「名刺交換で終わらせない」Sansanがデジタル名刺ソリューションを提供開始

2025年5月26日、Sansan株式会社(本社:東京都渋谷区、以下Sansan)は、祖業である営業DXサービス「Sansan」(以下、Sansan)の大幅アップデートに関する記者発表会を開催した。登壇したのは、CEOの寺田親弘氏とSansan事業部 事業部長の小川泰正氏。リリースから19年目となる今回のアップデートでは、名刺交換後に相手へプッシュ型の連絡を届ける新機能が加わった。
半分以上の事業者が名刺を見つけられない
Sansanは受け取った名刺をスキャンすると、AI-OCR(光学文字認識)と人力で名刺をデータ化し、一元管理できるサービス。同サービスは、名刺管理市場で84%のシェアと10000社以上の導入実績を持つ。
しかし、名刺を受け取った側が適切に管理していても、渡した相手も同様とは限らない。Sansanを活用する企業が取引先や商談先の名刺をしっかり保存していても、相手側がどのように名刺を管理しているかはコントロールできないのだ。

Sansanの調査では、買い手の57.7%が受け取った名刺を「すぐに使える状態で管理できていない」と回答し、40.7%が「必要なときに見つけられなかった」と回答した。一方、ビジネスパーソンは連絡を取りたい相手がいるとき、約7割がメールボックスを探し、約4割の購買検討にかかわる連絡は商談から1年以内に行われているという。

「受け取った紙の名刺の多くがそのまま引き出しに収納されるか、最悪は捨てられています。営業担当が商談を獲得しても、数カ月後に商談相手が『前に話したあの人に連絡しよう』と思ったときのビジネスチャンスが半分は損なわれています」と寺田氏は語る。
ちょうどいい温度感の探しやすい名刺というソリューション
そこでSansanは「受け取った名刺の数だけ渡した名刺がある」ことに着目し、名刺交換した相手のメールアドレスに自動でデジタル名刺を届ける新機能を実装した。同機能は受け取った名刺をスキャンすることで、自動的に相手のメールフォルダにデジタル名刺を届ける。
小川氏は20名の営業担当者が各自月間15回の商談を行う企業を例に挙げて以下のように述べた。「年間3600枚の名刺を交換しても、相手側では半分の1800枚しか管理されていません。デジタル名刺を使えば、3600通のメールが相手のメールボックスに蓄積されます」


Sansanの新ソリューションを活用すれば、名刺を受け取った相手はメールボックスから商談相手を探せる。そのため、寺田氏が「半分以上は渡していないのと同じ状態」と語る現状に対して、名刺の価値を最大化できるという。
受信するメールには、Sansanのロゴはもちろん、営業情報としても多くの情報は記載されない。その内容量について寺田氏は「アーカイブされがちなメルマガと、返信する気を遣う私信メールの中間くらいの温度感」と表現する。
新ソリューションは、メールの内容と紙の名刺を一括してデザインする「デジタル名刺メーカー」とセットで提供され、Sansanは紙名刺の印刷も請け負う。

「名刺の発注をデジタル名刺メーカーに切り替えるだけで完結します。大きな企業でも情報を一括してCSV登録できるので、常に最新で正確なデジタル名刺と紙名刺をセットで運用できます」(小川氏)

デジタル名刺で他部門経由の商談も増加する可能性
Sansanがサービス公開前に行った自社での運用実績では、デジタル名刺の商談化率が0.5%を記録。これはメールマガジンの0.1%以下を大きく上回る数値だという。3月から先行案内した企業群ではすでに50社が導入を決定している。

デジタル名刺の効果について小川氏は「デジタル名刺の送付は名刺交換の延長なので、違和感なく受け取ってもらえるだけでなく、反応率も高いです。弊社の実績では900件の送付に対して5件のアポが得られました」と説明。
名刺交換後にフォローアップのメールを送らない担当者が多いことや、社内他部門からの紹介で取引を開始した経験のあるビジネスパーソンが6割に達していることにも触れ、営業以外のチャネルでの活用も有効だと語った。

Sansanが目指すのは、デジタル名刺によるフォローアップが当たり前になる社会だ。同社は、サービス内にシェア拡大の宣伝を忍ばせるのではなく、デジタル名刺を受け取ったユーザーがその利便性を実感することで自然と広がっていく――そんなネットワーク効果に期待を寄せている。
新機能のデジタル名刺は、営業DXサービス「Sansan」のオプションとして追加された。新テレビCMもスタートし、寺田氏は「10000社の事業者様にすべからく使っていただきたい」と語る。「名刺を送ること」が当たり前になれば、商談の質が経営に与えるインパクトも可視化されていくだろう。