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請求書の電子化で電子請求書システムを使った対応における法的解釈と導入時の注意点

2022.08.16
オフィスのミカタ編集部

紙の請求書を電子化するとコスト削減や業務効率化などのメリットがあるが、導入する上で事前に担当者が押さえておくべき注意点がある。そこで、この記事では請求書の電子化における法的解釈や電子請求書システムの選び方、おすすめのクラウドシステムを紹介する。

紙の請求書の課題を解決する請求書の電子化

紙の請求書を電子化することで解決できる課題を紹介しよう。

印刷用紙やインク代、郵送代などのコスト削減ができる
請求書を印刷するための印刷用紙やインク代、送付するための切手代や郵送代など、印刷から郵送までにかかるコストを削減できる。また、スキャナーや複合機などの設備費や設置スペースの削減も可能だ。

請求書の収納スペースが不要になり、管理が楽になる
請求書を全てクラウドやドライブ上に格納することで、書類を収納していたスペースが不要になる。また、検索も容易になるので必要な請求書をすぐに取り出すことができるだろう。

Web上でやり取りできるため、リモートワークが可能になる
Web上で請求書の確認や承認などのやり取りが行えるため、担当部署のリモートワークを推進できる。そのため、交通費の削減や担当部署のワークライフバランスの実現にも繋がるというメリットが挙げられる。

発送に係る作業がなくなり業務削減ができる
担当者が毎月の請求書を発行・印刷し、郵送するなどの人的な発送作業や送付先のチェックなどの業務削減ができる。

インボイス制度や電子帳簿保存法に対応するためにも電子化は有効

令和4年1月より改正電子帳簿保存法が、令和5年10月からはインボイス制度がスタートする。それに伴い、新制度に応じた請求書業務の増加が懸念されている。特に一部の電子取引については電子保存が義務付けられているため、紙の請求書のままでは紙とデータそれぞれを管理しなければならない恐れがある。ほとんどのクラウドサービスはインボイス制度や改正電帳法に対応しているため、これを機に導入の検討をしてみてはいかがだろう。

また、下記の記事では2023年10月から始まるインボイス制度を含めた電子請求書についてのアンケートを紹介している。ぜひチェックしてほしい。
【請求書受領する大企業、インボイス制度への対応は?】半数以上が「電子請求書発行」依頼を実施

電子請求書の法的効力と電子取引の取引情報に係る電磁的記録の主な必要性

電子請求書を取り扱うにあたって、電子帳簿保存法などの法的な知識を押さえておく必要がある。ここでは電子帳簿保存法で設けられている、対応しなくてはならない項目について見ていこう。

ディスプレイやプリンタ等の紙にできる環境
電子帳簿保存法には「見読可能装置の備え付け」という項目があり、保存したデータを正常に出力するために一定の要件を満たしたディスプレイやプリンタ等を設置する必要がある。

電子データの検索が容易にできるファイル・フォルダの整理の徹底
保存した電子データをすぐに取り出せるよう、「検索機能の確保」として取引年月日・取引金額・取引先で検索できるようファイル・フォルダの整理の徹底を行う必要がある。

タイムスタンプなどによるデータの改ざん防止への配慮・施策
データの改ざん防止への配慮・施策として、下記いずれかの対応をする必要がある。
・タイムスタンプを付与したデータを送る
・受け取った後、すぐにタイムスタンプを付与する
・訂正や削除を行なった場合には、そのログを残すシステムを利用。もしくは訂正、削除ができないシステムを利用
・訂正や削除の防止に関して、事務処理規程を策定し運用、備付け
参考:https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/07denshi/02.htm#a009

電子請求書システムの選び方

数あるサービスの中から、自社に最適な電子請求書システムを選ぶ方法について紹介しよう。

既存システムとの顧客データの連携などが可能かどうか
既に別システムを使用していて顧客データなどを管理している場合には、抽出したCSVファイルをアップロードして反映できるかどうか、または直接API連携が可能かどうかを確認しよう。

ワークフローの一部自動化など効率化を期待している作業が対応しているか
電子請求書システムを導入することで、自社で現在運用しているワークフローの一部を自動化することができるか、あるいはリソースを割いている業務の効率化が行えるか、期待している作業に対応している機能があるかを事前にチェックしておこう。

改正電子帳簿保存法に対応しているか
改正電子帳簿保存法では請求書のデータ化に対する要件が緩和されたが、それに則ったデータ保存を行う必要がある。そのため、現在の請求書の形式ではなく新規で項目を設けるなどの対応が必要だが、改正電子帳簿保存法に対応した電子請求書システムならば、あらかじめ要件を満たした請求書の作成が行える。

セキュリティリスクやインシデントへの対応・サポートは適切か
サービスの中には送信データの追跡やSSLによる暗号化などのセキュリティ機能が充実しているものがあるため、自社のセキュリティ要件を満たしてものを選択しよう。また、インシデントが発生した際に迅速な対応やサポートが受けられるよう、24時間365日の監視を行なっているものを選ぶと良い。

電子化に付きまとう情報漏えいリスクというデメリット

企業外部からのサイバー攻撃への対応
インターネットに接続している以上、外部からのサイバー攻撃には注意しなければならない。電子請求書システムを利用する場合、データセンターの状況や暗号化通信、IPアドレスによるアクセス制限などのセキュリティ体制を確認しておこう。また、請求書をメール等でやり取りする場合には、SSLに対応したソフトを利用しよう。

企業内部からの情報の流出への対応
外部からの攻撃による漏えいだけでなく、内部からの流出の可能性も考えられる。スタッフ個人のIDやパスワードを付与する、あるいはデータのアクセス権限を設定するなどの対応が必要だ。

電子請求書に切り替えるまでのステップ

具体的に紙から電子請求書へ切り替える際の各ステップについて紹介しよう。

セキュリティ要件に合うツールベンダーとワークフローを構築する
電子請求書システムを展開しているツールベンダーのほとんどは導入サポートを行っているが、中には現在の業務内容をヒアリングし、提案まで行ってくれるケースがある。自社のセキュリティ要件に合うツールの中から、サポート体制が充実しているベンダーを選びワークフローの構築を進めよう。

取引先へと案内文を送付し、電子化について周知する
導入時期が定まったら、取引先へ請求書を電子化する旨を伝えるために案内文を送付しよう。送付するタイミングは概ね3ヶ月前にはしておくと、先方のスムーズな対応が期待できる。

社内での電子請求書の取り扱い方やルールを整え内部統制を固める
電子請求書に切り替えるにあたって、社内では電子請求書の取り扱い方や電子化の方法、承認フローなどのルールを整え、内部統制を固める必要がある。

一律に切り替えるのではなく、段階的に電子請求書に切り替える
取引先の中には紙の請求書しか対応できない企業がある可能性や、社内のメンバーが新たな業務に慣れるまでの準備期間として、一気に全てを電子請求書へ切り替えるのではなく、今期は20%、来期は50%など段階的に切り替えるようにしよう。

電子請求書作成業務の効率化を安全に進められるおすすめシステム

ここでは電子請求書の作成業務を効率的に進めるための、おすすめのクラウドサービスを紹介していく。

マネーフォワード クラウド債務支払
「マネーフォワード クラウド債務支払」は、メールで受領した請求書の自動データ保存や、承認ワークフローの一元管理が行えるサービスだ。電子帳簿保存法にも対応しているほか、銀行振込APIによってワンクリックで振込指示が行える。また、オプションのBPOサービスを利用することで紙の請求書のファイリングやデータ保存も可能だ。
https://biz.moneyforward.com/payable/

freee受発注
「freee受発注」は受注者・発注者間でツールを統一することで発注書の内容から支払通知書を自動送信し、請求業務を省略することができる受発注システムだ。受注者とのコミュニケーションはチャット上で行うためそのまま証憑として利用でき、発注している取引先のステータスの一元管理が行えるなどの便利な機能も豊富。サービス使用料は完全無料のため、試しに利用してみるのも良いだろう。
https://www.freee.co.jp/deals/

Misoca
「Misoca」はテンプレートを使用することで、見積書 ・納品書・請求書・領収書・検収書の作成が簡単に行えるサービスだ。会社のロゴや印影登録も可能で、取引先や品目は事前登録しておくことによって選択式で利用できる。各種帳票のメール送付やPDF発行はワンクリックででき、確定申告ソフト連携や売掛金の回収保証の付与などの連携サービスも豊富に対応している。
https://www.misoca.jp/

BtoBプラットフォーム 請求書
「BtoBプラットフォーム 請求書」は請求書の発行だけでなく、請求書の受取や支払金額の通知などの請求書業務全般をデータ化するクラウドサービスだ。導入企業の請求書電子化率は約70%で、取引先が紙の請求書を希望している場合にも、郵送代行やAI-OCRのオプションを利用することで完全な電子化に移行できる。また、電子帳簿法、インボイス制度にも対応しており、利用企業は70万社を超えている。
https://www.infomart.co.jp/seikyu/index.asp

楽楽明細
「楽楽明細」は、帳票データのCSVまたはPDFをアップロードするだけで、あらゆる帳票発行を自動化できる電子請求書発行システムだ。電子帳簿保存法やインボイス制度にも対応しているため、法改正による手続きもスムーズに行える。
https://www.rakurakumeisai.jp/

請求管理ロボ
「請求管理ロボ」は請求・集金・消込・催促などの請求業務を自動化できるサービスだ。請求情報は1度登録するだけで、受注処理時に契約期間に応じた請求予約データを作成し、設定期日に沿って、請求書の発行・送付処理が自動で行われる。自動集金の仕組み化、迅速な入金催促により回収率を向上させるというメリットがある。
https://www.robotpayment.co.jp/service/mikata/

まとめ

紙の請求書のままでは余計なコストがかかるほか、リモートワークに対応できない、法改正への対応に時間がかかるなど、電子化に比べデメリットが多いことが分かっただろう。今までのワークフローを変更することは手間がかかるが、結果としてどの程度工数・コストが削減できるのか、一度電子請求書システムを導入した後の試算を行ってみてほしい。