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社員の生活を守る社会保険・社会保険料とは?複雑な計算を楽にするシステムも紹介

2022.07.27
オフィスのミカタ編集部

社員の生活に欠かせない社会保険と、それを支える社会保険料。毎月、給与から引かれているけれどその必要性を意識していない人も多いだろう。ここでは社会保険の役割や種類、料率の計算方法など網羅的に紹介する。

社会保険の種類と役割

社会保険の種類とそれぞれの役割について解説する。

医療保険
病気や怪我で医療機関を受診した際に、年齢によって異なる割合で医療費負担を軽減する制度。加入対象者により保険制度が変わり、会社員などは「健康保険」、公務員や教職員は「共済組合」、自営業者や扶養されていない家族は「国民健康保険」となる。

年金保険
定年までの間に支払う保険料により、原則として65歳から老後資金として年金を受け取ることができる。20歳になると強制的に「国民年金」に加入することになり、会社員や公務員になると、さらに「厚生年金」への加入も必要となる。

介護保険
40歳以上を対象に課される保険で、介護が必要になった際に、一部負担で介護サービスが受けられるようになる。医療保険と一緒に徴収される。保険適用には「要介護認定」が必要だ。

雇用保険
失業や就労が困難になった際に労働者の生活を守る制度で、失業給付を受けながら再就職のサポートを受けられる。

労災保険
勤務中や通勤中に病気や怪我が発生した場合、医療費や休業保障をする制度。業務上の病気や怪我は事業主による保証が義務付けられていることから、保険料は事業主が全額負担する。

社会保険料の種類と加入対象者

社会保険には健康保険、厚生年金保険、介護保険、労災保険、雇用保険の5つがあり、この5つを広義の社会保険という。この内、健康保険、厚生年金保険、介護保険は従業員の給与によって金額が変わる狭義の社会保険という。以下では、加入対象者について解説する。

医療保険、年金保険、介護保険は全ての国民が対象
医療保険、年金保険、介護保険は全ての国民が加入して支払う必要がある。これらは会社と従業員が双方で負担する。

雇用保険、労災保険は会社に所属する場合が対象
会社に所属する場合は雇用保険、労災保険への加入が必要となる。労災保険に関しては会社が全額負担するが、雇用保険は折半となる。

狭義の社会保険料の計算に欠かせない標準報酬月額の決定時期と方法

狭義の社会保険料(健康保険、厚生年金保険、介護保険)を計算する際に必要となる標準報酬月額の決定時期と設定方法を解説する。

新規雇用した際に決まる資格取得時決定
新たに従業員を雇用した際に入社日から5日以内に標準報酬月額を記載した「健康保険・厚生年金保険 被保険者資格取得届」を年金事務所に提出する必要がある。この際、過去の給与実績はないため、1カ月当たりの見込み報酬から算出する。この時に算出した標準報酬月額は翌年8月末まで適用となる。

毎年4月から6月の給与平均を元に決定する定時決定
毎年4月から6月の給与の平均を割り出して算出するのが定時決定。毎年7月1日〜10日の間に管轄の年金事務所に算出した標準報酬月額を年金事務所に提出する。翌年8月末まで適用となる。

給与が大幅に変更になった際には臨時改定が適用される
昇給または降格によって給与が大幅に変更にあった際は、臨時改定の必要がある。その際の条件は以下の3つだ。

・基本給など固定的賃金が著しく変動した
・変動した月から連続した3カ月間の標準報酬月額と、これまでの標準報酬月額に2等級以上の差がある
・支払い基礎日数が変動してからの3カ月すべて17日以上ある

固定的賃金には通勤手当などの各種手当も含むため、引っ越しによって通勤手当が大幅に増減した場合にも臨時改定が適用される可能性がある。

育休が終了する際には育児休業等終了時改定
育児休業から復帰後3カ月の平均給与に変更があった際、以下の条件に当てはまる場合には育児休業等終了時改定が適用される。

・育児休業前の標準報酬月額と休業終了後の3カ月間の平均額を算出した標準報酬月額に1等級以上の差がある
・育児休業終了日の翌日の月から3カ月のうち、最低1カ月は17日以上の支払い基礎日数がある

標準報酬月額の算定方法
標準報酬月額は、定時決定であれば4、5、6月に受けた報酬の平均額を標準報酬月額等級区分に当てはめて決定する。都道府県ごとに保険料は異なり、協会けんぽに加入している場合はけんぽ運営のサイトに掲載されている保険料額表で該当区分を確認できる(参考:「令和4年度保険料額表(令和4年3月分から)」)。

賞与に関しては税引き前の賞与総額から千円未満を切り捨てた額を標準賞与額とする。標準報酬月額と同様に都道府県で異なるため、協会に掲載されている保険料額表で確認してほしい(参考:「令和4年度保険料額表(令和4年3月分から)」)。

広義の社会保険料に関してはそれぞれ独自の料率が設定されている
前述した広義の社会保険料の中でも狭義に当てはまらない保険料(労災保険、雇用保険)はそれぞれ独自の料率が設定されているため、一つずつ確認しながら全社員の保険料を算定する必要があるので注意したい。

社会保険に関する詳しい内容は下記記事で解説している。ぜひこちらも一読してほしい。
社会保険ってどういうもの?基礎知識や保険の種類について紹介!

社会保険料の計算で注意したいポイント

社会保険料を計算する上で注意したいポイントを紹介する。

従業員の年齢によって健康保険料率が変わる
健康保険料率は40歳になると介護保険料の徴収が開始されるため、保険料がアップする。忘れずに反映するようにしたい。

昇降給や手当発生によって標準報酬月額の変更が必要な場合がある
標準報酬月額の決定時期でも紹介したが、一度、標準報酬月額を設定したとしても急激な給与の増減があった場合には変更手続きが必要になる。2等級以上の差が出た時には忘れずに届け出てほしい。

社会保険料率の改定があるとその都度変更しなければならない
毎年ではないが、社会保険料率は改定されることがある。事前に告知があるものだが、適用よりもだいぶ前に告知が来ることが多く、いざ変更の時に忘れてしまう危険性がある。しっかりと対応できるようにしたい。

社会保険料の手続きや計算を効率化する方法

煩雑な社会保険料の計算や手続きを効率化するための方法を2つ紹介する。

個別具体的な給与計算業務自体をアウトソーシングする
給与計算業務をアウトソーシングして、丸ごと負担を無くしてしまうのも手だ。給与計算ソフトの利用料や担当者の人件費、採用コスト・教育コストがなくなるため、コスト削減につながる可能性がある。

規定ルールをインストールして給与計算システムを活用する
社内の規定ルールを盛り込んだ、給与計算システムを活用するのも一案としてある。給与計算システムの多くは自動で給与計算ができたり法令改正にも対応していたりすることから、負担となる計算や更新作業の手間を大幅に減らすことができる。

社会保険料を簡単に計算して会計処理にもつながるおすすめのシステム

給与計算システムの導入は社内にナレッジを蓄積しつつ業務効率化が図れるため、導入を進める企業が多い。ここでは多くの企業が導入しているおすすめのシステムを紹介しよう。

マネーフォワード クラウド給与
保険料率の多くを自動で設定してくれるマネーフォワードクラウド給与。税料率を自動更新できるほか、手入力値で設定することも可能。賞与計算に関しては2022年1月時点では開発中とのことで、これから対応されることが待ち望まれる。
https://biz.moneyforward.com/payroll/

freee人事労務
給与額や従業員の年齢に基づいて、保険料を自動で計算してくれるfreee人事労務。保険料率や等級の変更にも自動対応しているため、改定の際にも担当者の負担は0。さらに定時決定や臨時決定の際の手続きに必要な書類も簡単に作成できる。
https://www.freee.co.jp/hr/solutions/medium-business/

弥生給与
会計ソフトとして有名な弥生シリーズの給与計算ソフトでも社会保険料の設定は簡単に行える。自動計算の設定をすれば、協会けんぽに加入している場合は適用となる事業所の所在地を選択するだけ。自動で料率が反映される。健康保険組合の場合は保険料率を入力する必要がある。
https://www.yayoi-kk.co.jp/products/payroll/index.html

ジョブカン給与計算
ジョブカン給与計算では、協会けんぽとITS健保の保険料率に関しては自動で計算されるだけでなく、料率変更になった際にも自動でアップデートされる機能がある。他の組合健保は改定ごとに手入力で変更が必要だが、一度入力してしまえば、それ以降は自動計算できる。厚生年金や労災保険も設定可能だ。
https://payroll.jobcan.ne.jp/

まとめ

社会保険は従業員の生活を守るために欠かせない制度だが、計算が複雑だったり改定があったりと担当者にとっては負担の大きな作業だ。少しでも担当者の負担を減らし、スムーズに計算するために、システムの導入を検討してみてほしい。