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~介護と仕事の両立支援~「高齢の親を見守る」【進化するスマート家電の活用法】

2021.05.10

前回は、~介護と仕事の両立支援~「高齢の親を見守る」。実家をデジタル化するメリットと題して、離れて暮らす親とビデオ通話をする方法や、親世代が使う端末の選び方や実家のWi-Fi化ついてお伝えしました。ビデオ通話で親とコミュニケーションを取ることは有効な見守りですが、毎日という訳にはいかない・・・という方に、今回は「スマート家電」を紹介します。スマート家電とは、インターネットをつないでスマホと連携することができる家電製品を言います。*1

スマート家電は、遠隔で電源のON/OFFを確認するもの、という認識の人も多いのではないでしょうか。最新のスマート家電は親の見守りにも応用できますので是非検討してみてください。
*1 参考サイト:https://www.nojima.co.jp/support/koneta/11377/

24時間カメラで監視はNG!親のプライバシーに配慮する

24時間カメラで監視はNG!親のプライバシーに配慮する

スマート家電を利用する時に、注意点としてはじめにお伝えしたいのが、カメラの設置についてです。「離れた親を見守る」と聞くと、実家にカメラを設置して映像を確認することを真っ先に思いつくのではないでしょうか。
 
親が認知症で火のもとの心配があったり、転倒してもいち早く気付くことができたりするので、カメラが有効な機器であることは間違いありません。  

しかし、重要なのは親の気持ちです。“四六時中カメラで監視されてる”、と受け止めかねません。以前介護相談にのったある息子さんのお話しでは、良かれと思ってリビングにカメラを付けたところ、親がリビングを避けるようになったと仰っていました。 逆の立場だとしたら、あなたはカメラを設置することをどう思いますか?  

また、カメラの有無に関わらず、機器の強引な設置は家族の信頼関係にも悪い影響をおよぼす場合もあります。そこで生じた不信感は簡単に払拭できず、今後親にお願いごとや協力を求めても同意を得ることが難しくなることもあるでしょう。家族とはいえ見守られる側のプライバシーにも十分配慮し、相談しながら導入しましょう。

スマート家電で「そっと見守る」

近年登場している見守り機器はインテリアや生活に溶け込む製品が多く、デザイン的にも違和感のないものが沢山あります。

たとえばIoT電球の「HelloLight」。見た目はごく一般的なLED電球ですが、simが内臓され点灯・消灯をスマホで確認することができます。親が何をしているかまでは分からないけど、トイレを使ったことだけでも分かれば安否確認になりますよね。HelloLightはソケットに差し込むことで給電するので配線も不要です。

見守り電池の「MaBeee(マビー)」もユニークな製品です。見た目は乾電池で、親が使っている家電のリモコンに市販の単三乾電池とMaBeeeを合わせて入れることで見守り家電に早変わり。テレビ、エアコン、照明器具、トイレの温水洗浄便座など、親が使用したタイミングでスマホに通知が来るので無事を確認することができます。たった一本の電池を見守り機器として使用できる手軽さが魅力ですね。

スマートセンサーの「leafee」は、扉の開閉をスマホに通知してくれるもの。扉の締め忘れを防ぐなどホームセキュリティ製品として打ち出していますが、実家の玄関に設置すれば親の外出や帰宅したことがわかります。インテリアに溶け込むデザインで違和感もないでしょう。

今回紹介した製品で見守りを行うには、単体価格以外に月額有料サービスへの加入が必要です。家庭環境に合うかどうかよく確認しておきましょう。

また、冷蔵庫の開閉や、エアコンの使用状況がわかるなど、最新の大型家電は標準で見守り機能が付いたモデルもあります。実家で長く使った家電の買い替えタイミングが来たら検討してみてもいいかもしれません。

一家に一台!?コミュニケーションロボットの可能性

Sota」や「LOVOT」、「ユピ坊」など、コミュニケーションロボットの利用も徐々に広がりを見せています。コミュニケーションロボット市場は拡大しており、国内の普及は2030年に900万台という予測*2があります。
*2出典:株式会社シード・プランニング:国内のコミュニケーションロボットに関する調査(2018年)

会話はもちろん多機能な製品が多く、小さいお子さんや一人暮らし高齢者の見守りや防犯にも活用できます。小型で親しみやすいデザインが多く、人型から動物型まで多種多様。

会話を繰り返すことで好みや興味を学習したり、喜怒哀楽をもって接してくれます。テレビ電話機能などが付いたモデルもあり、離れて暮らす家族とのコミュニケーションにも役立ちます。

現在は初期費用や月額も含め10万円を越える高額モデルが大半です。今後普及が進むことで価格もこなれてくるでしょう。近い将来ペットに代わる癒しになるかもしれません。

家電任せはダメ!親の異変に気付くポイント

スマート家電を導入して「今日も通知が来たから元気にしてるな」とすべてを任せっきりにするのはNGです。スマート家電は便利ですが、あくまで家族ができない見守りをサポートするツールにすぎません。

週に1回でも電話で直接声を聞いて様子を確認することが大切です。もちろんメールやLINEで様子をうかがことでもOKです。親は短時間の電話でも「私を気遣ってくれている」と嬉しく思うものですよ。これはツールの有無に関わらず、習慣にしていただきたいことです。

また、日頃のコミュニケ―ションのなかで、親の生活リズムや行動パターンをメモしておきましょう。よく行くスーパー、かかりつけの病院。持病や飲んでいる薬。趣味や交友関係など。みなさんはどれだけご存知でしょうか?知っているようで実はほとんどの方が知らないものです。

異変を見過ごさない

親の行動パターンを知っておくと異変に気付きやすくなります。最近外出が減ってるな、食事量が少ないんじゃないか、扉の施錠忘れなどが頻発しているなど、親の健康状態に注意を払うべきです。

電話やビデオ通話でも、同じ話を繰り返す、最近のことを思い出せない、以前より怒りっぽくなるなどがみられたら、認知症の疑いがあります。認知症の最大の原因は加齢です。規則正しい生活を送っていても、認知症にならないという保証などありません。

どれだけ見守りを強化しても身体状態は改善しません。スマート家電で異変を察知したり、電話やメールでもおかしいと感じたら次に紹介する専門機関へ相談しましょう。

相談するのに早すぎることはありません。何事もなければそれで結構。むしろ「もっと早く相談すればよかった」と後悔する人の方が圧倒的に多いのです。

親の異変に気付いたときの公的な相談先

親の異変に気付いたときの公的な相談先

親の異変に気付いたときの相談先に、二つの公的機関があります。一つ目は最寄りの役所。介護保険課、高齢者福祉などがその担当窓口になります。実家が遠くても電話相談に応じてくれるので、親の状態を伝え改善に向けた助言やサービスを提案してもらいましょう。

もう一つは「地域包括支援センター」です。高齢者の暮らしを支える公的機関で全国に設置されています。役所よりも地域に密着した相談機関で、介護や医療、高齢福祉の専門家が常駐し無料で相談に乗ってくれます。

例えば、次のような状況でも相談が可能です。
「まだ介護は必要ないが親は一人暮らしに不安がある。サポートする方法は?」
「一人暮らしの親に認知症の疑いがある。まず何からするべきか?」
「遠距離介護になりそう。同居は難しいが介護と仕事を両立するにはどうすればいい?」

このように、ご家庭の事情に寄り添ったアドバイスをしていただけます。
実際に介護が始まると更に悩みは増えていきます。専門家に相談することで、解決の糸口や負担軽減につながります。困ったときの相談先として、ぜひ「実家の市区町名×地域包括」で検索してみてください。

医療的なことは親のかかりつけ医に相談

かかりつけ医に相談するのもオススメです。親が通い慣れた病院で信頼できる医師がいると尚よいでしょう。仮に認知症の疑いがあって、子どもが親に「認知症検査を受けてみようよ」といっても拒否されることがあります。

これが信頼できる医師のススメであれば聞き入れてもらえる可能性も高まります。かかりつけの病院で検査や治療ができなくても、専門機関への紹介状を書いてもらえるので安心です。

先々要介護認定を受ける場合、かかりつけ医の意見書が必要となります。また、在宅介護をする上でも、家族のよき相談役になってくれます。時間に余裕があれば、帰省したタイミングで親とともに病院を受診し、現在の病状や治療方針などの共有を受けておくと相談もしやすくなるでしょう。

介護はいつ始まるか分かりません。しかし、その兆候に気付くことができれば先手を打つこともできます。スマート家電を上手に活用し、まずはその兆候に気付くことが大切です。

介護は親だけでなく、離れて暮らす家族の生活にも影響します。そのときが来ても冷静な判断や行動ができるように、最寄りの相談機関など早期に情報収集をしておきましょう。