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「VUCA」時代に対応するチーム強化メソッドを公開 バックオフィス変革には「仕事の進め方」が重要

2022.09.08
オフィスのミカタ編集部

総合人材サービス・パーソルグループのパーソルプロセス&テクノロジー株式会社(東京都江東区、代表取締役社長:横道 浩一)は、チーム強化メソッド「COROPS(コロプス)」の無償提供を開始した。今回は、同サービスの開始に合わせて開催された、トークセッションの模様をお届けする。登壇者は、同サービスのアドバイザーを務める組織変革Lab主宰の沢渡あまね氏と、同サービスを担当するビジネスエンジニアリング事業部部長の小野陽一氏の2名。

VUCAの時代になぜ仕事の進め方が大切なのか

「仕事の進め方」の重要性について、沢渡氏は、従来のやり方がすでに限界となっている、と指摘する。日本社会はこれまで過去60年近く、個々人の気合や根性や創意工夫に依存してきた。そうした過去の「勝ちパターン」が通用しなくなっている。ベテランの従業員でも新しい手法の創出や課題解決への答えを持っておらず、過去に答えを求めにくい状態に陥っている、というのだ。

そのなかで、企業は3つの多様性に向き合う必要があるという。1つ目は「人の多様性」。専門分野が得意な似たような能力や資質の人だけではなく、さまざまな能力や資質の人同士がチームを組んで、突破していくことが求められる。2つ目は「環境の多様性」。テレワークとオフィスワークの融合に加え、時短勤務や副業人材の登用など、働き方や環境の異なる人がチームを組んで、成果を出していくことが求められる。そして3つ目が「テーマの多様性」。デジタルトランスフォーメーション(DX)での仕事の取り組み方のアップデート。あるいは、新型コロナウイルスの感染が続くなかでの事業継続性。こういった多様なテーマに向き合うことが求められている。このようにさまざまな多様化が進むなかで、一体感を持って行動するためには、コミュニケーションの仕方、報告や改善の考え方など、共通のプロセスが重要になるという。

管理部門・間接部門はこれまで、業務プロセスのモデルがなかった。業務プロセスのモデルと聞くと、多くの日本人はマニュアルを想起するかもしれない。しかし、COROPSにおける「業務プロセス」は、マニュアルのような個々人の挙動を制限するものではない、と沢渡氏が説明する。

「細かくマニュアルで定めるというのは、変化が求められる時代では対処しづらく、人の主体性を奪いかねない。ですがプロセスは、方法ではなく、共通の考え方やその内容を整理して、細かな部分は個々の事情に応じて変えていくもの」だという。

プロセスがなくマニュアルしかない従来の環境が、人の主体性を奪い、組織内での軋轢を生んできた。
「管理業務の柔軟性が、管理業務は全社共通の業務です。そこが雁字搦めだと、他部門も迅速に行動できなくなります。管理業務の能力を正しく解き放ち、アップデートすることが、企業としての成長を大きく左右すると思います。」(沢渡氏)

改善し続けられる仕事の進め方

管理部門においては、仕事の進め方が生産性にも影響を与えるため、仕事の進め方が改善されると成果にも直結する、と小野氏は話す。多様な人々が参加するには、プロセスや考え方を定義して、色んな人が参加できる環境を作ることが求められる。多様な人が組織に加わると、仕事の進め方や改善について議論が進み、結果として管理部門の付加価値の向上にもつながる、というのだ。

さらに、仕事の進め方の効果として、人の成長にも影響を与える、と小野氏は指摘する。
「いい仕事の進め方に取り組むと、専門性以外の業種職種に関わらない職務遂行上のスキル、いわゆるポータブルスキルを高めることになります。また、仕事を整理して可視化し改善していく過程が、いい仕事の進め方を学ぶことにもつながるのです。」(小野氏)

それに対し沢渡氏は、個々人の「自分経営戦略」を大きく左右する、と同調する。
「人生100年時代において、再雇用で買い叩かれるか、残ってほしいと頼まれるかは、いい仕事のやり方を続けられるかどうか、だと思います。組織の視点で考えると、いい人材を集め組織として成長するためには、仕事の進め方のアップデートは必須事項なのです。」(沢渡氏)

改善し続けられる組織に求められるものとして2つの要素がある、と沢渡氏は話す。1つは「余白」。時間がないと目先の仕事だけに一生懸命になる、ということは起こりがちだ。この状態では、その仕事が前後の工程に与える価値や、仕事の仕方の改善への議論すらできない。中長期的に価値を高めるために、やり方を変え新しいスキルを身につける。あるいは、今後どうしていくのか議論する。そのためにも余白が必要なのだ。

余白のために可視化が必要という認識は、二人に共通する見解だ。
「現在地と目指す姿を見える化することが大切です。現在地を可視化することで仕事の現状や目指すべき姿がわかります。改善できるから余白が生まれるのだと思います。」(沢渡氏)

「仕事が可視化されることで、注力すべき箇所や品質の向上など、より具体的な次の課題が見えてきます。なので余白を生むためには、チームで取り組む課題も含めて、可視化することが重要です。」(小野氏)

さらに余白を生む過程で主体性が求められる。余白を作るためには、仕事の仕方を改善したり、やめたりすることで、ときには強制的に生みだすことも必要となる。ところが目先の仕事に一生懸命な社員は、今の仕事がなくなることを恐れててしまう。そこでメンバーが一緒にディスカッションして、トライアンドエラーにより、変わっていく主体的な体験が重要となるのだ。さらに沢渡氏は、主体性を育むうえでは情報共有も欠かせない、と指摘する。

「情報が与えられない状態は、人から主体性を奪う。なので情報を可視化することで主体性を引き出す、という視点も大切だと思います。」

効率化により創出された時間を活用した新たなチャレンジ

COROPSの利用事例として、小野氏は同社のITアウトソーシング部門での実例を紹介した。小野氏が配属された当初、同部門では課題が山積し、離職率が高く業績も悪い状況だったという。実態把握により、コミュニケーションのやり方が共通化されておらず、情報流通がされていない現状が明らかとなる。

そこでCOROPSの前身となるメソッドを作成し、仕事のやり方の共通化を進めた。業務プロセスの可視化と改善を行い、生まれた余白でお客様の本質的なニーズの吸い上げに注力した。その結果、離職率も低下し、業績も大きく改善した。小野氏は、「この過程で自信と誇りを得られたのだと思います。それ以前は、自分たちの事業は斜陽なのではないかと思うほどでした。しかし改善することで成長していけると実感した」と語る。

マネジメント手法としては、プロジェクトマネジメントの「PMBOK」がよく挙げられる。COROPSとPMBOKを比較すると特性が違う、というのが沢渡氏の見解だ。

「PMBOKは、アメリカの宇宙開発の現場で開発されたメソッドであるが、有期的なものづくりのプロジェクトに長けています。一方、今回開発したCOROPSでは、企業の管理・間接部門の継続的な組織運営を対象としています。両者は「ものをつくる仕事」と「ルーティンを回す仕事」というそれぞれの仕事の価値を高めるためにつくられているのです。」

1,600以上のチーム運営実績からそのノウハウを集約

COROPSは、2022年8月23日から無償で提供されている。近年、テクノロジーの進化や新型コロナウイルスの感染拡大によって、企業を取り巻く環境は、急速に変化し複雑化している。こうした、将来の予測が困難な状況にあって、「VUCA時代」とも称される。そんななか、同社のアウトソーシング事業では、20年にわたり1,600以上のチームで、その運営や実務実行に携わってきた。この度、その培ってきたノウハウを集約した、チーム強化メソッドCOROPSの公開に至った。

COROPSは、ビジネスプロセスを可視化することで、迅速にチーム構築・運営ができるよう独自に追求。業務負担を減らしながら、仕事の進め方に革命を起こす、新時代のためのチーム強化メソッドとなっている。チームの運営にあたり、業務を行う上で必要な要素を「4つの視点」と「3つの局面」で整理。「4つの視点」においては、さらに9つの項目に細分化、合計27項目に分類し、いつ、何を、どのようにすべきかを明確にしている。またチームで業務を行う上で、意識すべき事柄の抜け漏れを防ぐために、独自のプロジェクト管理メソッドとなる要素を体系的に集約。これにより、仕事を進めやすい仕組みを作り、成果を創出し、さらに変化に合わせた継続的な改善進化を図ることを目指したメソッドとなっている。