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労働災害(労災)の定義と知っておくべき保険申請とは

2020.09.15

労災という言葉を聞いたことのある人は多いだろう。例えば、通勤途中で事故に遭って怪我をした場合は労災になるのかなど、労働者にとっては非常に関心が高いものと言える。もちろん手続きや給付に当たる会社側としても無関心ではいられないだろう。そこで、ここでは労災の基本的な知識や給付の種類などについて詳しく解説する。

1.労働災害について

労災とは、業務上の理由で労働者が被ってしまった怪我や病気のことで、大きく分けると業務災害と通勤災害の2つがある。それぞれについて詳しく説明していく。

1-1.①業務災害
業務災害は、仕事中に起きた事故などにより怪我や病気を負ってしまうことを言う。では、どういった場合に業務災害と認められるのだろうか。満たすべき要因としては「業務遂行性」と「業務起因性」の2つだ。業務遂行性は仕事中、すなわち労働契約に明記された労働時間内に起きた災害であるということで、業務起因性は仕事が原因の災害であるという意味だ。業務遂行性に関しては、労働時間中であればトイレ休憩中などでも含まれるし、仕事の場所が社内か社外かも問わない。内勤であっても営業の外回りであっても、勤務時間中であれば対象となる。

労働基準法では「業務上疾病」というものが定められている。これはいわゆる職業病と呼ばれるもので、業務との間に強い因果関係のある疾病のことだ。例えば、デスクワークの人に多い腰痛などがその代表的なものだ。この業務上疾病も業務災害として認められるが、それには3つの要素を満たしている必要がある。その3つの要素が「業務に有害因子が内在していること」「健康を害するほどその有害因子にさらされたこと」「医学的に見て発症までの経過や病態が妥当であること」である。

1-2.②通勤災害
通勤災害は仕事中ではなく、通勤中に起きた災害のことを指す。通勤とは、主に就業場所と家との往復のことである。通勤であると認められるための要件は、大きく分けて次の3つだ。

まず1つ目は、就業に関して行われている移動であるということだ。勤務先と家との間の移動であっても、例えば休日に忘れ物を取りに会社へ行くといった場合は就業のためではないので該当しない。2つ目は、通常の通勤経路を逸脱あるいは中断していないということだ。例えば、会社帰りに飲みに行くというような場合は逸脱とみなされる。ただし、日用品などの買い物に立ち寄る、通院する、職業訓練のスクールに行くといった日常的な行為の場合は逸脱・中断とはみなされないケースもある。そして、もう1つが通勤経路が合理的であるということだ。わざと遠回りするような場合は通勤として認められないこともある。なお、通勤災害として認められる移動経路のパターンは3つあり、住居と就業場所の移動、就業場所から就業場所への移動、そして単身赴任先と帰省先の間での移動だ。

2.労災保険とは?

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雇用されている人が労災に巻き込まれた場合、怪我や病気の治療費を自分で支払うのは大変な負担で、仕事が原因なのにと納得の行かない部分もあるだろう。そんなときに必要な治療費などの費用を給付するのが労災保険だ。正式名称は労働者災害補償保険といい、労働者やその家族の生活を守るためのれっきとした社会保険である。ここでいう「労働者」には、正社員だけではなくパートやアルバイトも含まれる。

労災保険は怪我や病気の治療費が給付されるということで健康保険に似た側面もあるが、対象となるのが業務上または通勤途上での災害に限定されているのが大きな違いだ。そして、労災の補償対象になると療養費は全額支給となり、休業補償もされるなど健康保険よりも格段に手厚いのが特徴となっている。なお、労災保険は労働者を1人でも雇っているすべての会社に加入義務があり、保険料は全額事業主が負担する。

3.労災保険の給付種類

労災が認められた場合、具体的にどういった給付が受けられるのだろうか。労災保険には様々な給付の種類がある。一つ一つ詳しく見ていこう。

まず、療養補償給付だが、これは怪我や病気で入院・治療が必要となった場合、治療にかかる費用の全額が給付されるというものだ。労災病院や労災指定医療機関で治療を受ける場合は現物給付となり、それ以外の医療機関で治療を受ける場合は給付金が支払われる。なお、治療が終わっても完治せず障害が残った場合は、引き続き障害補償給付の対象となる。

障害補償給付は治療が完了した後、すなわち症状が固定した後に障害が残ったときに給付されるものだ。障害等級第1級から第7級に該当する場合は障害補償年金、第8級から第14級に該当する場合は障害補償一時金が給付される。いずれの場合も障害の程度に応じて給付金が計算され、また障害特別支給金が加算される。

休業補償給付は怪我や病気のために働くことができず、賃金がもらえなくなった場合に給付されるものだ。休業4日目より給付され、その金額は休業1日につき給付基礎日額の60%となる。

遺族補償給付は労働者本人が死亡した場合、遺族に給付されるものだ。遺族がいる場合は遺族補償年金、いない場合は遺族補償一時金が給付される。遺族として認められるのは、死亡した労働者の収入で生計を立てていた人であることや年齢制限など一定の条件があるので注意が必要だ。また、労災で死亡した人の葬儀を行う際には葬祭料も支給される。

傷病補償年金は労災による怪我や病気の治療開始から1年6ヶ月経っても治癒しておらず、引き続き治療が必要である場合、あるいは怪我や病気の程度が傷病等級に該当している場合に支給されるものだ。怪我や病気の状態が傷病等級に該当する間は支給が続く。

介護補償給付は、怪我や病気の治療中・治療後に要介護の状態となった人に給付される。対象となるのは障害補償年金または傷病補償年金の受給者で、障害等級が第1級の人、もしくは第2級の精神・神経障害および胸腹部臓器障害の人だ。ただし、入院中の人や介護施設に入所している人は対象とならない。

4.労災保険の手続きの流れ

労災保険の給付を受けるためには正しい手続きが必要となる。手続きは原則として労災に遭った本人もしくはその家族が行うが、病気や怪我を負って治療中の本人や本人に付き添う家族がそうした手続きを行うのはあまりにも負担が大きい。そのため、企業が代行して手続きを行うことも認められている。企業としては、きちんと手続きをして確実に給付が行われるようにするために、正しい知識が必要だ。

労働者から労災が起きたという報告が企業に対してされたら、企業は必要な書類を揃えて労働基準監督署に提出する。労働基準監督署はその内容に誤りや不備がないかの調査を行うため、企業はそれに協力する。そして、申請が正当であると認められれば、給付が開始されるという流れだ。前述したように、労災には様々な種類があり、それぞれに必要となる申請書類が異なる。手続きを代行する企業は必要な書類を入手し、間違いのないように記入して労働基準監督署に提出しなくてはならない。

なお、給付までには時間がかかること、そして手続きには期限がありそれを超えてしまうと給付を受ける資格がなくなってしまう点には注意が必要だ。労働者が受けるべき給付をきちんと受けられるよう、手続きはスピーディーに行わなくてはならない。

正しい知識を持って万が一の時に役立てよう!

労災とはどういうことを指すのか、その内容や種類、そして労災保険の給付種類や手続きについて解説してきた。労災による補償は労働者が受けるべき正当な権利であり、また企業には労働者がきちんと給付を受けられるよう取り計らう義務がある。労働者が安心して働ける環境を守るためにも、正しい知識を持って臨みたいものだ。

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