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署名と記名の違いとは。契約書への記載方法のマナーを、「紙文書」から「電子署名」まで網羅的に解説

2022.05.16
オフィスのミカタ編集部

「署名と記名の違いとは?」と問われて自信を持って答えられる読者はどれくらいいるだろうか?この記事では、契約書を扱うことの多いバックオフィス担当者に向けて、署名をはじめとする記載方法のマナーを説明する。さらに多くの企業で利用が増えてきている電子署名についても分かりやすく解説する。

契約書に必要な署名と署名以外の契約書サイン

契約書など重要書類に氏名を書く場合に求められるのは署名だ。記名ではなぜダメなのか、以下の定義を見ながら確認したい。

署名と記名の違いは法的効力
まずは署名と記名の定義を確認しよう。

署名:本人が自筆で書く氏名
記名:自筆以外の方法で記す氏名

以上のように、署名は筆跡が残り本人が記載したことを証明できる。そのため、記名だけの場合とは異なり、署名は契約書等の法的効力に持たせることができる。

記名押印は署名に代替することができる
記名は自筆ではないため、記名者本人の意思が反映されているか判別できないこともあり、法的効力を持たない。ただし、押印とセットにすることで署名の代わりとすることができる。

捺印と押印の違い
捺印も押印、どちらも印鑑を押す行為であることに変わりはない。

・捺印は署名とセットの場合に使う
・押印は記名とセットの場合に使う

以上の違いで呼び方が変わると覚えておくとよいだろう。

メールの署名と署名活動と契約書の署名の違い

メールの署名、署名活動、契約書の署名、それぞれの違いを見ていこう。

メールの署名は、契約書に記載するものとは定義が異なり、「氏名」「会社名」「所属先」「連絡先」など、名刺に載せる内容をまとめて記載したもの。メールの最下部に毎回入れるようにしたい。

署名活動や契約書の署名には、自筆での氏名記入が求められる。ただし、署名活動の場合、地方自治体法で定められた直接請求を除き、署名をしても書類に法的効力が付されるものではない。

契約書における署名の方法

契約書の署名方法は書類によって若干違いはあるものの、大まかにはどこも同じような体裁をとっていることが多い。ここでは一般的な署名の方法について紹介する。

契約書における署名の実例
契約書へ署名する際の実例は以下の通りだ。

令和4年4月1日
(甲)
住所:東京都●●区●●       
会社名:株式会社東京   
役職名・氏名:代表取締役 東京 都民

(乙)
住所:北海道●●市●●    
会社名:株式会社北海道     
役職名・氏名:代表取締役 北海道 道民

「住所」「会社名」「役職」「代表者名」は最低限入れたい情報で、ここに連絡先などが加わることもある。

末尾のケースが多いが厳密なルールではない
署名欄は契約書の末尾に設置されていることが多いが、絶対的なルールというわけではない。確認しやすいようにと冒頭に設定することもある。分かりやすく書かれていれば問題ないだろう。

右寄せ・左寄せも厳密なルールはない
右寄せ、左寄せに関しても特に法律で定められているわけではないため、記載しやすい位置に設置すれば問題ない。ただ、署名する箇所を分かりやすくするために線を使って枠を設けると親切だ。

住所に郵便番号を載せる厳密なルールはない
住所には郵便番号を載せるという厳密なルールはなく、省いているケースが多い。

署名の記載方法における効力

署名には法的効力があり、記名にはない旨を前述したが、効力の強さを順に並べると以下のようになる。

1. 署名 + 捺印
2. 署名のみ
3. 記名 + 押印
4. 記名のみ(法的な効力は認められない)

2と3は同等の効力を持つが、一般的には2の方が、信用度は高いとされている。上位3つに加えて、最近では電子署名にも法的効力が認められている。

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契約書のサインにおける署名者のルール

契約書の署名者は一般的には代表者となっているが例外的なルールもある。以下で詳しく紹介する。

契約主体である代表者が契約書に署名するのが原則
特に企業間での契約の際に注意したいのが署名者。これは契約を担当した人物ではなく、代表者が署名をするのが一般的だ。なぜなら、会社法第349条では「代表取締役は、株式会社の業務に関する一切の裁判上又は裁判外の行為をする権限を有する」と規定されており、代表者がすべての権限を有しているからだ(参照「e-GOV法令検索」)。

ただ、契約の度に代表者が署名をしている時間はないというのが多くの企業における実態だろう。そこで代表者以外の署名が認められるパターンを次の項目で紹介していこう。

代表者から権限委譲された社員名義で契約する場合は役職の記載
専務取締役や常務取締役といった役職の場合、業務における執行権限を持つことが多いだろう。その場合、各自の権限の範囲内で契約締結権限を持っているため、範囲内であれば署名が認められる。また、代表者から契約締結権限や代理権を委任され決裁権を与えられた場合もその従業員に限っては契約に有効な署名ができる。

社員が代表者の名義で代理署名する場合は権限の有無を確認
契約締結権限は代表者のみが所持する場合でも、実際には代表者の名義で従業員が代理署名するようなケースも多いのではないだろうか。締結手続きを行う人が代表者の氏名を書き、代表者印を押印することで会社の意思決定を表す例は多い。ただし、誰でも契約が締結できてしまうような事態にならないよう、決裁や署名に関するルールを整備し徹底していく必要がある。

電子署名法の施行による電子署名の法的効力

2001年に電子署名法が施行されたことにより、手書きの署名と同じように法的効力を持つことになった電子署名。電子印鑑や電子サインなど、電子署名との違いが曖昧なままでいる人も多いのではないだろうか。ここではその違いなどを解説する。

電子署名はオンラインで完結するため締結が速い
電子署名は契約書を持って取引先へ出向いたり、郵送したりする手間がない。さらには修正事項があってもデータ上ですぐに作業ができるため、締結までのスピードが速いことが大きな特徴だ。

電子印鑑との違い
電子印鑑とは印鑑を電子化したもので、実印や認印などと同等の役割を持つ。無料の電子印鑑に関しては認印と同等で、法的な効力は認められない。有料の電子印鑑に関しても、署名にプラスすることで証明を補強できるくらいの認識でいるとよいだろう。

電子サインとの違い
電子サインは電子署名と同等と思われることが多いが全く異なるので注意したい。電子サインは、たとえばスポーツジムへ入会する際にタブレットなどに表示された契約書を一通り読んだ後、タッチペンなどで申込書へ記名する行為を指す。電子署名のように第三者機関を通さないのが特徴で、確実な本人証明とはならない。

電子署名には「電子証明書」が必要
「電子証明書」とは、印鑑証明書と同じ役割を持つもので、ネット上の身分証明書といえる。認証局が発行しており、公開鍵暗号基盤で本人証明ができる。

電子署名法に対応した電子契約サービスには現在多くのベンダーがあり、以下の記事で詳しく紹介している。特徴もさまざまなので、自社に合ったサービスを選んでほしい。

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まとめ

法的効力を持つ署名だが、記名+押印でも同じ効力を持つことはぜひ覚えておいてほしい。また、電子契約を導入している企業が増えている。ペーパーレス化や書類の保存コストなども考えながら、ぜひ導入を検討してみてほしい。