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2020年から年末調整が3つの申告書の兼用様式に 記入方法を詳しく解説

2020.12.17

 会社員や公務員などが毎年行わなければならない年末調整。家族構成や加入している保険などによって必要となる申告書や添付書類が異なるため、「どの申告書を提出したらよいのか」「どのように記載したらよいのか」と悩むこともあるかもしれない。

 今回は、年末調整の概要や各申告書の記入方法などを、2020年分からの変更点を含めて紹介する。各ポイントを押さえ、スムーズに年末調整を行おう。

目次

●年末調整とは
●「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の記入方法
●「給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼
 所得金額調整控除申告書」の記入方法
●「給与所得者の保険料控除申告書」の記入方法
●「住宅借入金等特別控除申告書」の記入方法
●まとめ

年末調整とは

 年末調整とは、企業が従業員の給与や賞与から天引き(源泉徴収)した所得税と本来支払うべき所得税の金額とを計算し、過不足を精算することだ。仮に源泉徴収額が多ければ、企業は従業員に差額を返金する必要がある。まずは、年末調整の概要を押さえよう。

年末調整の対象者
 12月に行う年末調整の対象者は以下の通りだ。

・企業などに1年を通じて勤務している人
・年の途中で就職し年末まで勤務している人(青色事業専従者を含む)
・「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出している人

ただし、1年間の給与の総額が2,000万円を超える人、その年の給与に対する所得税及び復興特別所得税の源泉徴収について徴収猶予や還付を受けた人は対象外となる。

なお、以下のいずれかに該当する人は年の途中で年末調整を行う。

・海外支店等に転勤したことにより国内に非居住者となった人
・死亡によって退職した人
・著しい心身の障害のために退職した人
 (退職後に再就職し給与を受け取る見込みのある人を除く)
・12月に支給されるべき給与等の支払いを受けた後に退職した人
・いわゆるパートタイマーが退職した場合で、本年中に支払いを受ける給与の総額が103万円
 以下である人
 (退職後その年中に他の勤務先から給与の支払いを受ける見込みのある人を除く)

参考:国税庁「No.2665 年末調整の対象となる人」

年末調整で手続きが行える控除
 控除には、計算の元となる金額からあらかじめ控除額を差し引く「所得控除」と、確定した所得税から控除額を差し引く「税制控除」とがある。年末調整では、所得控除のうち以下の控除を手続きすることができる。

・基礎控除
・配偶者控除
・配偶者特別控除
・扶養控除
・障害者控除
・ひとり親控除及び寡婦控除
・勤労学生控除
・社会保険料控除
・生命保険料控除
・地震保険料控除
・小規模企業共済等掛金控除

これらに該当しない「医療費控除(またはセルフメディケーション税制)」「雑損控除」「寄付金控除」は、確定申告を行う必要があることに注意しよう。

 また、年末調整の対象となる税制控除には「住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)」があるが、申告する初年度は確定申告を行わなければならない。

年末調整の流れ
 年末調整の一般的な流れは以下の通りだ。控除を受ける内容によって提出すべき申告書や添付書類などが異なるため、早めに準備をしておくことが大切だ。

(1)11月頃:【企業】従業員に必要となる書類を配布する
(2)11~12月:【従業員】申告書・添付書類を企業に提出する
(3)12月:【企業】年末調整を行い、差額を還付または徴収する
(4)1月:【企業】税務署に申告・納税を行う

参照:おさえておきたい!人事・労務の基礎知識Vol.9 年末調整の流れと手順

提出が必要な書類
 年末調整で提出が必要な書類は、以下の通りだ。「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」は年末調整を行う人全員が提出する必要があり、その他の申告書は各控除の該当者のみが提出する。

・給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
・給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼
 所得金額調整控除申告書
・給与所得者の保険料控除申告書
・住宅借入金等特別控除申告書

以下で、各申告書の項目や記入のポイントを見ていこう。

「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の記入方法

 「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」は、年末調整を行う人全員が提出をする必要があり、「給与所得者の扶養親族申告書」を兼ねた様式となっている。申告書に記入する項目とポイントを見ていこう。

対象となる控除
 「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の対象となる控除は以下の通りだ。

・扶養控除
・障害者控除
・ひとり親控除及び寡婦控除
・勤労学生控除

記入する項目とポイント
 「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」の記載項目と、記入のポイントは以下の通りだ。税制改正によって2020年(令和2年)以後の所得税については扶養親族等(同一生計配偶者、扶養親族、源泉控除対象配偶者の対象となる配偶者及び勤労学生)の合計所得金額要件が引き上げられたため、適用される扶養親族等に該当するかは国税庁のホームページや資料を参考にして判断しよう。

参考:国税庁「各種控除等を受けるための扶養親族等の合計所得金額要件等の改正(令和2年分以降)」

(1)A:源泉控除対象配偶者
 給与所得者(所得見積額が900万円以下)と生計をともにする配偶者の所得見積額が95万円(給与所得のみの場合150万円)以下の場合に記載する。配偶者の収入が上限を上回る場合は記入不要だ。

(2)B:控除対象扶養親族(16歳以上)
 70歳以上(1951年1月1日以前生)の扶養親族がいる場合、本人または配偶者の直系尊属で同居を常況としているときは「同居老親等」、それ以外のときは「その他」にチェックを入れよう。

 また、対象となる扶養親族の年齢が19歳以上23歳未満(1998年1月2日~2002年1月1日生)の場合は「特定扶養親族」にチェックを入れる。「非居住者である親族」欄は、国内に住所を有さず、かつ現在まで継続1年以上国内に居所を有さない場合にのみ〇をつけよう。

(3)C:障害者、寡婦、寡夫又は勤労学生
 税制改正によって、ひとり親控除及び寡婦控除の見直しが行われた。改正後の適用判定フロー図によって「年末調整時の申告」欄が必要となっている人は、年末調整の際にその異動内容について申告をする必要があるため注意が必要だ。

参考:国税庁「ひとり親控除及び寡婦控除に関するFAQ(源泉所得税関係)」

(4)D:他の所得者が控除を受ける扶養親族等
 同一生計内に所得者が2人以上おり、本人の扶養親族等を他の所得者の扶養親族としたり、その生計内の扶養親族等を分けて控除を受けたりする場合は、「控除を受ける他の所得者」などの項目を記載する必要がある。

(5)住民税に関する事項:16歳未満の扶養親族
 16歳未満(2005年1月2日以後生)の扶養親族がいる場合に記載する。国内に住居を有しない扶養家族に該当する場合は「控除対象外国外扶養親族」に〇をつけよう。

(6)住民税に関する事項:単身児童扶養者
 2020年4月1日以降に提出される「給与所得者の扶養親族申告書」では、単身児童扶養者に該当する旨の記載は不要としている。

参考:総務省「個人住民税の「給与所得者の扶養親族申告書」等について」

添付書類
 それぞれの控除を受けるために必要となる添付書類は以下の通りだ。

・勤労学生控除:勤労学生に該当する旨を証する書類
・非居住者である親族に係る扶養控除、障害者控除:その親族に係る親族関係書類、
 送金関係書類

記入方法・記入例
 「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」兼「給与所得者の扶養親族申告書」の具体的な記入方法は、国税庁のホームページを参考にしよう。 

参考:国税庁「[手続名]給与所得者の扶養控除等の(異動)申告」
参考:国税庁「令和2年分給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」
参考:国税庁「《記載例》令和2年分給与所得者の扶養控除等(異動)申告書の記載例」

「給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書」記入方法

 「給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」は、基礎控除などを受ける際に提出する必要があり、2020年分から3つの申告書の兼用様式となった。申告書に記入する項目とポイントを紹介する。

対象となる控除
 「給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」の対象となる控除は以下の通りだ。

・基礎控除
・配偶者控除
・配偶者特別控除
・所得金額調整控除

記入する項目とポイント
 「給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」の記載項目と、記入のポイントは以下の通りだ。税制改正によって昨年より変更となった点もあることに注意しながら記入を進めよう。

(1)給与所得者の基礎控除申告書
 「基礎控除」は、納税者本人の合計所得金額に応じて受けられる控除だ。税制改正により2020年分から給与所得控除額が改正されたため、「給与所得金額」は改正後の額を用いて計算しよう。また、基礎控除額も改正され、合計所得金額が2,500万円を超える所得者は基礎控除の適用を受けられなくなったため、申告の際は注意が必要だ。

参考:国税庁「No.1410 給与所得控除」
参考:国税庁「No.1199 基礎控除」

(2)給与所得者の配偶者控除等申告書
 合計所得金額が1,000万円以下で、合計所得金額が133万円以下の生計を一にする配偶者がいる人は、「配偶者控除」または「配偶者特別控除」の適用を受けることができる。税制改正により2020年分から配偶者の合計所得金額要件が引き上げられたため、対象となるか否かに注意が必要だ。対象となる場合は、要件を申告書の表に当てはめて控除額を計算しよう。

参考:国税庁「No.2672 年末調整で配偶者控除又は配偶者特別控除の適用を受けるとき」

(3)所得金額調整控除申告書
 年末調整では、2つの「所得金額調整控除」のうち「子ども・特別障がい者等を有する者等の所得金額調整控除」を適用することができ、その年の給与等の収入が850万円を超え、以下のいずれかに該当する場合に控除される。該当する要件にチェックを入れ、必要事項を記入しよう。なお、同一生計内のいずれか一方のみに適用される「扶養控除」とは異なり、夫婦ともに収入が850万円を超える場合等は双方がこの控除を受けることが可能だ。

・本人が特別障害者に該当する者
・年齢23歳未満の扶養親族を有する者
・特別障害者である同一生計配偶者又は扶養親族を有する者

参考:国税庁「No.1411 所得金額調整控除」

添付書類
 非居住者である配偶者に係る配偶者控除や配偶者特別控除の適用を受ける場合は、その配偶者に係る「親族関係書類」と「送金関係書類」を添付する必要がある。ただし、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出する際に親族関係書類を提出または提示している場合は添付不要だ。

記入方法・記入例
 「給与所得者の基礎控除申告書 兼 給与所得者の配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書」の具体的な記入方法は、国税庁のホームページを参考にしよう。

参考:国税庁「[手続名]給与所得者の基礎控除、配偶者(特別)控除及び所得金額調整控除の申告」
参考:国税庁「令和2年分給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書」
参考:国税庁「《記載例》令和2年分給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書」および「《補足説明》」

「給与所得者の保険料控除申告書」の記入方法

 「給与所得者の保険料控除申告書」は、生命保険料などを支払った場合に提出することでそれぞれの控除を受けることができる。保険会社等が発行した証明書類を確認しながら必要事項を記入しよう。

対象となる控除
 「給与所得者の保険料控除申告書」の対象となる控除は以下の通りだ。

・生命保険料控除
・地震保険料控除
・社会保険料控除
・小規模企業共済等掛金控除

記入する項目とポイント
 「給与所得者の保険料控除申告書」の記載項目と、記入のポイントは以下の通りだ。

(1)生命保険料控除
 生命保険料控除には「一般の生命保険料」「介護医療保険料」「個人年金保険料」の3つの種類があり、契約している保険の種類によって記載箇所が異なる。控除の対象となる保険料や掛金は、契約の内容や適用制度の新旧区分(契約の締結日による)などによって区分されるため、生命保険会社等から送付される証明書類を確認しながら必要事項を記入しよう。

(2)地震保険料控除
 地震保険料控除は、地震保険や火災保険の地震特約の保険料が対象となる保険料だ。火災保険に加入している場合でも、控除の対象となるのは地震保険料に該当する部分のみとなる。対象となる建物は自身や配偶者などが住居として使用しているもののみであることにも注意が必要だ。

 また、2006年(平成18年)12月31日までに締結した長期損害保険契約の保険料(旧長期損害保険料)も地震保険料控除の対象となるが、一つの保険で地震保険・旧長期損害保険のどちらも対象となる場合は、どちらか一方の契約区分の保険料が控除される。こちらも、損害保険会社等から送付される証明書類を確認しながら記入しよう。

(3)社会保険料控除
 社会保険料控除は、本人または生計をともにする親族が負担することになっている以下の保険料のうち、本人が支払ったものが対象となる控除だ。給与から天引きされている社会保険料を記載する必要はない。その年に支払った社会保険料全額が対象となるため、各証明書を元に漏れなく記載しよう。

・国民健康保険料・国民健康保険税
・健康保険料・厚生年金保険料(任意継続被保険者の負担分を含む)
・後期高齢者医療制度の保険料
・介護保険料
・国民年金保険料
・労働保険料

(4)小規模企業共済等掛金控除
 小規模企業共済等掛金控除は、以下のうち直接支払った小規模企業共済等掛金すべてが対象となる。社会保険料控除同様、給与から差し引かれた掛金は記載不要だ。

・独立行政法人中小企業基盤整備機構の共済契約の掛金
・確定拠出年金法に規定する企業型年金加入者掛金
・確定拠出年金法に規定する個人型年金加入者掛金(iDeCoなど)
・心身障害者扶養共済制度に関する契約の掛金

添付書類
 それぞれの控除を受けるために必要となる添付書類は以下の通りだ。国民年金保険料等以外の社会保険料については、書類を添付する必要がない。

・生命保険料控除、地震保険料控除、小規模企業共済等掛金控除:支払金額を証する書類(旧生命保険料は支払金額から剰余金や割戻金の額を差し引いた残額が9,000円を超える
 場合)
・社会保険料控除:国民年金保険料等については、支払金額を証する書類

記入方法・記入例
 「給与所得者の保険料控除申告書」の具体的な記入方法は、国税庁のホームページを参考にしよう。なお、国税庁は2020年10月より年末調整控除申告書作成用ソフトウェア(年調ソフト)を無償提供しており、2020年分の年末調整から、生命保険料控除や地震保険料控除などに係る申告書・証明書類を企業へ電子データで提供することが可能となった。企業が電子化に対応している場合は、ソフトウェアを利用することで申告書の作成作業が効率化されるだろう。

参考:国税庁「[手続名]給与所得者の保険料控除の申告」
参考:国税庁「令和2年分給与所得者の保険料控除申告書」
参考:国税庁「《記載例》令和2年分給与所得者の保険料控除申告書の記載例」
参考:国税庁「年末調整手続の電子化に向けた取組について(令和2年分以降)」

「住宅借入金等特別控除申告書」の記入方法

 「住宅借入金等特別控除」(住宅ローン控除)は、住宅ローンを利用してマイホームを新築・購入・リフォームをした場合に適用される控除だ。適用1年目は確定申告を行う必要があるが、2年目からは年末調整で申請を行うことができる。申告書の記入項目とポイントを見ていこう。

記入する項目とポイント
 「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書」は「年末調整のための(特定増改築等)住宅借入金等特別控除証明書」を兼ねた様式となっており、初回の確定申告をした年の10月に税務署から送付される。今後控除が受けられる年数分の申告書がまとめて送付されるため、該当年の申告書を記載することに注意が必要だ。各記入項目は、金融機関から発行された証明書をもとに漏れなく記入しよう。

添付書類
 住宅ローン控除の適用2年目以降に年末調整で控除を申請する場合は、金融機関から送付される「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」を添付する必要がある。その他の添付書類は敷地の取得に係る住宅借入金等の有無や特例の適用などによって異なるため、詳しくは国税庁のホームページ等を確認しよう。

参考:国税庁「No.1213 住宅を新築又は新築住宅を取得した場合(住宅借入金等特別控除)」
参考:国税庁「No.1225 住宅借入金等特別控除の対象となる住宅ローン等」
参考:国税庁「[手続名]年末調整のための(特定増改築等)住宅借入金等特別控除関係書類の交付申請手続」

まとめ

 2020年分の年末調整は、税制改正によって対象や控除額が変更された控除もあるため、自身や家族がどの控除に該当するのかをきちんと把握する必要がある。複雑な計算や必要な書類も多いため、フローや添付書類を把握し、早めの準備を行おう。

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