役職が高いほど賃金格差解消、女性管理職増加への期待は高まる傾向に
求人サイト「Indeed (インディード)」の日本法人であるIndeed Japan株式会社(本社:東京都港区、代表取締役:大八木紘之)は、3月8日の「国際女性デー」に合わせて11カ国で実施した「女性の就労環境と将来の予想についての調査」の結果から、日本における女性の賃金・給与や男女賃金格差、管理職への昇進等に関する結果を発表した。本調査は、Indeedが、女性が就労環境で直面する不平等と活躍の機会を明らかにするため、11カ国の18歳以上の有職女性計14677名を対象に実施したもの。日本では、有職女性1506名を対象として調査を実施。本調査の11カ国に関する結果全体は3月15日に公開する予定としている。
調査実施の背景
あらゆる国や業界に広く存在する従業員間の男女格差は、依然として解消されていない。過去10年間を振り返ると男女格差は是正されてきているが、新型コロナウイルスの感染拡大は、世界規模でジェンダーパリティ(ジェンダーの公正を実現するための、統計的な尺度)がさらに低下するきっかけにもなった。
同社は、今後も男女格差の解消に向けた努力は必要であるとし、女性が就労環境で直面する不平等と活躍の機会を明らかにするために、11カ国で働く女性を対象に本調査を実施した。また、企業が職場に存在する様々な障壁を取り除くのに役立ててほしいとの考えから「給与と報酬」、「キャリアアップ」、「ウェルビーイング、サポート、ビロンギング(自分の居場所があると感じること)の意識」について調査結果をレポートにまとめ、3月15日に公開予定(※1)としている。
2022年の男女賃金格差指数は、OECD平均12.1%に対し日本は21.3%と高く、OECD加盟国38カ国の中では4番目に格差が大きい状況だ(※2)。日本の男女賃金格差が大きい要因のひとつとして「女性の管理職比率の低さ」が指摘されている(※3)。同社が総務省「労働力調査(基本集計)」2022年10月の就業者数(季節調整値)および、正規雇用者数(季節調整値)(※4)から算出した結果によると、全就業者に占める女性就業者の割合は2022年10月時点で45.1%、正規雇用者における女性の割合は34.8%。それに対して、厚生労働省の発表では管理職(課長相当職以上)に占める女性の割合は12.7%(※5)にとどまっている。
そこで同社は、女性の管理職割合が低い日本の職場環境をふまえ、役職によって職場の就労環境や将来予想に対する意識の違いがあるのかを、調査結果をもとに集計・分析した。
※1:Indeedの運営する人事・採用担当者向け情報サイト「/LEAD」にて公開予定
※2 出典元:「男女間賃金格差(Gender wage gap)」2022年(経済協力開発機構 OECD)
※3 出典元:「男女間賃金格差の要因と解消に向けた課題」2022年(株式会社日本総合研究所 山田 久)
※4 出典元:「労働力調査(基本集計)」2022年10月分(総務省)
※5 出典元:「令和4年度雇用均等基本調査」(厚生労働省)
仕事に関連する要素に対する意識
同社によると、働き方や制度、職場環境など仕事に関連する12の要素(※)について、自身にとってどの程度重要であるかを「極めて重要」「非常に重要」「ある程度重要」「全く重要ではない」の4スケールで尋ねたところ、重要である(「極めて重要」「非常に重要」「ある程度重要」の合計)と回答した割合が最も高かったのは「賃金・給与・賞与」で88.4%にのぼったという。
また、現在の勤務先における12要素について満足しているかどうかを「非常に満足」「ある程度満足」「どちらともいえない」「やや不満」「非常に不満」の5スケールで尋ねた結果では、満足している(「非常に満足」「ある程度満足」の合計)と回答した割合は12要素全てで半数以下であり、満足している人の割合が最も高かった「ワークライフバランス」でも46.2%という結果になったことを明らかにした。最も重要度が高かった「賃金・給与・賞与」については、満足している割合は12要素中6番目(27.6%)にとどまっている。
※12要素…「賃金・給与・賞与」「福利厚生・各種制度(休暇制度など)」「ワークライフバランス」「研修と自己開発の機会」「昇進の機会」「雇用の安定」「柔軟な時間帯で勤務できる」「勤務地を柔軟に選べる制度」「勤務先の企業のパーパスやミッション」「優れた環境への貢献(グリーン企業)」「育児休業/育児休暇制度」「ポジティブな職場のカルチャー」
賃金格差に対する意識
同社は続いて、現在の役職・仕事に対して、十分な賃金・給与が支払われているか否かを尋ねた。その結果、4割以上(44.2%)が「十分に支払われていない」と回答し「適切な賃金・給与が支払われている」(35.7 %)および「多すぎる賃金・給与を支払われている」(1.7%)の合計(37.4%)を上回る結果となっている。同社によると、11カ国中10カ国で「十分に支払われていない」の回答割合が「適切に支払われている」と「多すぎる」の合計を上回っており「十分に支払われていない」と思う割合は、11カ国全体で55.8%にのぼるという。
また同社は、日本の結果を役職別で確認。特に賃金・給与が「十分に支払われていない」と感じる割合が高かったのは、正社員女性のうち非管理職(課長職よりも下の役職)の女性で、52.6%(一般社員:51.9%、主任・係長層:55.4%)にのぼったことを明らかにした。一方で、課長職以上の役職につく女性では3割未満(課長職以上社員:29.8%、経営層:28.9%)となり、さらに「適切に支払われている」の割合が半数以上(課長職以上社員:59.4%、経営層:50.9%)の結果に。同社は、正社員女性のうち非管理職(課長職よりも下の役職)の女性が特に、給与に対する納得感が低い傾向にあると推察している。
働く女性の男女賃金格差に対する意識
さらに同社は、自国全体で男女の賃金格差が大きいと思うかを「非常に格差が大きい」「かなり格差が大きい」「少し格差がある」「格差はない」の4スケールで尋ねた。その結果、日本では81.0%が「格差がある」(「非常に格差が大きい」「かなり格差が大きい」「少し格差がある」の合計)と回答。「格差がある」と回答した割合は、11カ国全体で77.4%であり、最も多かったのはイタリアで83.8%、次いでイギリス81.0%(81.01%)。日本は81.0%(80.98%)で11カ国中3番目に多い結果となっている。
また日本では、今後5年間で男女賃金格差が解消される可能性が低い(「非常に低い」「やや低い」の合計)と思う割合は約6割(58.0%)で、可能性が高い(「非常に高い」「やや高い」の合計)と思う人(10.6%)の約5.5倍となったこともわかった。
同社は、役職による傾向として「男女賃金格差がある」と感じる割合は、特に「主任・係長層」「課長職以上社員」で高く9割以上(94.1%)にのぼることも明らかにしている。一方で、そのうち「今後5年間で賃金格差が解消される可能性が高いと思う」割合は「課長職以上社員(30.3%)」「経営層(34.3%)」で高く3割以上に。アルバイト・パート女性では7.5%、正社員女性全体(一般社員、主任・係長層、課長職以上社員の合計)では11.5%となっており、同社は役職が高いほど賃金格差解消への期待が高まる傾向にあるとした。
女性の昇進や管理職増加に対する意識
昇進のしやすさにおける男女格差について、同社は日本で働く女性の4割以上(41.7%)が「女性よりも男性の方が簡単に昇進できる」と感じていることを明らかにした。同社によると、11カ国全体は46.4%で、オランダが最も低く38.3%、イタリアが最も高く55.4%。世界的に「女性よりも男性の方が簡単に昇進できる」と感じている女性は4〜5割程度存在していることがわかった。
また、役職による傾向として「女性よりも男性の方が簡単に昇進できる」と感じる割合は、主任・係長層の女性で特に高く、約6割(57.6%)にのぼることも明らかに。一方で、実際に自分が管理職(課長職以上)に昇進した経験があると考えられる課長職以上社員や経営層になると、その割合が下がっている。
今後5~10年間で女性管理職が増えると思う割合
同社は、今後5〜10年間で、管理職に就いている女性の人数が増えると思う割合は、日本では3割未満(27.8%)で、最も低かったフランス(27.7%)と0.1ポイント差でほぼ同等の割合であることを発表した。
役職による傾向としては、今後5〜10年間で女性管理職が増えると思う割合は、課長職以上社員で最も高く44.1%に。経営層でも同様に高く41.7%にのぼっている。実際に管理職(課長職以上)に就いている女性や経営に携わる女性ほど、将来的な女性管理職の増加を予想している様子がうかがえる。
調査概要
調査主体:Indeedの委託によりYouGovが実施
調査対象:オーストラリア(1013名)、カナダ(1504名)、フランス(1336名)、ドイツ(1377名)、インド(1193名)、イタリア(1343名)、日本(1506名)、オランダ(1467名)、シンガポール(1196名)、イギリス(1398名)、アメリカ(1344名)でフルタイムまたはパートタイムで働く14677 名の女性
補正:各国の労働人口構成比にあわせて補正。日本は総務省「労働力調査」2023年(令和5年)を基に補正。
調査方法:インターネット調査
調査期間:2023年11月14日~11月23日
※構成比(%)は小数第2位以下を四捨五入しているため、合計が100%にならない場合がある
出典元:「職場における女性の将来に対する意識調査」(Indeed Japan株式会社)
まとめ
日本で働く女性の81.0%が「(自国に)男女賃金格差がある」と感じており、44.2%が、賃金・給与が「十分に支払われていない」と回答したことが明らかになった。男女賃金格差解消や女性管理職増加に対する期待感は、役職が高いほど上がる傾向にあるという。しかし41.7%が「女性よりも男性の方が簡単に昇進できる」と感じている現状も明らかにされており、ネガティブな印象を抱く女性はまだまだ多いようだ。
同社は3月15日に本調査の11カ国に関する結果全体を公開予定としている。国外の実態とどの程度の差があるのか、今後発表される全体レポートにも注目したい。