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割増賃金とは?残業代の仕組みや正しい割増率による計算方法を解説!

2022.12.26
オフィスのミカタ編集部

割増賃金とは、従業員が残業をした際に基礎賃金に一定割合を上乗せして支払う賃金だ。会社側は、残業をした従業員に対して割増賃金の支払いを行うことが労働基準法で義務付けられている。しかし、計算方法が複雑であることや、残業が発生するケースよって割増率が異なることなどで、苦労している担当者もいるのではないだろうか。本記事では、割増賃金の概要や割増率、計算方法などを解説するので、役立ててほしい。

目次

●割増賃金とは
●法定内残業と法定外残業の違い
●割増賃金が発生するケースと割増率
●割増賃金と割増率の計算ステップ
●割増賃金の支払いにおける注意点
●まとめ

割増賃金とは

従業員が残業を行った場合などに支払う割増賃金。まずは、割増賃金の概要をみていこう。

割増賃金とは
割増賃金とは、従業員が「法定労働時間」を超えて勤務した場合や、深夜労働、休日労働を行った場合に通常の賃金に上乗せして支払う賃金を指す。法定労働時間は労働基準法で「1日に8時間、1週間に40時間」と定められている。割増賃金は、時間外労働をした従業員へ補償をする目的があるが、加えて会社側に対し経済的負担を課すことで時間外労働の抑止を図る目的もある。

法定労働時間と36協定
そもそも、会社が従業員に「法定労働時間」を超えて勤務させる場合には、会社と従業員の間で「36協定」を締結しなければならない。「36協定」の届出をせず、残業や休日出勤をさせることは労働基準法違反となるため注意が必要だ。また、締結した36協定は所管の労働基準監督署へ届出義務もあるため、締結後に忘れず届出を行おう。

また、法定労働時間を超えた残業には、「1ヵ月45時間、1年360時間を超えないもの」とする限度時間が定められている。ただし、臨時的な特別の事情がある場合に限り、36協定において特別条項を設けることで、「年720時間、複数月平均80時間以内」で勤務させることが可能だ。この場合、月45時間を超えることができるのは、年間6ヵ月までとなる。
(参考:『労働基準法』
(参考:厚生労働省『36協定で定める時間外労働及び休日労働について留意すべき事項に関する指針(労働基準法)』

関連記事:『【要注意】36協定を知らないと危険?!企業が押さえたいポイントとは』

法定内残業と法定外残業の違い

いわゆる残業(時間外労働)には、「法定内」と「法定外」の2種類がある。ここではそれぞれの違いをみていこう。

<法定内残業>
法定内残業とは就業規則で定めた「所定労働時間」を超えるものの、法定労働時間内(1日原則8時間以内、1週40時間以内)の範囲に収まっている残業を指す。そのため法定内残業は、割増賃金が適用されない。

例えば、所定労働時間が7時間/1日と定められている場合に、1時間残業をし、1日の労働時間が8時間になった場合は、1時間の残業は法定内残業となるため、割増賃金の支払い義務はない。ただし、所定労働時間を超過した勤務時間に応じ、通常の賃金の支払いを行う必要がある。

<法定外残業>
法定外残業とは、法定労働時間を超えた残業を指す。法定外残業をさせた場合は、通常の賃金に一定の割増率を加算した割増賃金を支払わなければならない。

割増賃金が発生するケースと割増率

割増賃金が発生するケースは「法定外残業」「深夜勤務」「休日勤務」を行った場合だ。ここではそれぞれの割増率などをみていこう。

法定外残業の割増賃金
法定労働時間を超えて残業をさせた場合(法定外残業)は、超過分に割増賃金が適用される。割増率は25%となり、通常の賃金に25%を乗じて計算した賃金を支払うことが必要だ。

なお、法定外残業時間が1ヵ月に60時間を超える場合は、その部分に50%の割増率が適用される。詳しくは後ほど詳しく解説する。

深夜に勤務した場合の割増賃金
午後10時から翌午前5時までに勤務させた場合にも、割増賃金の支払い対象だ。この場合の割増率も25%となる。

休日出勤の場合の割増賃金
休日に勤務させた場合も割増賃金の支払をする必要がある。休日には下記の種類があり、割増率も異なっている。

<法定休日>
法定休日は、労働基準法で定められている休日のこと。労働基準法第35条において、「毎週少なくとも1回の休日または4週間を通じて4日以上の休日を与えなければならない」と規定されているものだ。就業規則で、企業側が「法定休日」と定めた日に勤務させた場合には、「法定休日労働」として35%を割増した賃金を支払う必要がある。

<所定休日>
所定休日とは、会社が就業規則で定めた休日を指す。必ずしも法定休日となるわけではなく、法定休日にプラスして定めるのが一般的だ。所定休日に勤務させた場合は、時間外労働扱いとなる。これが1週40時間を超える法定外残業に該当する場合は、25%の割増率を適用し、割増賃金を支払わなければならない。

ケース別の割増率は下図の通りとなる。

注:中小企業は2023年4月から適用
(参考:東京労働局『労働基準法 - 割増賃金編 「残業手当」 「休日手当」』

割増賃金と割増率の計算ステップ

ここからは、具体的な割増賃金の計算方法をステップごとにみていこう。

<ステップ1>1時間あたりの基礎賃金を算出する
まずは、1時間あたりの基礎賃金を算出する。算出する式は下記の通りだ。

1時間あたりの基礎賃金=その月の所定賃金額÷その月の所定労働時間

例えば、その月の所定賃金額(月給)が30万円で、所定労働時間が160時間だった場合は、下記の通りとなる。

30万円(その月の所定賃金額)÷160時間(その月の所定労働時間)=1,875円(1時間あたりの基礎賃金)

尚、基礎賃金算出時には、以下の項目に限り所定賃金から控除できる。

・家族手当
・通勤手当
・別居手当
・子女教育手当
・住宅手当
・臨時で支払われた賃金
・1ヵ月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与)など
(参考:厚生労働省『割増賃金の基礎となる賃金とは?』

<ステップ2>該当する割増率を適用する
割増率は、残業させた時間帯に該当する割増率の全てを適用する必要がある。例えば、法定外残業時間と深夜勤務の時間が重複している場合には、法定外残業時間に対する割増率25%と、深夜労働時間に対応する割増率の25%を足し、50%の割増率が適用される。

<ステップ3>割増賃金を計算する
算出した基礎賃金と割増率を用い、下記の計算式で割増賃金を求める。

割増賃金=1時間あたりの基礎賃金×時間外労働の時間×割増率

例えば、1日の所定労働時間が9時から18時までの会社で、23時まで残業をさせた場合は、下記の通りに計算を行う(1時間あたりの基礎賃金は1,875円とする)。

1)1時間あたりの基礎賃金に法定外残業に該当する割増率を乗じ、割増賃金を求める。
1,875円(1時間あたりの基礎賃金)×4時間(深夜時間以外の法定外残業時間)×25%(法定時間外割増率)=9,375円

2)深夜労働(22時~23時)に該当する残業時間の割増賃金を求める
1,875円(1時間あたりの基礎賃金)×1(深夜帯の法定外残業時間)×25%(法定時間外割増率)×25%(深夜割増率)=2,812.5円=2,813円(割増賃金)
※1時間あたりの割増賃金額に1円未満の端数が生じた場合は、50銭未満の端数を切り捨て、50銭以上1円未満の端数を1円に切り上げることが労働基準法で認められている。

上記の1)と2)で求めた割増賃金を合算した金額が、このケースにおいて支払うべき割増賃金となる。

割増賃金の支払いにおける注意点

最後に、割増賃金の支払いにおける注意点を解説する。

月60時間を超える残業の割増率
法定外残業が月60時間を超える場合は、60時間を超えた時間について割増率を25%から50%に増加させることが義務付けられている。2023年3月までは、その対象が大企業に限られているが、4月以降は中小企業にも適用される。これまで該当していなかった企業は、2023年4月以降自社が該当するかどうか、事前に確認をしておこう。
(参考:厚生労働省『政策レポート(労働基準法が改正されます)』

無制限の残業は認められない
36協定の締結・労基署への届出を行っているからといって、無制限に残業をさせてよいわけではない。36協定で決められる法定外残業時間には上限が設けられており、上限を超えると罰則が課せられてしまう。ただし、36協定に「特別条項」を付けていれば、上記の上限を超えて残業させることも可能となっている。しかし、特別条項には手続きが定められているほか、特別条項にも上限が設けられているため注意しておきたい。また、36協定の上限時間や特別条項による定めや内容にかかわらず、時間外・深夜・休日労働に関しては割増賃金の支払いが必要であることを覚えておこう。
(参考:厚生労働省『36協定で定める時間外労働及び休日労働 について留意すべき事項に関する指針 (労働基準法』

まとめ

割増賃金は、従業員に残業をさせる場合に基礎賃金に上乗せして支払う義務があるものだ。残業には法定外・法定内の種類があり、深夜・休日出勤をさせた場合にはさらに割増率を加算して支払う必要がある。残業代の未払いは労使トラブルに発展しかねない。36協定の締結・労基署への提出を必ず行い、正確な割増賃金の算出および支払いを行えるようにしよう。