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「雇用調整助成金」不正受給はサービス業他が最多で累計919件に|TSRデータインサイト

2024.01.31

全国の労働局が2023年12月31日までに公表した「雇用調整助成金」(以下、雇調金)等の不正受給が、919件に達することがわかった。不正受給の総額は284億7621万円にのぼる。株式会社東京商工リサーチ(以下TSR)は、919件のうち、TSRの企業データベースに登録された686社を分析。産業別ではサービス業他が最多となったことを明らかにした。
※本調査は、雇用調整助成金または緊急雇用安定助成金を不正に受給したとして、各都道府県の労働局が 2020年4月1日~2023年12月31日までに公表した企業を集計、分析した。前回調査は11月22日発表。

12月の不正受給金額は過去最高の28億9901万円

12月の不正受給金額は過去最高の28億9901万円

雇調金等の不正受給は前回調査(11月発表、2023年10月31日公表分まで)から2カ月間で116件増え、累計919件と1000件に迫った。公表件数は11月51件、12月65件で、これまで月次最多の97件(10月)からは減少したが、12月の不正受給金額は過去最高の28億9901万円を記録した。

本調査では、不正受給が公表された919件のうち、TSRの企業データベースに登録された686社を分析。産業別では、サービス業他が310社(構成比45.1%)と半数近くを占めた。内訳としては、飲食業96社、宿泊業23社、人材派遣業18社、旅行業16社、美容業11社など。また、公表時点の業歴別は、10年未満が286社で4割(同41.6%)を占めた。このうち、新型コロナの感染が拡大し始め、雇調金の特例措置が始まった2020年4月以降に事業を開始した企業も35社あった。

コロナ禍で企業の雇用維持を支援するため、政府は雇調金の助成率と上限金額を引き上げる特例措置を実施。迅速な支給に向けて手続きを簡素化したが、これを悪用した不正受給もあった。全体の支給決定取消は、2023年9月末で2263件、金額は約427億2000万円にのぼる。各都道府県の労働局は支給申請内容の遡及調査に注力しているという。

不正受給の内訳は「雇調金」だけの受給が506件と5割強(構成比55.0%)を占めた。また、パートやアルバイトなど雇用保険被保険者ではない従業員の休業に支給される「緊急雇用安定助成金」のみは137件(同14.9%)で、両方の支給も276件(同30.0%)と3割にのぼる。

まとめ

正しく活用することで、企業の維持・従業員の生活保障に役立つ雇用調整助成金だが、不正受給が判明すれば、社名や代表者名の公表や刑事告訴となる可能性も。違約金と延滞金を加えた返還、助成金の受給制限など、資金繰りへの影響も大きい。申請時はガイドブックをよく確認するなどして、不正受給や支給決定取消とならないよう注意していただきたい。

参考:厚生労働省雇用調整助成金 ガイドブック ~雇用維持に努力される事業主の方々へ~