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バックオフィスにまつわる法改正Vol.2 2021年1月に育児・介護休業法が改正 企業が取るべき対策とは

2021.06.17

育児や介護を行う労働者がそれらに伴う休暇をより柔軟に取得できるよう、2021年1月1日に「育児・介護休業法」の施行規則等が改正・施行された。改正のポイントや企業が行うべき対策を知りたいと考える担当者もいるのではないだろうか。

今回は、育児・介護休業法の基本的な知識や改正のポイント、企業が取るべき対策や注意点を紹介する。おさえるべき点を把握し、適切に対応できるようにしよう。

目次

●育児・介護休業法とは
●2021年の改正点とポイント
●企業が取るべき対策、注意点
●まとめ

育児・介護休業法とは

「育児・介護休業法」は、育児や介護を行う労働者が仕事と両立できる仕組みをつくることで、退職せず働き続けられるようにするための法律だ。まずは、育児・介護休業法の概要や具体的な支援制度を見ていこう。

育児・介護休業法の概要
育児・介護休業法は、正式名称を「育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律」といい、育児や介護を理由とした退職を防ぐために、企業が講ずべき措置を定めた制度だ。少子化対策や雇用の継続・安定化を図ることを目的としており、企業規模や従業員の人数に関わらず、すべての企業が適応対象となる。

育児・介護休業法の支援制度
育児・介護休業法で定められている主な支援制度は、以下の通りだ。就業規則等に規定がない場合でも、要件を満たした従業員がこれらを申し出た場合、企業は同法に基づいた対応を行わなければならない。また、企業が社内体制や業務形態に応じて独自の休暇制度などを設けることも歓迎されている。

【育児のための支援制度】
・産前産後休業の取得
・育児休業の取得
・子の看護休暇の取得

【介護のための支援制度】
・介護休業の取得
・介護休暇の取得

【共通する支援制度】
・所定外労働の制限
・時間外労働の制限
・深夜業務の制限
・所定労働時間の短縮(短時間勤務制度)
・ハラスメントの防止

参考:厚生労働省「育児・介護休業法のあらまし(令和3年1月1日施行対応版)」

2021年の改正点とポイント

2021年の育児・介護休業法施行規則改正では、主に「子の看護休暇」と「介護休暇」について改正が行われた。ここでは、改正の具体的な内容やポイントとなる事項を説明する。

時間単位で取得することが可能に
怪我や病気の子どもの世話や予防接種を受けさせるなどの場合に利用できる「子の看護休暇」や「介護休暇」の取得単位について、改正以前は「半日単位」とされていた。改正後は「時間単位」での取得が可能となったため、家族の状況に応じて柔軟に休暇が取得できるようになった。この場合の「時間」とは1時間の整数倍の時間を指し、企業は従業員の希望する時間数を取得できるようにしなければならない。

なお、それぞれの休暇を時間単位で取得する場合、取得した時間数の合計が1日の所定労働時間に相当する時間数になるごとに「1日分」とカウントする。1日の所定労働時間に満たない端数がある場合は、端数を時間単位に切り上げる必要がある。例として、1日の所定労働時間が7時間30分の場合、30分という端数を切り上げて8時間分の休暇で「1日分」とカウントされる。

全ての従業員が取得対象に
これまで、子の看護休暇や介護休暇については「1日の所定労働時間が4時間以下の労働者は取得できない」とされていた。今回の改正で「全ての労働者が取得できる」よう変更されたことにより、育児や介護を理由に働くことが困難であった人の雇用継続・再就職につながるという効果も期待されている。

「中抜け」ありの休暇取得に配慮を
同法で求められている対応は、いわゆる「中抜け」(就業途中で休暇を取得し、就業時間中に再び戻ること)なしの時間単位休暇だ。しかし、厚生労働省では法を上回る制度として、「中抜け」ありの休暇制度を認めるよう配慮を求めている。

なお、既に「中抜け」ありの休暇制度を導入している企業が「中抜け」なしの休暇とすることは、従業員にとって不利益な労働条件変更となるため、注意が必要だ。

参考:厚生労働省「子の看護休暇・介護休暇が時間単位で取得できるようになります!」
参考:厚生労働省「この看護休暇・介護休暇の時間単位での取得に関するQ&A」

企業が取るべき対策、注意点

法改正に伴い、企業はどのような対策を行うとよいのだろうか。企業が取るべき対策や気を付けるばきポイントを紹介する。

現在の就業規則の改定
育児・介護休業法の改正に伴い、企業は就業規則の「子の看護休暇・介護休暇」に関わる部分を見直し、改正後の法令に準拠したものに修正する必要がある。規定例は厚生労働省のホームページに公開されているため、参考にするとよいだろう。

なお、現行の就業規則を変更する場合は、過半数組合または従業員の過半数代表者からの意見書を添付したうえで所轄の労働基準監督署に届け出る必要があるため、改定後は速やかに届け出を行おう。

参考:厚生労働省「育児・介護休業等に関する規則の規定例」
参照:厚生労働省「就業規則を作成しましょう」

管理システムの見直し
現状で「年次有給休暇」の時間単位取得を許可していない場合でも、「子の看護休暇・介護休暇」については時間単位での取得を認めなければならない。よって、自社の休暇取得日数の管理方法の見直しや、導入している勤怠管理システムが法改正に対応しているか否かの確認を行う必要があることにも注意しよう。

社内体制の見直し
育児や介護によって一時的に人員が不足すると、残ったメンバーへの負担増や長時間労働などが懸念されるだろう。労働力の低下を想定して代替要員を確保したり人員配置を見直したりするなど、社内体制を整備することも重要だ。

なお、政府は仕事と家庭の両立支援に取り組む企業に対しての助成を行っている。これらを活用して、代替要員の採用や教育コストなどにあてるのもよいだろう。

参考:厚生労働省「事業主の方への給付金のご案内」

まとめ

2021年1月の育児・介護休業法の改正では「子の看護休暇」と「介護休暇」についての改定が行われ、すべての従業員がより柔軟に休暇を取得できるようになった。企業が行うべきこととして、就業規則の改定や管理システム、社内体制の見直しが必要となることに注意が必要だ。企業内のメンバーが育児や介護と両立しながら気持ちよく業務に向き合えるよう、従業員の求めに応じて柔軟に対応できるような体制を整えておこう。

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