税・個人住民税の税収が3.5兆円の増加となり、物価上昇による国民負担が高まっていることから、国民に税の形で直接還元する運びとなった。

定額減税について岸田首相は、2023年10月26日の政府与党政策懇談会で「賃金上昇が物価高に追いついておらず、放置すれば再びデフレに戻りかねません」と発言。賃上げが物価に追いつくまで政府として支えることが肝要とした後で、他の税制会改革と併せて「定額減税の検討を深めていただき、令和6年度税制改正として、いずれも年末に成案を得るべく、その方向性を今般の経済対策に盛り込んでいただきたい」と語っている。

定額減税の対象者

定額減税が受けられる条件は、以下の2つだ。

・日本国内に住んでいる
・合計所得金額が1805万円以下(給与収入のみであれば2000万円以下)

本人だけではなく、同一生計配偶者や扶養家族(16歳未満も)も対象となる。

労務担当者が必要になる対応

企業の労務担当者は、個人住民税額の計算については対応することがない。自治体が定額減税適用後の税額を計算してくれるためだ。特別徴収の場合、2024年5月頃に届く通知書の通りに税額を会社の給与から控除するだけで対応が完了する。

対応が必要となるのは所得税の方だ。所得税の定額減税には、2024年6月からの給与・賞与から定額減税額を控除する「月次減税」と年末調整時点の定額減税額を元に精算する「年調減税」がある。

以下、月次減税の対応方法と年次減税の対応方法について、それぞれ詳しく解説する。

所得税に関する定額減税の対応:月次減税編

月次減税については、6月1日以降に支給する給与または賞与で以下の対応が必要になる。業務の流れを説明した後、従業員に周知すべきことをお伝えしたい。

月次減税の4ステップ

1. 対象者の抽出
対応の対象となるのは、2024年6月1日時点で在職しており、源泉徴収税額表の甲欄適用者である日本国内居住者だ。5月31日以前に退職した従業員や、6月2日以降の中途入社員は対象外となる。

2. 対象金額の算出
所得税の定額減税額は1人3万円。この「1人」は本人だけにとどまらない。本人と同一生計配偶者、扶養親族も対象となる。同一生計配偶者がいて、扶養家族が2人いる従業員の場合は、本人も併せて合計4名分、つまり12万円が減税される。

同一生計配偶者は、「扶養控除等申告書」の「A 源泉控除対象配偶者」の欄を確認する。対象配偶者の2024年中の所得見積額が48万円以下の場合、同一生計配偶者としてカウントする。48万以上であれば配偶者本人の給与から減税になるため、対象外となる。

扶養親族は「扶養控除等申告書」の「B 控除対象扶養親族」とともに、「(住民税に関する事項)16歳未満の扶養親族」の欄も確認し、合計する。今回の定額減税は、16歳未満の扶養親族も対象となるためだ。

それぞれ居住者であるか否かも確認した上で、6月1日時点の情報により定額減税額をいったん確定しよう。今後、扶養親族の増減等が発生したら全て年末調整で対応する。

3. 給与・賞与への反映
月次減税額を一度の給与・賞与支払いで控除できれば、それでひとまず月次の対応は完了する。ただし、扶養親族が多いと1度では引き切れない可能性が高くなる。月次減税額は、全額控除しきれるまで数度にわたっての控除が必要だ。

4. 書類の出力
控除額の計算ができたら、従業員に配布する給与明細への記載が必要だ。該当する給与や賞与を支払う際に、そのつど控除できた定額減税額のみを記載する。なお重複しての控除や計算違いが生じないよう、各従業員の月次減税額を記録しておこう。

従業員に周知すべきこと

従業員には、扶養親族の人数に申告漏れがないか、「扶養控除等申告書」の内容をチェックするよう周知しよう。

このたびとくに注意したいのが、これまで所得要件に関係がないからと申告を省略していた扶養親族がいないかどうかだ。また、夫婦間で同一の子を扶養するなど、重複事項がないかどうかも確認が必要だ。

所得税に関する定額減税の対応:年調減税編

2024年12月には、年末調整における年額減税額の調整対応が必要になる。流れや注意点は以下の通りだ。

年調減税の3ステップ
1. 年末調整時点の情報で対象者と対象金額を抽出する
月次調整と同様に、年末調整の時点で定額減税の対象者と対象金額を抽出する。このときとくに注意が必要なのが、以下3つのパターンだ。

・6月2日以降の中途入社員
 同一生計配偶者の有無や扶養親族の数を確認の上、年末調整で定額減税分を控除する。
・本人の年収にかかわらず同一生計配偶者がいる
 「基配所」※1または「源泉徴収(兼年末調整)に係る定額減税のための申告書」の提出が必須となる。
・年の途中で扶養親族に増減があった
 扶養親族の死亡や出生がある場合は増減数を反映する必要がある。年末調整時に提出される「扶養控除等申告書」や「基配所」を確認し、増減数を反映する。

※1「基配所」:「給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」のこと。2024年分は「年末調整に係る定額減税のための申告書」も兼ねる。

2. 年末調整を行う
通常通りの年末調整作業を行い、税額計算を行った後に住宅借入金等特別控除後の年調所得税額から年調減税額を控除し、102.1%を乗じた額を年税額として算出する。

年調減税額を控除しきれない場合は、年税額は0円となる。控除しきれない金額については、控除外額として記載する必要がある。今後、各市区町村での給付が行われるためだ。

※出典元:国税庁「給与等の源泉徴収事務に係る 令和6年分所得税の定額減税のしかた 」p.11(国税庁)

3. 各種書類への反映
従業員に配布する源泉徴収票には、控除し切れた場合は年調減税額を記載し、「控除外額0円」と概要欄に記載する。控除しきれなかった場合は、控除できた減税額を記載し、控除外額についても概要欄に記載する。

なお、同一生計配偶者がいて、従業員本人の合計所得金額が1000万円を超えている場合は、「非控除対象配偶者減税有」と記載する必要がある。

出典元:「給与等の源泉徴収事務に係る 令和6年分所得税の定額減税のしかた 」p.15(国税庁)

年末調整の際の詳しい事務の内容については、国税庁HPの「年末調整がよくわかるページ」で各種情報を2024年9月頃から随時掲載される予定としている。

まとめ

フリー株式会社(以下、freee)の勉強会では、今後freeeが定額減税対象者の抽出から書類の出力までを「freee人事労務」上で可決できる機能を開発することが明らかにされた。2024年5月に提供開始予定だ。

定額減税への対応で税額計算はますます複雑になるが、分からないことがあれば税理士や社労士に相談し、正しい対応ができるようにしたい。

参考元:「給与等の源泉徴収事務に係る 令和6年分所得税の定額減税のしかた 」(国税庁)