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管理監督者とは?管理職との違いやポイントを詳しく 解説

2021.03.08

 労働条件の決定やその他労務管理について、経営者と一体的な立場にある「管理監督者」。管理監督者には、「労働時間」「休憩」「休日」といった労働基準法の制限を受けないという特徴がある。管理職と混同されがちだが、管理監督者と管理職は必ずしも同じものでないため、注意が必要だ。

 今回は、管理監督者の定義や管理職との違いなどについて解説する。従業員とのトラブルに発展したケースについても紹介しているので、今後の参考にしてほしい。

目次

●管理監督者とは
●管理職との違い
●管理監督者か否かをめぐり、トラブルになったケース
●まとめ

管理監督者とは

 「管理監督者」とは、労働条件の決定やその他労務管理について、経営者と一体的な立場にある従業員のことを言う。一般の従業員とは異なり、管理監督者は、労働基準法で定められた「労働時間」「休憩」「休日」の制限を受けない。

 管理監督者の場合、具体的にどのようなことが労働基準法の制限の「対象外」または「対象」となるのかを見ていこう。
  
対象外となるもの
 管理監督者の場合、「残業手当」や「休日出勤手当」「36協定」が対象外となる。

 残業手当とは、「所定労働時間」もしくは「法定労働時間」を超えて働いた従業員に対して支払う手当のこと。管理監督者の場合、割増賃金についての規定が適用されないため、残業手当を支払う必要がない。

 休日出勤手当とは、休日に出勤し業務を行った従業員に対して支払う手当を指す。休日出勤した場合の割増賃金についての規定は管理監督者には適用されないため、休日出勤手当を支払う必要がない。

 36協定とは、従業員に「法定労働時間を超えての労働」や「休日出勤」をしてもらうために締結する必要がある協定のこと。正式には「時間外労働・休日労働に関する協定」と呼ばれている。管理監督者に対しては労働時間に関する規定が適用されないため、36協定は対象外だ。

 「労働時間」や「休日」の制限がないとは言え、長時間労働や休日出勤が恒常化すると、従業員の健康を害する恐れがある。管理監督者に過度の長時間労働・休日出勤が生じていないかを確認し、必要に応じて是正を促すことが、企業側には求められるだろう。
  
対象となるもの
 管理監督者であっても、「深夜残業手当」と「年次有給休暇」は対象となるため、注意が必要だ。

 深夜残業手当(深夜手当)とは、22時から翌5時の間に働いた従業員に対して企業が支払う手当のこと。深夜労働の場合の割増賃金に関する規定は管理監督者にも適用されるため、深夜手当を支払う必要がある。

 年次有給休暇(有給休暇)とは、企業が従業員に対して給与を支給する休暇日のこと。有給休暇についての規定は管理監督者にも適用されるため、管理監督者にも有給休暇を付与しなければならない。年10日以上の有給休暇を付与された管理監督者の場合、2019年4月から始まった「年5日以上の有給休暇取得」についても対象となるため、注意が必要だ。

管理職とのちがい

 「管理監督者」と混同されがちなのが、「管理職」だ。管理職とは、部下を管理する立場にある従業員を総称した呼び名のこと。管理監督者と管理職は必ずしも一致するわけではなく、具体的にどの役職にある従業員を管理職とするかは、企業によって異なる。一方、管理監督者に該当するのは、この後で紹介する4つの要件を満たす従業員に限られる。管理職全員が管理監督者に該当するのではなく、管理職のうち一部の従業員のみが管理監督者に該当すると理解しよう。
 
 厚生労働省の発表した『労働基準法における管理監督者の範囲の適正化のために』をもとに、管理監督者と認定されるために必要な4つの要件を見ていこう。

管理監督者に必要な要件①:職務内容
 管理監督者に必要な1つ目の要件として、「労働時間、休憩、休日等に関する規制の枠を超えて活動せざるを得ない重要な職務内容を有していること」が挙げられている。つまり、労働条件の決定やその他労務管理について、経営者と一体的な立場として、労働時間等の規制の枠を超えて活動せざるを得ない重要な職務内容を有している必要がある。

管理監督者に必要な要件②:責任・権限
 2つ目の要件として、「労働時間、休憩、休日等に関する規制の枠を超えて活動せざるを得ない重要な責任と権限を有していること」が挙げられる。経営者と一体的な立場である管理監督者と認められるためには、労働条件の決定その他労務管理について、経営者から重要な責任と権限を委ねられている必要がある。

 なお、役職に就いていたとしても、「自らの裁量で行使できる権限が少ない」「多くの事項について上司に決裁を仰ぐ必要がある」といった場合には、管理監督者には該当しない。

管理監督者に必要な要件③:勤務態様
 3つ目の要件として、「現実の勤務態様も、労働時間等の規制になじまないようなものであること」が挙げられる。 時間を選ばず経営上の判断や対応が要請され、労務管理においても一般労働者と異なる立場にあってこそ、管理監督者と認められる。

 なお、労働時間について厳格な管理されている場合、管理監督者には該当しない。

管理監督者に必要な要件④:賃金・待遇
 最後の要件として、「賃金等について、その地位にふさわしい待遇がなされていること」が挙げられる。管理監督者は、経営者と一体的な立場にあるという重要な役割を担っている。その職務の重要性を考慮し、「給与」や「賞与」「その他の待遇」について、一般の従業員よりも良い待遇となっていなければならない。

 このように、管理監督者に該当するかどうかは、「職務内容」や「責任・権限」「勤務態様」「賃金・処遇」によって判断される。「課長」「部長」「本部長」といった役職名で判断されるわけではないため、注意が必要だ。

参考:厚生労働省『労働基準法における管理監督者の範囲の適正化のために

管理監督者か否かをめぐり、トラブルになったケース

 管理監督者をめぐり、よくトラブルとなるのが「名ばかり管理職問題」だ。名ばかり管理職とは、管理監督者としての要件を満たさないにもかかわらず、あたかも管理監督者のような扱いを受けている従業員のこと。名ばかり管理職は管理監督者ではないため、「残業手当」や「休日出勤手当」の対象となる。しかし、管理監督者のように「残業手当」や「休日出勤手当」が支給されないケースが散見され、社会問題となっている。

 ここでは「管理監督者に該当するかどうか」が争点となった裁判について、紹介する。

管理監督者と認められたケース
 B医療法人の人事第2課長として看護師の募集業務に従事していた原告Aは、管理監督者の地位にはなかったとして、時間外・休日・深夜労働にかかる割増賃金の支払いを求めて提訴。

 原告Aは、看護師採否の決定、配置等労務管理について、経営者と一体的な立場にあった。また、出退勤時のタイムカード打刻が義務付けられていたものの、実際の労働時間は原告の自由裁量に任せられていた。そのため、裁判所は「原告Aは、管理監督者にあると認められる」と判断。時間外・休日・深夜労働に対する割増賃金の請求を認めなかった。

管理監督者と認められなかったケース
 ハンバーガー販売会社D社の直営店店長である原告Cは、管理監督者には該当していないとして、過去2年分の割増賃金の支払などを求め、提訴。

 原告Cは、店舗運営において重要な職責を負っていたものの、職務と権限は店舗内の事項に限られており、経営者との一体的な立場にあると言えるほど重要な職務と権限は付与されていなかった。また、労働時間に関する自由裁量性もなく、待遇も管理監督者として十分なものとは言い難い状況だった。そのため、裁判所は「原告Cは、管理監督者には該当しない」と判断。原告Cに対する、時間外労働や休日労働に対する割増賃金の支払いを、D社に求めた。

まとめ

 経営者と一体的な立場にあり、「労働時間」や「休憩」「休日」といった労働基準法の制限を受けない「管理監督者」。管理監督者と認められるかどうかは、役職名ではなく「職務内容」や「責任・権限」「賃金・待遇」などで判断されるため、注意が必要だ。今回の記事を参考に、管理監督者についての理解を深め、「名ばかり管理職」が発生しないよう努めよう。