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労務管理とは?人事管理の業務内容との違いと業務改善のポイントを解説

2022.02.10

労務管理業務は企業の根幹を支える大切な業務。ルーティーンでできる仕事も多いが、法改正などで内容が変化するなど常に最新情報の取得が欠かせない。今回は労務管理の業務改善ポイントとともに、人事管理業務との違いについて解説する。

労務管理の基本業務年間スケジュール

労務管理の基本業務は、下記のような年間スケジュールで進めていく。ただ、新入社員に関するものや賞与など、会社によっては該当しない項目もあるので参考程度にみて欲しい。各項目については次の章で詳しく解説していく。

 

労務管理の基本業務

上記スケジュールで表記した基本業務を細かく解説していく。

雇用契約の締結および伴う手続き
4月の新入社員の雇用契約に伴う手続きは労務管理の大切な仕事。雇用契約書は賃金や労働時間、休日などの労働条件を事業主と従業員がお互いに確認して取り交わす契約書。書面で締結する義務はないため、口頭でのやりとりでも雇用契約は成立する。

しかし、後々のトラブル回避のために書面化して保管することが一般的だ。

ただ、労働条件(賃金、労働時間、休日など)を明示した労働条件通知書の書面交付は労働基準法によって義務付けられているため、多くの企業では雇用契約書と労働条件通知書をまとめて作成している。

就業規則の整備・運用・管理
就業規則とは会社の公式ルールを定めたもの。公式ルールを明確にすることで、従業員は安心して働くことができるため、就業規則がない会社にはぜひ整備してほしい。

また、一度作成したからといって安心してはいけない。例えば、ここ数年で進んだテレワーク。今までの就業規則ではテレワークは想定されておらず、ルールが明文化されていない企業も多いだろう。

時代とともに仕事のやり方にも変化が生じていくため、就業規則に関してもその都度、整備する必要がある。

社会保険・雇用保険の手続き
新規雇用者や退職者がいる場合に忘れてはならないのが社会保険や雇用保険の手続き。多くは採用・退職した翌月の決まった日にちまでに手続きする必要があるため、忘れないようにしたい。

退職手続き・休職・異動手続き
退職や休職、異動の手続きも労務管理者の仕事。退職する場合は上記の社会保険・雇用保険の手続きが必要だ。休職の場合は理由によって手続きがまったく変わるため、注意しよう。

傷病休職の場合は医師による診断書を提出してもらうなど、就業規則に即した手続きを進めたい。

勤怠管理・給与計算
勤怠管理は給与計算をするために必要な出退勤時間や残業時間・休日などを集計する業務。自動化されていない場合はかなり負担のかかる業務の一つだ。

勤怠管理表をもとに給与計算を行うが、元である勤怠管理表が間違っていると給与計算にも影響してしまうので、管理する側の心理的不安も大きい。

法定三帳簿の整理
法定三帳簿とは「労働者名簿」「賃金台帳」「出勤簿」の3つの帳簿を指す。労働者名簿には名前や生年月日など、記載事項が決められており、さらに内容に変更が生じた場合は直ちに訂正しなければならない。

賃金台帳は従業員ごとに基本給から労働日数、休日労働時間数など賃金を支払う際に必要な情報を記載する必要がある。出勤簿は労働時間状況を把握できるようにした記録で、客観的な記録が適切にできていれば方法は問わない。これら3つはそれぞれ法的にも整備が義務付けられているためしっかりと管理しなければならない。

社内の安全衛生・社員の健康管理
職場における快適な環境の確保や労災防止のための危険防止基準の確立(安全衛生)、健康診断やストレスチェックなどを通じた健康管理を行う必要がある。ハラスメント対策などもこの業務に該当し、労災発生時の対応や労務トラブルへの対応も業務の内だ。

労務管理と人事管理の違い

労務管理も人事管理もどちらも企業が活動していく上で欠かせないバックオフィス業務。労務管理が一部、人事管理業務に近い内容を行うため内容が混同されがちだが、「どの立場に立って仕事をしているか」という面で違いがある。

労務管理は従業員が働きやすい環境整備をする業務全般を受け持っており、従業員目線の仕事。人事管理は会社を成長させることを目的に従業員の能力を生かすために業務を行っており、企業目線の業務を行っている。具体的な違いは以下の表の通りだ。

 

労務管理を遂行する上で大切な心構え

労務管理は会社の縁の下の力持ち的存在。間違いなく業務を遂行することが当たり前とされているため、プレッシャーが多い業務でもある。労務管理を遂行する上で大切な心構えを紹介するので、念頭においてほしい。

労務管理の業務目的の理解
労務管理の業務目的は「従業員が働きやすい職場環境と整えるため」。まずはこのことを忘れないようにしてほしい。

情報管理意識
給与計算や勤怠管理など、他の従業員に知られてはいけない情報を持っていることを常に意識し、情報漏洩がないよう注意したい。

改善意識
従業員の働く環境を良くしていくことが業務目的だと前述したが、そのためには現状維持ではなく、常に環境を良くするために改善していこうという意識を持つことも大切だ。

労働環境の基本法令の理解
労務管理の業務にはさまざまな労働法が関わってくるため、常に法改正にアンテナを張っている必要がある。次の章では業務に関わってくる労働法について紹介していこう。

労務管理に関係する主な労働法一覧

労務管理に関わる主な労働法を紹介する。

労働基準法
労働条件の最低基準を定めた法律で、労働時間、休日などについて示されている。具体的には労働時間は1週40時間、1日8時間までなど、明確な基準がある(厚生労働省「労働基準に関する法制度」)。雇用契約を交わす上で、労働基準法よりも低い基準で契約することはできない。

労働組合法
労働組合法とは、「労働者が主体となって自主的に労働条件の維持・改善や経済的地位の向上を目的として組織する団体」(厚生労働省「やさしい労務管理の手引き」)。従業員が会社と同等な立場で交渉することを保証する法律だ。

労働契約法
会社には労働契約法によって、従業員と対等な立場で契約内容を確認できるようルールを整えることが定められている。労働契約の変更や契約の継続や終了は、従業員に不利益な決定ができないことになっているので注意したい。

最低賃金法
国が定めた最低賃金以上の賃金を支払わなければならないというのが最低賃金法だ。従業員と合意のもと、最低賃金以下の賃金を定めたとしても無効になるため、必ず所在地の最低賃金を確認して従業員の給与を決定してほしい。

男女雇用機会均等法
従業員の採用段階から配置、昇進、降格、福利厚生、雇用形態、定年など、従業員に関わるすべてにおいて、性別を理由とする差別を禁止するのが男女雇用機会均等法だ。特に妊産婦に対する扱いには細かく規定されているため、しっかりと理解する必要がある。

育児・介護休業法
以前は女性のみの問題という扱いだった育児・介護休業法だが、2021年6月に男性の育休取得促進のために柔軟な枠組みを創設するなど改正された。施行期日が2022年4月から2023年4月まで、バラバラなのでスケジュールを把握して対応してほしい。

労働安全衛生法
業務を行う際、安全に就業できるようにするのも会社としての役目だ。それを法律で具体的に示しているのが労働安全衛生法。健康診断の定期実施のほか、工事現場、作業現場などを持つ会社の場合は危険に対する措置や有害業務を行う際に作業環境測定を行うことなどが定められている。

労働施策総合推進法
パワーハラスメント対策が企業の義務となる旨を示した労働施策総合推進法が2020年6月から改正された。就業規則にパワハラの定義を記し、従業員に周知徹底させる必要があるほか、場合によってはパワハラ防止に向けた研修を開催することも視野に入れてほしい。

労務管理を効率化する業務効率化のポイント

労務管理はできて当たり前、間違えると大問題となる大変な業務だが、業務を効率化することでよりスピード感を持ってミスなく遂行できる可能性がある。ここでは業務を効率化するためのポイントについて紹介する。

紙書類の管理から電子化・ペーパーレス化
申請書類等を紙で管理していることが多い労務管理業務だが、紙ベースでの管理は保管場所を取る上にいざ欲しい書類があるときに探すのも一苦労だ。電子化を進めてペーパーレスにしてしまえば、保管場所も必要なく必要な書類もすぐに引き出すことができ、業務効率が一気に高まる。

Excelでの勤怠・給与計算からクラウドサービスの活用
Excelでの勤怠管理・給与計算は手打ちでの入力となるため、ミスを0にすることが難しい。クラウドサービスを活用することで、勤怠管理から自動的に給与計算ができるなど、自動化を進めればミスを減らすことができるだろう。

自社内完結から専門家への業務のアウトソーシング
社内で行っている専門的な業務をアウトソーシングするのも一つの手だ。労務管理は少ない人数で多岐にわたる業務を行なっていることが多く、負担が大きい。給与計算など特にミスが許されない業務を専門家へ任せることも検討してほしい。

就業環境や市場の変化に合わせた業務フローの定期的な見直し
就業環境や市場は常に変化しているため、ずっと同じ業務フローをこなしていると徐々にずれが生じてくる。近年のコロナ禍によりテレワークが増えたことなどもその一つだ。定期的に業務フローを見直し、効率化を促していこう。

労務管理の改善にはシステム導入前に研修による正しい理解が大切

労務管理業務を改善するためにシステムを導入する場合、まずは研修などを行って正しく理解してもらうことが大切だ。理解がない状態でシステムを導入してしまうと、担当者は新しく覚えることが増えたと不満に感じてしまう可能性がある。新しいツールが自身の業務を効率化するもので、一度覚えてしまえば仕事が楽になることを理解してもらい、スムーズなシステム導入を目指したい。

まとめ

労務管理業務は法律の改正といった外的要因や職場環境の変化といった内的要因によって業務内容が変わっていくため、常に最新情報を仕入れてアップデートしていく必要がある。すべてを従業員のみでこなしていくことは至難の業であるため、上手に労務管理サービスやアウトソーシングを取り入れて、業務負担が重くなりすぎないようにして欲しい。

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