DXは “手元”から 業務効率化ソフトウェア「リテラアップ」が大企業に選ばれる理由
バックオフィス業務のDX推進が叫ばれるなか、「研修を受けても現場に戻ると忘れてしまう」「担当者によってPC操作のスキルにばらつきがある」といった共通課題を抱える企業の人事・総務担当者は多い。そうした現場の声から生まれ、2020年にリリースされた業務効率化ソフトウェア「リテラアップ(Litera App)」が今、多くの大手企業に導入され、注目されている。いったいどのようなソフトウェアで、なぜ選ばれているのか。同ソフトウェアを開発した株式会社リベンリ代表取締役の倉橋康友氏に聞いた。
原点は「パソコン操作が苦手」というコンプレックス
リテラアップとは、ユーザーのパソコン操作をAIが学習し、ユーザーが非効率な手順を踏んだ際に「その場でアドバイス」を行うソフトウェアだ。株式会社リベンリが法人向けサービスとして2020年10月にリリースを開始し、2023年3月27日にはソースネクスト株式会社が、パソコン用ソフトとして「Litera App(リテラアップ) 買切ダウンロード版」の発売を開始している。
サービス開始から2026年4月までの累計ユーザー数は22000人以上。アクティブユーザー数は1万人超で推移しており、導入先は大手企業を中心に累計200社以上、顧客満足度は80%を超えるという。
だが株式会社リベンリ代表取締役の倉橋康友氏はもともとパソコンが得意ではなく、新卒で入社した会社ではかなり苦労したという。
「入社時、周りは当たり前のようにExcelの計算を使いこなしていて、『これはまずい』と感じたのを覚えています。でも苦手意識があったからこそ、ちょっとでもできることが増えていくのがうれしかった。その気持ちがリテラアップ開発の原点となっています」
その一方で、パソコンスキルは教育としては軽視されがちだという不満も抱いていた。
「業界知識の研修はしっかりあるのに、毎日使うパソコンについては『とりあえず渡すからやっておいて』という扱いになりがち。そこにずっと違和感があって、パソコンスキルを底上げする仕組みが必要だと感じていました」
2018年に会社を辞めて株式会社リベンリを設立。いくつかのサービスを開発する中で、“パソコンスキルを底上げする仕組み”というアイデアもその一つとして温めていた。それを商品化するきっかけとなったのは、起業してMacを購入したことだった。
「前の会社でさんざん苦労して覚えたWindowsのショートカットキーがMacでは使えないことがわかり、がっかりしました。でもその時に、『自分が非効率な操作をした時にその場で教えてくれる仕組みがあったら、作業をしながら学習もできる!』とひらめいたのです。自分自身がパソコン操作に苦手意識を持っていたからこそ、この発想に至ったのだと思います」
実際に調べてみても、同じようなサービスは見当たらなかった。“他社にない”ことをポジティブに捉えるべきか、不安に思うべきか迷ったが、前の会社のエンジニアで現在は株式会社リベンリ取締役CTOを務めているメンバーにも相談し、モックアップを作って検証。ユーザーの声をヒアリングしていく中で、「これはいけそうだ」という手応えを得て、本格的に事業として立ち上げることを決意した。
「サービスを立ち上げた当初は、『これを商売にしようと思うのがすごいね』と言われることも多くて、褒められているのか、半分嫌味なのか分からないような反応もありました(笑)。でも根底にあるのは、『パソコンが不得手な人のためのものを作りたい』という思いです。実際、弊社の若手営業メンバーにも『自分が欲しいと思ったから売りたい』と言って入社してくれた人もいます。そういうリアルなニーズがあることについては、迷いがありませんでした」
技術的な部分についてはエンジニアメンバーがゼロから仕組みを作り上げたが、実はそれ以上に泥臭く、粘り強く積み上げていったのが、「アドバイスの中身」を作る作業だった。
「ユーザーにどのタイミングで、どういう言い方をすれば伝わるのか。この部分は一つひとつ手作業で考えていきました。今でもそのスタンスは変わっていません。現在、アドバイスの数は4000ほどありますが、今もなお追加し続けています。最近ではショートカットキーだけでなく、機能そのものの使い方や活用方法までアドバイスの範囲を広げています。そうなると、当然コンテンツはどんどん増えていく。終わりのない作業ではありますが、それだけ価値のある部分だと思っています」
仕事をしながら最適解を覚えていく設計
パソコン研修は多くの会社で実施されているが、リテラアップがそれらと大きく違うのは、「ユーザーのクリックや操作を見て、その場で最適なやり方を提示する」「業務の中でリアルタイムに教えてくれる」という点。
「リテラアップがアドバイスする内容自体は、正直に言えばパソコンの参考書に載っているような基本的なものです。でも研修で一度覚えても、実際に使わなければすぐに忘れてしまうスキルって多いですよね。だから日々の業務をしながら、その人に合ったアドバイスが自然に出てくる仕組みにしています」
もちろん、パソコン研修のように体系的に学び、全体像を理解することは重要だ。そのうえでこのサービスを使って日々の業務の中で反復していく。いわばフォローアップツールとして併用するのが最も効果的な使い方だと考えているという。さらに特徴的なのは、どの操作ができていて、どの操作ができていないかをデータとして可視化できる点だ。企業への導入のきっかけとなることが多いのも、この機能のへの評価。
営業の際に「どんな研修をやっていますか」「何か課題はありますか」といったヒアリングを行うが、その時点では課題が明確に見えていないケースも多い。そこで同社では「1カ月間、試しに使って効果を計測してみましょう」と提案する。
「実際にツールを入れていただくことで、社員一人ひとりがどの程度パソコンスキルを使いこなせているのかがデータとして可視化されますし、1カ月間である程度の改善効果や傾向が見えてきます。『1カ月でこれだけ時間が削減できた』という実績をもとに、『このまま6カ月続ければこれくらいの効果が見込めます』といった具体的な見通しも提示できます」
こうした定量的なデータと同時に、ユーザーへのアンケートも重視している。「このまま続けたいか」「スキルが身につきそうか」といった定性的な評価も確認しながら、導入判断をしてもらう。こうしたプロセスを経ると、「やはり課題がある」「特にスキルの低い層を底上げしたい」といった認識が共有されるため、導入がスムーズに進むという。
リテラアップのWebサイトには大手ゼネコンや製造業の導入実績が並んでいるが、人数規模が大きい会社ほど効果が出やすいからだ。個人単位では月に2〜3時間の業務効率化を見込んでいるが、10人、20人規模だとインパクトは限定的。一方で、大手企業になると全体で数千時間規模の削減につながるケースもあり、評価も高くなる。ちなみに同ソフトはMacには対応していないが、大企業の多くがWindows環境なので、現在の仕様でも十分フィットしていると言う。
導入企業は大手有名企業が多く、業種別で見ると製造業、建設業、不動産業で6割程度を占める。いずれの業界も、「人手不足は避けられず、今いる人材の生産性をどう高めるか」というテーマに直面しており、その解決策のひとつとして、同サービスが選ばれているという。
伸びしろという“宝の山”を可視化できるサービス
「企業としては、すでにパソコンという環境は整っているわけです。それをどれだけ活用できているかで、大きな差が生まれます。そこを引き上げる余地がある、いわば“宝の山”が見えるようになるのが、このサービスの価値だと思っています。もちろん、AIの活用もこれからますます重要になっていくと思います。ただ、その前提として、日々の業務を支える基礎的なパソコンスキルは欠かせません。その土台を整える役割を担えるのが、このサービスです」
もちろん、ショートカットによる時短効果もあるが、それ以上に大きいのはユーザーの「意識の変化」だという。「こういう機能を使いこなしてみよう」「新しいやり方に慣れてみよう」といった前向きな姿勢が生まれると、他のDX施策にも波及していく。つまり、仕事をしながら最適解を覚えていく設計であり、教育というよりも、パソコン操作における行動そのものを変えていくサービスといえる。そうした変化が、結果的に組織全体のDX推進につながっていくのではないかと倉橋氏は語る。
「実際に導入いただいている企業では、人事部やDX推進部門の方が担当されるケースが多いのですが、そうした方々は新しい施策を導入しても、現場の方々が抱く抵抗感に苦慮されることが多い。でもこのサービスは『あなたのために導入している』と伝えやすいツールなんです。実際に、『これまでの施策の中で一番抵抗が少なかった』と言っていただくこともあります。業務を変えるための押し付けではなく、個人の成長を後押しするものとして受け入れてもらえる。そこに価値があると感じています」
インストール型のソフトだからこそ実現できる領域を広げていく
倉橋氏は今後、このサービスを、“ユーザーのパソコンの中にソフトをインストールして使ってもらっている”という強みを活かし、「業務改善の入り口」として、さらに活用を広げていきたいと考えている。現在、すでに3つほどのプロジェクトが並行して動いているとのこと。
その中でも一番大きいのが、プロセスマイニング(業務プロセスを可視化・分析することで現状を把握し、改善すべきポイントを洗い出すための技術の取り組み)。
「たとえば、日々のルーティン作業がどれくらいあるのか、資料作成と顧客対応にどれくらい時間を使っているのか、といった分析です。通常よりも詳細なログ取得の許可をいただけると、かなり具体的な業務内容が見えてきます。そうしたデータをもとに、『この定型作業は自動化できるのではないか』といった提案までつなげていく。これはインストール型のソフトだからこそ実現できる領域だと考えています」
また、化学メーカーなどが扱う膨大な実験データを横断的に集約し、自動でレポート化する仕組みを作るといった展開や、OCRによる書類処理の効率化など、「目の前の業務をどれだけ短縮できるか」に直結する機能も強化していくという。
「ショートカット支援から始まり、業務の可視化、そして自動化へ。今後はこの一連の流れをプラットフォームとして提供していきたいと考えています。ただし、どこまで広げても、最終的に重要なのは、ユーザー一人ひとりのスキルと意識の向上です。手元の操作を少し変えることで仕事が変わる、その実感を提供し続けること。それを軸にしながら、サービスを進化させていきたいと思っています」
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