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法人税の種類、計算・申告方法と法令順守の節税・減税・税金の繰り延べ対策を解説

2022.11.02
オフィスのミカタ編集部

バックオフィス業務の中でも専門性が高く、複雑な業務の一つと言える税務会計。企業の社会的信用や経営に直結するため、正しい知識と適切な処理が求められる。そこでこの記事では、法人税の基礎知識から、計算・申告方法、節税・減税・繰り延べ対策などについて網羅的に解説する。

事業活動で得た所得にかかる法人税と対象となる法人

まずは法人税の基礎知識から押さえていこう。法人税とは、事業活動で得た所得にかかる税金のことを指す。法人にはさまざまな形態があるが、法人の形態によって、法人税の課税対象となるかどうかが変わってくる。

法人税の課税対象となる法人
法人税の課税対象となるのは、普通法人、協同組合等に該当する法人である。また、普通法人と協同組合等とでは税率が異なり、協同組合等の方が、税負担は軽減される。代表的なものは以下の通りだ。

法人税の課税対象とならない法人
原則的に法人税の対象とならないのは、公共法人、公益法人等、人格のない社団等に該当する法人だ。ただし、公益法人や人格のない社団等においても収益事業から生じた所得は課税対象となる。代表的な非課税法人は以下の通りだ。

法人の種類や所得金額・資本金額によって節税につながる場合も
法人税率は、法人の種類や所得金額、資本金によって異なる。例えば、株式会社のような普通法人の場合、基本税率は23.2%となっているが、資本金が1億円以下ならば所得金額が800万円以下の所得に対する税率は15%に軽減される。

法人税が課せされる法人の所得の計算方法

次に、法人税の計算方法を説明しよう。税務会計では損金の取り扱い等で企業会計とは異なる点があるので注意が必要だ。

法人税の対象となる課税所得
企業会計上の利益(税引前当期純利益)は収益から費用を引いて算出される一方で、税務会計における課税所得は益金から損金を引いて算出される。収益と益金、費用と損金には一部異なる点があるため、損益計算書に記される税引前当期純利益と課税所得は通常一致しない。例えば、他社から受け取った配当金は企業会計上では収益に含まれるが、益金に含んでしまうと二重課税となってしまうため益金には算入されない。このように、税引前当期純利益から調整を行った上で課税所得が算出される。

法人の種類や所得金額で区分けされる法人税率
課税所得が算出できたら、法人税率を乗じて法人税額を計算しよう。法人税率は固定税率(23.2%)が適用されるが、いくつか優遇措置もある。それをまとめたのが次の表だ。資本金1億円以下の中小法人の場合、年間所得の800万円をボーダーラインに税率が変わることを覚えておこう。

例を用いた法人税の計算方法
ここで、資本金1億円以下の株式会社を想定した例を用いて法人税の計算方法を紹介しよう。帳簿上の売上が1億円で、利益が1800万円だった。収益のうち益金にならないものが200万円、費用のうち損金にならないものが400万円あったとすると、
所得金額=1800万円-200万円+400万円=2000万円となる。
法人税率は年間所得800万円をラインに税率が変わり、所得金額の2000万円のうち、800万円分は税率15%が適用され、残り1200万円は23.2%が適用される。
法人税額=800万円×15% + 1200万円×23.3%=398.4万円
こうしてみると、なかなか負担が大きいことが感じられるだろう。

法人3税と呼ばれる「法人税」「法人住民税」「法人事業税」

これまでは法人税単体について見てきたが、ここでは仕訳時に「法人税等」の勘定科目で扱われる法人3税について説明をしよう。

国税として法人の利益に課される「法人税」
法人税は法人にとっての所得税に該当する国税だ。上で説明したように、年間所得を元に税率を乗じて算出される。

地方税として都道府県に納税する「法人事業税」
法人事業税は、事業活動に際して利用する行政サービスの経費を分担税金で、都道府県税となっている。道路や港湾などを利用する費用だと捉えよう。法人事業税も法人税と同様に所得金額をもとに計算されるが、資本金1億円超の場合は、所得以外に付加価値額や資本金等をベースに計算する方法もある。

地方税として都道府県民税と市町村民税の2つからなる「法人住民税」
法人住民税は、個人と同様に地方自治体に納める地方税だ。法人事業税と同じように公共サービスにかかる費用を利用する住民で負担する目的で課税される。法人住民税は、法人税の金額をもとに算出される「法人税割」と資本金や従業員数に応じて決まる「均等割」の合計額で算出される。

以下の記事では法人住民税について詳しく解説している。ぜひ参考にしてほしい。
企業が納税すべき住民税とは?種類から業務効率化の方法まで解説

法人3税以外に納めるべき税金

この章では、法人3税以外で法人が納めるべき税金について説明しよう。

売上から必要経費を引いた所得にかかる消費税
消費税は国内の消費行動に対して課される税金である。課税対象となるのは、課税売上高が年間1000万円を超えた場合だ。法人が納付すべき消費税は、「売上に含まれる消費税 - 仕入れにかかった消費税」で計算される。

要件に当てはまる場合に課税される税金
他にも下記に該当する場合には、税金が課される。
・不動産取得税・・・土地の購入や建物の購入・建築を行った場合に、取得した不動産の価格をもとに課税される。
・固定資産税・・・固定資産を所有する場合は、固定資産税台帳に登録されている固定資産に対して課税される。
・事業所税・・・人口30万人以上の都市が、一定規模以上の事業所に課す税金。事業所等の面積または従業員数に応じて課税され、業績に関わりなく納税する必要がある。

このように、法人に課される税金は多い。ここからは税負担をできるだけ抑える方法について解説するのでぜひ参考にしてほしい。

法人税で実践可能な節税・減税・税金の繰り延べ対策

法人が納める税金の中でも負担が大きいのが法人税だ。ここでは法人税の節税・減税・繰り延べ対策を紹介しよう。

損金を増やして所得を減らす節税
1つ目は損金を増やすことで節税する方法だ。まずは損金として扱えるのに損金計上していなかった項目はないかを洗い出そう。そして、環境整備のための投資を行うと良いだろう。具体的には下記のような方法が挙げられる。
・保険や共済への加入
・社員旅行の実施
・社宅の導入
・社用車の導入

特別控除を活用して税金そのものを減税
2つ目は特別控除を活用して税額を抑える方法だ。税額控除を受けられる制度には次のようなものがある。
・所得拡大促進税制・・・中小企業等が一定の要件を満たした上で従業員の給与支給額を一定額以上増やした場合、増加額の一部を法人税から税額控除される
・中小企業投資促進税制・・・中小企業等が機械装置などを取得・製作した場合に取得価額の30%の特別償却または7%の税額控除を受けられる

会計の計上タイミングと分割払いによる税金の繰り延べ
3つ目は、税額自体の変化はしないものの、納税のタイミングをずらす方法だ。具体的には以下のような方法がある。

・未払い費用の損金計上・・・年度内に受けたサービスの費用(給料・光熱費等)を次年度になってから後払いするものを未払い費用として損金計上する
・短期前払費用の特例を活用・・・賃料・リース料・サービス使用料などで支払日から1年以内に提供される分の前払費用を支払い時に損金計上する

過度な節税は手元資金の目減りと社会信用の低下に繋がるため注意

できるだけ税負担を抑えて、事業に使える資金を残したいと考えるのは当然の思いとも言えるが、過度な節税には注意が必要である。節税対策であっても現金を使えば当然ながら手元資金は目減りすることになる。また利益を圧縮して損益計算書(PL)の見え方が悪くなれば、金融機関等への社会的信用力が低下し、融資等も受けづらくなる可能性もある。短期的な利益ばかり見るのではなく、バランスを考えて判断することが重要だ。

法人税の課税方法と申告方法・納付期限

最後に、法人税の課税方法と申告方法、納付期限について説明しよう。概要は以下の通りだ。

法人税の申告・納付の期限は決算翌日から2ヶ月以内
法人税は、申告期間・納付期間ともに決算日の翌日から2ヶ月以内となっている。また、所轄の税務署長に「申告期限の延長の特例の申請書」を提出すれば、申告期限を1ヶ月延長することができる。

法人税の計算には法人の利益と課税所得を調整する税務調整が必要
法人税を計算する際には、上述の通り企業会計上の利益から税務調整を行って算出する必要がある。毎年行われる税制改正に対応しながら、適正に処理しよう。

法人税が払えない場合はどうなる?
法人税の申告が遅れると、無申告として納付額の15〜20%の無申告加算税が課されることになる。納付が遅れた場合にも遅滞税が課されるため注意しよう。遅滞税を納める際は納付書を添えて、金融機関または所轄の税務署に行く必要がある。

まとめ

税務会計には難解な点も多く、税制改正への対応も求められるため、税理士に相談しながら進めるのが効率的な方法と言えるだろう。日頃からfreeeや弥生会計などの会計ソフトを使って管理しておけば、税理士への情報の共有もしやすく話もスムーズだ。また、会計ソフトの中には税理士紹介サービスを行っているものもある。自社で使う会計ソフトに対応してくれる税理士であれば、導入の手間もかからず業務の負担にもなりにくいだろう。ぜひこうしたサービスを活用して、決算業務や節税対策に臨んでほしい。