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従業員満足度(ES)の調査と向上を形骸化させずに実施・組織力強化をする方法を解説

2022.05.18
オフィスのミカタ編集部

組織の現状を把握するために従業員満足度(ES)を調査してみたは良いものの、課題の抽出・解決に至らず、取り組みが形骸化してしまってはいないだろうか。この記事では形骸化させない従業員満足度の調査、向上までの方法について解説する。

従業員満足度(ES)の定義

従業員満足度(ES)とはどのように定義されるのか、以下で詳しく解説していく。

従業員満足度とは福利厚生・給与・働きがいなど総合的な満足度
従業員満足度(Employee Satisfaction:ES)とは、福利厚生・給与・働きがいなどを含めた組織に対する総合的な従業員の満足度のこと。

従業員満足度が高いほど生産性や顧客満足度が向上すると考えられているため、従業員満足度の向上は企業として取り組むべき施策の1つとして捉えられている。

従業員エンゲージメントは自発的な企業への貢献性
従業員満足度と似た指標として、従業員エンゲージメントというものがある。従業員満足度は言葉の通り、組織に対して満足しているかを表す指標であるのに対し、従業員エンゲージメントは自発的に企業へ貢献する姿勢・意欲を指す。

従業員満足度(ES)の向上を行う意義・狙い

従業員満足度の向上を行う意義や狙いは何なのだろうか。以下で詳しく紹介する。

企業全体の風土改革による離職率の低下
企業には培われた独自の文化や価値観が存在し、組織風土として定着している。意見が言いづらい、雰囲気が重いなど組織風土が従業員に対してマイナスに働いている場合には離職率が高くなる恐れがある。調査によって早期に発見し、風土改革を行う必要があるだろう。

活躍人材の長期定着による生産性の向上
従業員満足度が高い場合には、この企業で働いていたいという従業員も増えるだろう。活躍人材の流出を防ぎ定着してもらえることで、習熟度が上がり生産性の向上も見込める。

活躍人材と企業のESへの取組をモデルケースにした採用力強化
活躍人材が長期定着することで、採用・教育の負担を軽減できる。また、ES向上の取組を行っていること自体が社外への求人活動だけでなくリファラル採用でもプラスに働き、採用力強化につながるだろう。

活躍人材・風土改革による顧客満足度の向上
従業員満足度が向上すると、従業員が働きやすくなり、モチベーションが向上する。そのため、従業員のパフォーマンスが上がることから、結果として顧客満足度(CS)の向上が見込まれる。

従業員満足度が注目されている背景は労働市場・環境の素早い変化

従業員満足度が注目され、向上させようとする動きの背景には労働市場・環境の急激な変化が考えられる。具体的には少子高齢化による労働人口の減少や、優秀な人材の採用難、コロナ禍によるテレワークなどの労働環境の変化などが挙げられる。そのため、従業員の組織コミットメントをどう引き出すかが課題となってきていると考えられる。

また、コロナ禍の従業員満足度についての詳細は下記の記事を参考にしてほしい。

コロナ禍の従業員満足度調査 60%が勤務先の対応に「満足」

従業員満足度(ES)を構成する要素

従業員満足度は主に下記で紹介する5つの要素によって構成される。それぞれの要素について詳しく見ていこう。

企業理念への共感
企業理念は企業の根幹的な考え方や価値観を表すものだ。そのため、企業理念が共感できるものであれば、企業に対する信頼は厚くなり、自分も企業の一員ということに誇りが持てるようになりポジティブな影響を与えるだろう。

合理的な人材マネジメントへの納得
上司のマネジメントによって部下の評価や指導が適切に行われている場合には、部下は円滑に業務へ取り掛かることができるため、従業員満足度が向上する。

ただし、上司側の従業員満足度やマネジメント能力が低い場合には、その影響が部署全体へと広がる可能性があるため注意が必要だ。

職場におけるストレスフリーな人間関係
従業員は1日の大半をオフィスで過ごしているため、職場の人間関係が拗れているような場合には大きなストレスとなるだろう。
そのため、「自分の意見が言える」「ハラスメントが行われていない」などストレスフリーな人間関係が構築されていることが望まれる。

ワークライフバランスの実現のための休息と報酬
従業員にとって業務が正当に評価されて報酬や待遇に納得感を得ることは重要である。評価以外にも残業や休日出勤などが多い場合には、その分負担が増えるため従業員満足度は減少する。
従業員一人一人のワークライフバランスの実現のために、適切な休息と報酬を与えることが従業員満足度の向上につながるだろう。

積極的な権限委譲による貢献性
上司が積極的に部下へ権限委譲することによって、部下に主体性を持たせプロジェクトに貢献してもらうという方法がある。適度に権限を委譲された部下は、上司に認められているという承認感を得られるため、従業員満足度が向上すると考えられる。

従業員満足度(ES)を社内アンケートで正しく調査する方法

従業員満足度の調査は社内アンケートによるものが多い。ここでは社内アンケートで正しく従業員満足度を調査するための方法について解説する。

従業員満足度アンケートのゴールを定義する
従業員満足度アンケートを行う上で、どうしてこのアンケートを行うのか、アンケート結果を何のために使用するのかというゴールを定義しておく必要がある。

ゴールを定義しない状態でスタートしてしまうと、アンケートを実施すること自体が目的となってしまう恐れがある。

質問項目を従業員満足度の構成する要素ごとに設計する
アンケートの質問項目は、従業員満足度を構成する要素ごとに設計するようにしよう。要素については前述した「従業員満足度(ES)を構成する要素」の項目を参考にしてほしい。

人事評価に影響がない旨の周知とアンケート実施
アンケートの質問項目にはセンシティブな内容が多い。そのため、回答によっては自身の評価に影響を与えるのではないかという不安が出てしまう恐れがある。

そのため、アンケート自体を匿名性にしたり、回答結果が人事評価に影響がない旨を事前に周知したりと配慮する必要があるだろう。

アンケートの分析結果を元にした施策ベースでの全社向けフィードバック
アンケートを取り終えたら、分析結果を元に抱えている問題を洗い出し、解決のための施策を検討する。具体的な施策を立てたら全社向けにフィードバックを行い、実際にアクションへと繋げよう。

また、分析結果については担当者だけでなく経営陣も目を通し、把握しておこう。

従業員アンケートを「疲れる」「改善を実感できない」にしない

従業員アンケートに関する調査結果によると、回答者の約70%が従業員アンケートに対して「疲れる」「改善を実感できない」などネガティブな印象を抱いていることが分かった。

従業員アンケートへの回答を有意義にするためにも、設問数を最低限に減らす工夫や回答結果をもとにした適切なフィードバックを行うように努める必要がある。

従業員満足度(ES)をアンケートの分析結果をもとに高める方法

従業員満足度を向上させるためには、どのようにアンケートの分析結果を使用すれば良いのか。具体的な方法について以下で解説する。

アンケートの内容を自社内で対応ができる課題にのみ注力する
アンケートの結果から導き出された課題の中には、自社内で対応・解決ができるものもあれば、そうでないものもあるだろう。外部の力を必要とする場合には、改善までに時間を要する可能性があるため、まずは自社で完結できる課題にのみ注力し解決していこう。

報酬体系など経営数字への影響が出る施策は最後に回す
給与や賞与、退職金などを充実させる施策の実行自体は容易だが、経営数字へダイレクトに影響を及ぼすためできる限り最後に回すようにしたい。

浮き彫りになった課題をもとに現場の社員に打ち手をヒアリングする
アンケートの回答によって浮き彫りになった課題に対して、現場の従業員に積極的に打ち手をヒアリングしてみよう。従業員の意見を取り入れるという姿勢を示すことで、従業員の納得感を得ることができるほか、組織への参画意識を向上させる効果が見込まれる。

打ち手の取り組みの事例を社内に対して積極的に発信していく
満足度向上の取り組みを社内に発信することで、企業が問題点の改善に取り組んでいるという事実を従業員へ実感させることができる。

発信に対して新たな改善意見を求めて打ち手を広げていく
発信するだけでなく新たな改善意見を取り入れてさらに打ち手を広げていくことで、PDCAサイクルを回すことが重要だ。単発的なアンケート調査ではなく、定期的なヒアリングを行うことで従業員満足度を向上させることに繋がるだろう。

まとめ

従業員満足度を向上させることが、組織力の強化に繋がることがわかっただろう。
また、従業員満足度の調査自体が目的となってしまい、従業員が不満を抱えているケースが多い。そのため、アンケートを実施するだけでなく、分析・改善まで行い従業員満足度を向上させる取り組みをぜひ検討してみてほしい。