AWSジャパン、AI・クラウドで地域創生を支援 「LEAP by AWS Japan」が始動
2026年8月17日、アマゾン ウェブ サービス ジャパン(以下、AWSジャパン)は、クラウドや生成AI、AIエージェントの活用支援、人材育成、地域データの利活用を通じて地域経済の自立的な成長を後押しする新プログラム「LEAP by AWS Japan」を発表した。同日開催された発表会では、新潟・福岡で既に進んでいる取り組みが紹介され、テクノロジーが地域課題の解決にどのように寄与し得るのか、その具体像が示された。
AWSの「地域」に対する取り組み
発表会ではAWSジャパン広域事業統括本部長の原田洋次氏が登壇し、まずは取り組みの概要を解説した。日本の人口の約8割、企業の約8割が、東京・大阪以外の地域に存在している。AWSは「地域活性化なくして日本経済の成長はない」と、地域創生に向けた取り組みを多数行ってきた。
広域事業統括本部は47都道府県に最新テクノロジーとAIを浸透させていくことをミッションにしている。このスローガンのもと、地域の課題ヒアリングから始まり、新潟県やつくば市(茨城県)など自治体との連携協定、地域内産官学金の連携推進などを行ってきた。昨年には、AWSジャパンとして地域創生チームを立ち上げている。
新プログラム「LEAP by AWS Japan」の4つの柱
AWSジャパンの地域活性化における大きな狙いは、産官学金を有機的に結びつけるプログラムの提供だ。そのプログラムが「LEAP by AWS Japan」であり、4つの支援メニューを柱としている。
①AI/クラウド体験・導入
地場企業向けに、各社最大5万ドルのAWSクレジットを提供。POCから本格導入までのコストをサポートし、AIエージェントの体験イベントやハンズオンセッションを通して体験機会を創出する。
②クラウド・AIスキル強化
地域ITサービス企業向けに、AWS認定資格に向けた技術研修などのトレーニングを提供。スキルアップ、営業力向上、パートナー認定などに向けた支援を行う。
③地域AI/クラウド人材育成
教育機関および学生向けに、ビジネスコンテストや無料カリキュラムの提供を通して学びを支援。
④地域データ活用
主に自治体・地方銀行向けに、地域データの活用や民主化を支援。地域の様々なプレイヤーが組織の垣根を越えてデータを掛け合わせ、新たな価値を創出する「データコラボレーションワークショップ」の開催など。
プログラム名の「LEAP」は、「Local Economy Acceleration Program」の頭文字から取られた略称。英語の「Leap」には飛躍という意味があることから、「地域の企業様、学生の皆様、社会の方々にAIとテクノロジーを使って飛躍していただきたいという思いで命名した」と語られた。
【先進事例 新潟】「産官学金連携」の成功モデル
AWS原田氏による「LEAP by AWS Japan」発表の後は、事例紹介に移り、株式会社BSNアイネットの坂田源彦氏が登壇し、取り組みを詳細に語った。BSNアイネットは、地域課題をICTで解決することをコンセプトとした新潟の中堅企業。産官学金が交流する新潟駅前のイノベーション拠点「NINNO(ニーノ)」の立ち上げメンバーで、NINNOにはAWSジャパンも会員参画している。
NINNOは「学生支援」「地域課題解決プロジェクト推進」「人材育成」の3つを循環させる仕組みを持ち、活動は今年で6年目に入り、学生から社会人まで幅広い層が参加している。AWSとは当初から深く協働しており、産官学金による共同プロジェクトやデジタル社会実現ツアー(※)、クラウド/AI人材育成など多方面で連携が進んでいる。
「LAST NIIGATA」イノベーションウィーク
NINNOをフル活用しながら産官学金の共創関係を作る仕組みを可視化するため、昨年(2025年)初めて「LAST NIIGATA」イノベーションウィークを開催した。新潟県内のさまざまな行政施策、民間施策を集め、滞在型で交流できるイベントだ。昨年はAWSジャパンの白幡社長が登壇し、「新潟AI構想」を発表。2026年も11月に開催予定だという。
DXからAXへ──新潟のポテンシャル
新潟県は経産省のDX認定数(中堅・中小企業等)で全国1位となるなど、DX推進が急速に進んでおり、その先にあるAI活用(AX)に向けて、県と連携しながら施策をリードしている。今年は国の重点施策交付金を活用した「新潟県AI活用推進ラボ事業」を受託し、地元企業の課題収集、AI企業とのマッチング、補助金による実証支援などを進めている。
坂田氏は「ここに至るまでにはAWSさんとの繋がりが非常に多かった」と発言し、AWSジャパンが行った複数のワークショップやデジタル実現ツアーが功を奏したと語った。そして「こういった取り組みを持続し、形で表していくという意味では、地場産業の底力を上げていくことが必要」と強調し、DX・AX文脈で県と協働しながら事業を展開していると述べた。
【先進事例 福岡】地方特有の「人材課題」を「産学連携×生成AI」で突破
続けて株式会社soraプロジェクト代表取締役社長の樋口裕貴氏が登壇し、筑紫野市(福岡県)で400名規模のコールセンターを運営する立場から、AIエージェントの活用について発表した。
soraプロジェクトはアウトバウンド型のコールセンターで、テレアポや商談などの営業代行、営業DXツールの導入支援、営業組織強化・育成(テレアポ研修など)を行っている。樋口氏は、直面している課題として「人材確保の難しさ」「対応品質を均一に保つ難しさ」「オペレーターの前後工程の負荷集中」を挙げた。
これらを解決する可能性を持つのが、社内AIシステムの構築だ。そこで日本有数のAI教育を行っている久留米工業大学と産学連携し、テレアポによる数百万件の音声データからシステムの協同研究を進めている。現在はローカル環境で研究を進めているが、来年にはAWS上での開発へ移行予定だ。
具体的には、AWSが公開する生成AIリファレンス実装「GenU」を基盤として商材マニュアルやトークスクリプト、過去の応対記録をAIが解析し、RAGによる検索で複雑な業務マニュアルからピンポイントで回答を迅速に導き出す。こうして活用を進め、AIエージェントによってコールセンター業務を高度化していく。
今後はAI化のノウハウをSaaS化し、サービス展開をしていく構想を持つ。樋口氏は「AIによるサービス開発が容易になった今、コールセンター運営の知見を外部提供することで地方から新しい仕事の形を生み出したい」と語った。
「発表して終わりにしない」姿勢
発表会の最後には再び原田氏が登壇し、今年も「デジタル社会実現ツアー」を全国8か所で開催することを発表した。札幌から福岡まで、各地でLEAPの取り組みや学生コンテストの発表、地域企業の登壇を重ね、年間を通じて各県をフォローアップしていく。AIとDXを地域から加速させるための仕組みをつくることが狙いだ。
AWSが描く地方創生のビジョンは、産官学金の連携を軸に、地域の力を底上げしていくことにある。今回のLEAPは、そのビジョンを具体的な支援メニューとして提示したものだ。原田氏は「我々の地域に対するさまざまな活動、お客様とのいろいろな共有をぜひこれからもご理解いただいて、ご発信いただけると幸いです」と、発表会を締めくくった。










