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【特集】人事担当者必見 急増する退職代行。退職希望者が利用する理由と円満退職につなげるために企業がすべきこと

2019.09.17

 近年、退職希望者の意思を本人に代わって伝える「退職代行」の利用者が急増している。「退職代行から連絡があった」という話を耳にしたり、実際に連絡をもらったりといった経験がある人事担当者も少なくないだろう。

 本来、退職意思は、十分な引継ぎが行えるよう、勤務先に事前に直接伝えるべきだ。しかし退職代行から連絡があった場合、すぐに退職になるケースも多く、現場に混乱を招く可能性が高い。

 なぜ、退職代行を利用する人が増えてきているのだろうか。退職代行を利用しなくても良い職場にするために、企業としてどのようなことをする必要があるのだろうか。今回は、退職代行の概要や退職希望者が利用する理由、円満退職につなげるために企業がすべきことを紹介する。

目次

●退職代行とは
●退職代行を利用する理由
●円満退職につなげるために企業がすべきこと

退職代行とは

 近年、利用者が急増している「退職代行」とは一体どのようなものなのだろうか。退職代行の概要や企業として注意すべき点を見ていこう。

退職代行の概要
 退職代行とは、「退職希望者の代わりに、退職意思を勤務先に伝える」サービスだ。退職希望者から依頼を受けた退職代行業者が、電話や退職届の郵送といった形で会社側に退職意思を伝えるケースが多く、依頼料は1件あたり数万円に及ぶこともあるようだ。引き止めづらいこともあり、通常の退職に比べ、短時間での退職が実現することが多いと言われている。しかし、弁護士資格者がいない退職代行業者のできる業務は退職意思の伝達のみで、原則的に退職交渉はできない。

企業として注意すべき点
 弁護士資格者がいない退職代行業者のできる業務は、退職意思の伝達のみだ。しかし中には、弁護士資格者がいないにも関わらず、退職交渉を行おうとする悪質な業者もいる。そうした退職代行業者による退職交渉は、弁護士にしか認められていない業務を第3者が営利目的で行う「非弁行為」に該当する可能性が高いと言われている。非弁行為と知りながら退職代行業者と退職交渉を行った場合、会社側がその責任を問われる可能性も否定できない。退職交渉を行いたい場合、退職代行と直接やり取りするのではなく、退職希望者側の弁護士を介して行おう。

 また退職代行を利用した場合、十分な引継ぎが行われないまま退職してしまうというケースも多く、残された社員への負担が増えることが予想される。新たな退職者を生まないためにも、「同じ部署での業務経験がある社員に、一時的にサポートに入ってもらう」「上司が、退職者の行っていた業務の一部を代わりに担当する」などのフォローを考える必要がある。

退職代行を利用する理由

 退職意思は、勤務先に直接伝えた方が良いということは、退職希望者も分かっているだろう。では、なぜ退職希望者が退職代行を利用するのか、その理由を見ていこう。

退職意思を伝えづらい
 退職意思は、伝え方やタイミングによっては、勤務先からの否定的な反応・反発を招く可能性がある。そのため、そのときの状況次第では「退職意思を伝えづらい」と感じる退職希望者もいるだろう。退職意思を伝えづらい状況としては、「入社からまだ日が浅い」「上司が威圧的」「職場の雰囲気が退職を良しとしない」「職場がいつも人手不足」といったことが挙げられる。そうした状況に置かれた退職希望者は、「自分では伝えづらい退職意思を代わりに伝えてもらいたい」と退職代行を利用するようだ。

出社すること自体が苦痛
 退職意思を直接伝えたいと思っていても、さまざまな理由から「出社すること自体が苦痛」となっていることもあるだろう。例として、「極端にストレスのかかる業務を担当している」「上司からパワハラやセクハラを受けている」「適応障害・うつ病など、メンタル面に問題を抱えている」といったことが挙げられる。そうした状況に置かれることで、「出社するのが困難な自分の代わりに、退職意思を伝えてもらいたい」とやむを得ず退職代行を利用する退職希望者もいるようだ。

なかなか退職させてもらえない
 退職希望者の中には、退職意思を一度は勤務先に伝えているのに、最終的に退職代行を利用するという人もいる。「なかなか退職させてもらえない」ということが、その理由だ。例として、「退職を思いとどまるよう、何度も説得された」「退職意思を伝えてから、嫌がらせを受けるようになった」などが挙げられる。そうした状況に置かれた退職希望者は、「お金を払ってでも、すぐに退職したい」と最終手段として退職代行を利用するようだ。

円満退職につなげるために企業がすべきこと

 退職代行の利用による突然の退職は、現場に混乱を招く可能性があるため、企業としては出来る限り避けたい。また最近では人手不足が続く中、「アルムナイ」と呼ばれる一度退職した人に、職場復帰して活躍してもらうという動きが広がっている。アルムナイを活用するためには、退職代行を利用しない「円満退職」が望ましい。

 円満退職につなげるためには、「退職意思を伝えづらい」「出社すること自体が苦痛」「なかなか退職させてもらえない」という退職代行の利用理由を取り除く必要がある。例として、人事担当者が退職希望者の声を親身になって聞くなど「相談しやすい環境を作る」、パワハラ・セクハラの防止対策を行うなど「誰もが出社したいと思える環境を整える」、強引な引きとめをしないなど「退職希望者の意思を尊重する」といったことが挙げられる。社員一人ひとりが働きやすい職場にすることができれば、マイナスなことを理由とした退職が減り、円満退職につながるだろう。

まとめ

 退職希望者に代わり退職意思を勤務先に伝える退職代行は、「退職意思を伝えづらい」「出社すること自体が苦痛」「なかなか退職させてもらえない」という理由から利用者が急増している。退職代行業者の中には、非弁行為を行おうとする悪徳な業者がいる可能性があるため、注意が必要だ。

 また企業としてはトラブルを最小限に抑えるため、退職代行を利用しない形での円満退職が望ましい。「相談しやすい環境を作る」など社員一人ひとりが働きやすい職場にすることで、円満退職につなげてみてはどうだろうか。