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就業規則の見直しが必要となるケースとは?変更時の手順や注意点

2022.10.31
オフィスのミカタ編集部

労働条件に関するルールをまとめた「就業規則」。法律の改正や社会情勢の変化などに伴い就業規則の見直しが必要となるが、変更方法などについて詳しく知りたい担当者もいるだろう。今回は、就業規則の見直しが必要となるケースや変更時の手順、知っておくべき注意点を解説する。自社で就業規則を見直す際の参考にして欲しい。

目次

●就業規則の見直し。その重要性とは
●就業規則の見直しが必要となる主なケース
●「不利益変更」を行う際には労働者の合意が必要。知っておきたい注意点
●就業規則を変更する際の手順
●まとめ

就業規則の見直し。その重要性とは

就業規則とは、労働者の賃金や労働時間といった労働条件のほか、就業にあたり労働者が遵守すべき規律やルールなどをまとめた規則のこと。労働基準法により、従業員を常時10人以上雇用している企業は、就業規則を作成し、所轄労働基準監督署へ届け出ることが義務付けられている。

就業規則は、国が主導する「働き方改革」や企業を取り巻く環境の変化に対応するためにも、定期的に見直すことが重要だ。就業規則の見直しを行えば、近年増加している労使トラブルを予防し、企業や労働者を守ることができる。また、労働者にとって安心できる環境を整備することは、企業の生産性向上にも繋がるだろう。

参考:厚生労働省『モデル就業規則について』
参考:厚生労働省『中小企業のための就業規則講座』

就業規則の見直しが必要となる主なケース

就業規則は、どのようなタイミングで見直す必要があるのだろうか。ここでは、見直しが必要となる主なケースについて解説する。

法改正が行われた場合
法律が改正された場合、その法律内容に対応するために、就業規則の見直しを行わなければならない。近年、働き方改革に伴い、労働基準法の改正が頻繁に行われている。自社の就業規則の内容が、法令よりも従業員に不利な労働条件の場合はその内容は無効となるため、就業規則の見直しが必要だ。

また、育児介護休業法などの関連法令の改正に基づき新制度に対応した育児・介護休業の制度を取り入れる場合も、このケースに該当する。

会社のルールを変更する場合
会社のルールを変更する場合も、就業規則の見直しが必要となる。例えば、就業時間や休日日数、賃金体系を見直すタイミングがこれに該当する。

会社と労働者間のトラブルを防ぐためにも、小さなルールの変更も就業規則に盛り込むことが大切だ。

経営環境が変化した場合
従業員が増加した場合など経営環境が変化した場合も、就業規則を見直すタイミングだ。例えば、パートやアルバイト、嘱託社員などの非正規労働者を雇用する場合は、正社員とは異なる就業規則を作成する必要がある。

また、働き方の多様化に伴い、テレワークを導入したり変形労働時間制やフレックスタイム制を導入したりする際にも、見直しが必要だ。

関連記事:『テレワーク導入時に就業規則の見直しは必要?押さえるべきポイントを徹底解説』

「不利益変更」を行う際には労働者の合意が必要。知っておきたい注意点

労働契約法によると、労働者の不利益になるような就業規則の変更をしようとする場合、会社は「労働者の合意がないまま勝手に就業規則を変更することはできない」と定められている。労働者と合意なく会社が一方的に不利益変更をした場合は、元の就業規則が適用されることに注意が必要だ。労働者の不利益になる労働条件の具体例は以下の通り。

・給与の減額
・手当の廃止
・休日日数の短縮
・定年制の新設
・休職期間の短縮
 など

ただし、就業規則の変更を労働者にあらかじめ周知し、その必要性や相当性などに合理的な理由がある場合は、不利益変更を行うことができる。一般的に、就業規則の変更には労働者代表の意見聴取が必要となるが、労働者代表が不利益変更の対象外である場合、その者の意見聴取だけでは就業規則を変更できないことも把握しておくとよいだろう。また、就業規則の変更手続きは、事業所ごとに必要となる点にも注意が必要だ。

参考:厚生労働省『労働契約法』

就業規則を変更する際の手順

就業規則を変更する場合、どのような手順を踏めばよいのかを紹介する。

【手順1】就業規則の見直し案を作成する
最初の手順は、就業規則の見直し案を作成することだ。就業規則のどこの箇所を変更するのか担当部署で検討し、見直し案をとりまとめよう。その際は、法律上の問題点がないのかをしっかりチェックすることが大切だ。

【手順2】労働者代表等に意見を聴く
次に、労働者代表等から変更案について意見を聴こう。この場合の労働者代表等とは、「労働者の過半数で組織する労働組合または労働者の過半数を代表する者」となる。代表者の選出方法は、投票や選挙などの方法により選出する必要があるが、部長職や課長職といった管理監督者は過半数代表者にすることができないため注意しよう。

意見聴取後は、その内容を「意見書」にまとめよう。労働者代表等からの意見聴取は、できる限り「意見を聴く」ことであり、内容に対する「同意」までは要求されていないことも併せて知っておきたい。また、「不利益変更」を行う場合は、この段階で労働者に説明しておくとよいだろう。

【手順3】所轄労働基準監督署へ届出をする
次の手順は、所轄労働基準監督署への届出だ。就業規則本体のほか、「就業規則届」に労働代表等の「意見書」を添えて提出しよう。

就業規則は、全文ではなく変更箇所について「新旧の対照表」を作成することでも代用できる。会社の控えを含めてそれぞれ2部用意し、1部は受領印をもらって会社で保管するとよいだろう。電子媒体を利用すれば、スムーズに申請できるため便利だ。

【手順4】変更後の就業規則を社内に周知する
変更後の就業規則を社内に周知させることが、最後の手順となる。就業規則を労働者に周知させるために、変更後の就業規則を「各作業場所の見やすい場所に掲示する」「書面で交付する」「電子データで保存する」などし、いつでも閲覧できるようにしておこう。

また、変更後の就業規則の置き場所についても、労働者に周知させることが大切だ。

参考:厚生労働省『中小企業のための就業規則講座』
関連記事:『 「働き方改革」に対応した就業規則や社内規程をWeb上で自動作成。『KiteRa』正式版をリリース』

まとめ

就業規則を見直すことは、「働き方改革」や企業を取り巻く環境の変化に対応するためにも大切だ。昨今問題視されている労使トラブルを予防し、企業や労働者を守ることにも繋がるだろう。

就業規則を変更する場合は、ルールに従い、適切な手順を踏む必要がある。ここで紹介した注意点なども参考にし、就業規則の見直しに役立てていただきたい。