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エンゲージメント向上に力を入れる企業が増えているのはなぜ?【今さら聞けない「エンゲージメント」とは? Vol.1】

2024.09.18

日本では少子高齢化に伴い、労働人口の減少が深刻化しています。さらにIT技術の進化や消費者行動の変化など、企業を取り巻く環境は激しく変化しています。そのような環境変化に適応し、持続的な成長を図るためには、新たなイノベーションを生み出す「人材」の存在が不可欠です。

つまり、企業は優秀な人材を確保・定着するために求職者から選ばれ続ける必要性が出てきました。こうした背景から多くの企業で「エンゲージメント」という概念が注目されています。本連載では、企業がエンゲージメント向上を図る意義や、エンゲージメント向上のポイントなどについてお伝えしていきたいと思います。

「採用しても、採用しても、組織が疲弊する負の連鎖」

「経営が期待をかけていた優秀な社員が離職してしまう」
「先月まで張り切っていた社員が、急に『次の会社が決まったから』と辞めてしまった」

優秀な人材の採用・定着に課題感を抱えている企業は少なくありません。
厚生労働省が2023年10月に実施した調査では、新規大卒就職者の3年以内の離職率は32.3%(※)となっており、大卒で入社した新入社員の約3人に1人が3年以内に離職していることが明らかとなっています。背景には、転職活動の一般化や働く価値観の多様化があります。人材の流動性が高まったことで、従業員を定着させる難易度は年々上がっているのが現状です。
※参考:新規学卒就職者の離職状況(令和2年3月卒業者)を公表します|厚生労働省

このように、離職に歯止めがかからず、人材が流出すると既存社員への負荷が高まります。それにより徐々に組織が疲弊していくため、その疲弊を解消するために採用を行います。しかし、離職に対して根本的な課題を解決していないため、採用しても結局定着せず、また組織が疲弊するという悪循環に陥っている企業は少なくありません。この悪循環を断ち切り、従業員から選ばれ続けるために多くの企業が「エンゲージメント」に注目しています。

離職を防ぎたいなら、従業員満足度ではなくエンゲージメントを高めるべき

エンゲージメント(英語:Engagement)は、直訳すると「婚約」や「結び付き」といった意味を持つ言葉です。ただ、人事・経営の文脈で使われる場合は、従業員の企業に対する「愛着心」や「愛社精神」といった意味になります。当社では、エンゲージメントを「企業と従業員の相互理解・相思相愛度合い」と定義しています。

「エンゲージメント = 従業員満足度」と考えている方もいらっしゃいますが、両者はまったく異なる概念です。従業員満足度は、従業員が会社に対して「どのくらい満足しているのか?」を示す度合いです。従業員満足度が高い場合、従業員はその会社で働くことにメリットを感じていますが、必ずしも会社に対して思い入れがあるわけではありません。そのため、より大きなメリットを得られる会社があれば、容易に転職してしまう可能性があります。一方、エンゲージメントが高い場合、従業員は自分の会社に対して愛着や貢献意欲を持っており、「この会社が好きだ」「この会社をもっと良くしていきたい」という思いで働いています。

これらを踏まえると、従業員の離職防止には、従業員満足度ではなくエンゲージメントを高めたほうが効果的であることがわかります。実際に、エンゲージメントが上がることによって、営業利益率や労働生産性が向上することや退職率の低下に寄与することなどが、当社の調査でも明らかになっています。

エンゲージメントの高低で従業員は何が違うのか?

実際にエンゲージメントが高い企業と低い企業では、具体的にどのような違いがあるのでしょうか。

当社、株式会社リンクアンドモチベーションでは、従業員エンゲージメント向上サービス「モチベーションクラウド」を提供しています。モチベーションクラウドに蓄積された累計1万1890社、442万人以上のデータを分析した結果、エンゲージメントが高い企業と低い企業では、従業員に以下のような「違い」があることが分かりました。

■ エンゲージメントが高い企業:「ささやけば伝わる組織」
経営や上司からの指示を待つ受け身の姿勢ではなく、従業員が自ら考えて、目標達成に向けて主体的に動いています。

【発言イメージ】
・それ、やっておきましたよ!(先回りして対応する)
・こんな企画をやりたいです!(前のめりな提案をする)

■ エンゲージメントが中程度の企業:「打てば響く組織」
従業員が主体的に行動することは少ないものの、経営や上司からの指示があれば、きちんと遂行しようとします。

【発言イメージ】
・わかりました。やっておきますね。(言われたことはやる)
・それはやらないといけませんね。(受け身だが実行する)

■ エンゲージメントが低い企業:「笛吹けど踊らない組織」
経営や上司に不満を抱いている従業員が多く、従業員同士の飲み会で、会社や上司への愚痴が横行している場合もあります。

【発言イメージ】
・それ、やったほうがいいんですか?(納得しておらず、なかなか行動に移さない)
・なぜ、私がそれをやらなければいけないんですか?(不満や不信感を抱いている)

上記のように、エンゲージメントの高い企業と低い企業では、従業員の「当事者意識」と「実行力」に決定的な差が生まれます。

エンゲージメントが低い企業では、経営陣がどれだけ優れた戦略を打ち出しても、従業員は「経営がまた何か言っているな」「自分の仕事には関係ない」というように他人事になってしまいます。一方、エンゲージメントが高い企業では、「新しい戦略は自分にとってチャンスになりそうだ」「よし、挑戦を楽しもう」というように、従業員は自分事としてポジティブに受け止めます。

経営戦略にせよ人事戦略にせよ、実行力が高いのは、言うまでもなくエンゲージメントが高い企業です。

本連載では、全6回にわたって「事業成果につなげるエンゲージメント向上のポイント」についてお伝えしていきます。

第2回から第4回では、エンゲージメント向上における「ありがちな3つの誤解とその対策」について、第5回からは「エンゲージメント向上の結果、事業成果につなげた企業事例」について具体的にご紹介していきます。

※記事内の図版は全て株式会社リンクアンドモチベーションによる