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給与と異なる会計処理が必要な賞与計算における注意点や決め方の極意。おすすめの賞与計算サービスも紹介

2022.08.15
オフィスのミカタ編集部

賞与計算は給与計算とは異なる方法で会計処理を行う必要があるため、押さえておかなければならないポイントや注意点が多くある。そのため、この記事では賞与の決め方や注意点の他に、賞与計算だけでなく給与計算なども合わせて行えるおすすめのサービスを紹介する。

大きく分けて3種類ある賞与(ボーナス)の種類

賞与には大きく分けて基本給連動型賞与、業績連動型賞与、決算賞与の3種類がある。ここではそれぞれの特徴について見ていこう。

多くの会社が採用している「基本給連動型賞与」
基本給連動型賞与とは、毎月支払われる基本給に連動して支給額が決まる賞与のこと。「基本給の何ヶ月分」という形で表記される。基本給には残業代などの手当は含まれないので注意が必要だ。

成績に応じて支給額が変わる「業績連動型賞与」
業績連動型賞与とは、企業や部門、個人の業績に連動して支給額が決まる賞与のことだ。業績に応じて支払額を決めるため、賞与の過払いなどで経営を圧迫することがないというメリットのほかに、社員のモチベーションアップにも繋がる。

事業年度の業績に応じて支給される「決算賞与」
決算賞与とは、その事業年度の会社の業績に応じて支給される賞与だ。会社全体の業績が良ければ支給されるので社員のモチベーションアップになる一方で、支給されない場合には逆に社員のモチベーションを低下させる恐れがある。

賞与に係る保険料および税金

給与と同様に賞与にも税金と保険料が控除される。ここではそれぞれの内容について解説していく。

加入する組合や協会で保険料率が異なる健康保険料および介護保険料
健康保険料率は加入している組合や協会、勤務地によって異なるため、知りたい場合は加入先へ確認する必要がある。また、40歳以上で介護保険料を支払っている場合には税率が変化するため注意しよう。さらに、健康保険料は労使折半になる点も押さえておこう。
「健康保険料=賞与額×健康保険料率」

厚生年金
厚生年金の保険料率は2017年以降18.3%で固定されているため、賞与額に18.3%をかけて算出する。また、厚生年金は健康保険料および介護保険料と同様に労使折半になる。
「厚生年金保険料=賞与額×18.3%」

給与計算と方法が同じ雇用保険料
雇用保険料率は建設事業や農林水産など業種によって料率は変わるため注意しよう。また、労使折半ではなく労働者負担と事業主負担の負担率も異なる。
「雇用保険料=賞与額×雇用保険料率」

扶養親族数で税率が異なる所得税
所得税率は賞与支給月の前月の給与から社会保険料を控除した金額に、国税庁が発表している賞与に対する源泉徴収税額の算出率をかけて求めることができる。所得が高いほど税率は上がるが、扶養親族の人数が多いほど税率は下がる。所得税は賞与額から社会保険料を控除し、所得税率をかけることで算出できる。
「所得税=(賞与額-社会保険料)×所得税率」

賞与計算をする際の注意点

賞与計算をする際には、ここで紹介する5つの注意点を把握しておく必要がある。各内容について詳しく見ていこう。

「賞与支払届」を支給日から5日以内に提出する
賞与を支給したら5日以内に賞与支払届と賞与支払届総括表を年金事務所または事務センターに提出する必要がある。必要書類は会社に事前に郵送されてくるので、忘れずに対応しよう。提出していない場合には、対象の従業員の年金が正しく計算されないという恐れがある。

賞与で徴収した保険料や税金の納付期限を厳守する
前述したように賞与には社会保険料と税金が発生する。社会保険料は支給月の翌月末日、雇用保険料は労働局に毎年7月10日までに申告・納付、源泉所得税は所轄の税務署に支給月の翌月10日までに納付する必要がある。期限に遅れた場合には延滞金が課せられることがあるので注意しよう。

社会保険料の上限値はそれぞれ異なるので注意する
社会保険料の上限値は保険によって異なり、健康保険は年間累計573万円、厚生年金保険は月間150万円と定められている。

社会保険料の資格喪失月に支給された賞与は保険料を徴収しない
社会保険料を支払わなければならないのは、資格喪失月の前月までの賞与である。そのため、例えば10月25日に退職者がいる場合、10月に支給された賞与には保険料を徴収する必要はない。ただし、資格を喪失するタイミングは退職日の翌日のため、10月31日に退職者がいる場合は11月1日に資格を喪失するため10月に賞与を支給していると保険料の徴収対象となる。

年間4回以上の賞与を支給する際は標準報酬月額の対象となる
年間4回以上の賞与を支給する際は、標準賞与額ではなく標準報酬月額の対象として社会保険料の計算を行う必要がある。この場合、上で紹介した賞与支払届を提出する必要はない。

下記のページでは、賞与支払いの手続きや方法、注意点から業務効率化を進めるサービスまで網羅的に紹介している。ぜひ参考にしてほしい。
賞与支払届の手続きの方法と注意点。業務効率化を進める対応サービスも紹介

社員の年収を変えずに内訳で賞与を多めに支給するメリット・デメリット

特に業績連動型賞与で成果へのインセンティブとしてコミットを上げる
業績連動型賞与の場合、個人や部署などの成果に基づいて賞与額が決定されるため、業務へのモチベーションに繋がりコミットを上げることができる。また、成果を正しく評価することができれば、企業への信頼感や帰属意識の向上にも良い影響を与えることができるだろう。

基本給を低く残業手当を多くすると採用力が下がる可能性がある
賞与は基本給を基準に計算する企業が多いため、基本給が低いと賞与額も低くなってしまう。また、基本給が低い代わりに残業手当や住宅手当などの各種手当で給与を高くしているケースがあるが、手当は企業の裁量によって支給額の削減や、手当自体を廃止することができるため、従業員としては注意が必要であり、その結果として採用力が下がる可能性がある。

賞与計算をミスなく効率化するための方法

賞与計算は会社の就業規則や賞与規定に基づいて行うため、手作業だとミスが起きてしまう可能性がある。ここでは賞与計算を効率良く行うための方法について解説する。

賞与計算のアウトソーシングを利用する
賞与計算を行うにあたってアウトソーシングを利用する方法があるが、一般的に賞与計算のためだけに外部へ委託することは少ない。そのため、賞与だけでなくその他の業務も合わせて委託する場合に初めて検討すると良いだろう。

賞与計算も行える給与計算ソフトを導入する
賞与計算を手作業で行っている場合には、計算ソフトを導入することでミス防止に繋がるだろう。ただし、上記のアウトソーシング同様に賞与計算だけのために新たなソフトを導入すると余計な手間やコストがかかってしまう。

そのため、もし給与計算も手作業、あるいは現在使用しているサービスに不満がある場合には、賞与計算だけでなく給与計算も行える給与計算ソフトを導入することをおすすめしたい。給与や賞与の計算ソフトを統一することでより業務効率化が見込まれる。

そもそもの賞与額や賞与の内訳をどうやって決めるのか?

賞与額や賞与の内訳については、あらかじめ人材企業や税理士、社労士などプロに相談して決めると良い。その他にも優秀な人材を確保するために競合他社の求人票をチェックしておくことも重要だ。また、厚生労働省により賞与の支給状況や平均額などが発表されるが、その結果にあまり影響されず、会社の業績状況や経営状態などに応じて定めることをおすすめする。なお、賞与は現金ではなく商品券などの現物でも労働組合との労働協約で認められていれば問題ない。

賞与の計算も可能なおすすめ給与計算ソフト

ここでは賞与の計算も合わせて行えるおすすめの給与計算ソフトを4点紹介する。

ジョブカン給与計算
「ジョブカン給与計算」はシリーズ累計で導入社数15万社以上を誇る人気サービスだ。ジョブカンは労務管理・勤怠管理・経費精算などさまざまなシリーズを展開しており、それぞれを連携させることで可能な限り自動化することができるため手作業での対応を削減できる。また、ジョブカン給与計算では賞与の自動計算はもちろん、年末調整機能や帳票の自動作成、Web給与明細・源泉徴収票発行にも対応している。
https://payroll.jobcan.ne.jp/

マネーフォワード クラウド給与
「マネーフォワード クラウド給与」はジョブカン同様に勤怠管理や社会保険など、HRソリューションのサービスが広く展開されている。同シリーズとの連携だけでなく、勤怠や人事などの外部サービスとも連携でき、三井住友銀行やみずほ銀行など金融機関との連携にも対応。また、サポート体制も充実しており有償の導入サポートの他に、オンラインマニュアルやチャット、メールでのサポートが用意されている。
https://biz.moneyforward.com/payroll/

人事労務freee(フリー)
「人事労務freee」は『労務の人的な「ミスをゼロ」へ』を掲げる人事労務ソフト。従業員・管理者それぞれの作業を一気通貫でIT化、勤怠から給与明細などをペーパーレス化できる。また、突発的な業務が発生した際に抜け漏れを防止できるアラート機能も搭載している。
https://www.freee.co.jp/hr/

給与奉行クラウド
「給与奉行クラウド」は給与業務のプロセスだけでなく、社会・労働保険やマイナンバー管理など他の奉行製品と一緒に利用することで人事労務業務を可能な限り自動化できる。導入前には30日間の無料トライアルとオンライン相談を利用でき、ヒアリング内容から最適な運用モデルの提案まで行ってくれる。
https://www.obc.co.jp/bugyo-cloud/kyuyo

まとめ

賞与計算は通常の給与計算とは異なる会計処理が必要なほか、提出しなければならない書類などもあるので注意しておくべきポイントが数多く存在する。これらを手作業で行うとミスが生じてしまう恐れがあるため、計算ソフトを導入してみてはいかがだろうか。賞与だけでなく給与も合わせて計算できるソフトを紹介しているので、ぜひこれを機会に給与に関する業務効率化を図ってみてほしい。