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給与計算を誰に頼む?代行のメリットや依頼先を選ぶときのポイント

2023.02.15
オフィスのミカタ編集部

どの企業でも毎月発生する業務の一つ、給与計算。給与計算に特定の資格は必要ないが、就業規則や社会保険、最新の法令などについて理解が必要で、締め日前後は担当者の業務負担が大きいという課題もある。そのため、給与計算のアウトソーシングを検討している企業もあるだろう。今回は、給与計算業務の主な依頼先と、それぞれを利用するメリット・デメリットを解説する。給与計算の依頼先を選ぶポイントも紹介するので、参考にしてほしい。

目次

●給与計算の選択肢
●税理士と社労士、依頼できる業務内容はどう違う?
●税理士・社労士に依頼するメリット・デメリット
●給与計算の依頼先を選ぶときのポイント
●アウトソーシングサービスを利用するという選択肢も
●まとめ

給与計算は誰に頼む?依頼先の選択肢とは

給与計算業務は、従業員への給与支払いのほか、納税に関わる業務でもある。給与計算業務を行う選択肢として、以下が挙げられる。

自社で行う
最もスタンダードな方法は、社内で給与計算を行うことだ。人事や経理などが担当するケースと、経営者自らが行うケースなどがある。いずれの場合も、労働基準法や自社の就業規則などの専門知識が必要だ。昨今は、給与や税金の計算を効率化できる給与計算システムも多数登場しており、給与計算業務の効率化に一役買っている。

税理士に依頼する
税理士の主要な業務である税金の計算は、給与計算と重なる部分もある業務だ。そのため、税理士事務所には、給与計算も請け負っている場合がある。ただし、顧問料の範囲で給与計算も委託できるか、計算業務はオプション扱いになるかなどは、税理士によって異なるため、確認が必要だ。

社会保険労務士(社労士)に依頼する
従業員規模が大きい企業は入社・退社が多く、社会保険資格の取得・喪失や育児休業などの手続きも増える。これらの業務は人事・労務の専門家である社労士が代行可能だ。給与計算と合わせて、従業員の入退職時の手続きも一括して依頼できる。

税理士と社労士、依頼できる業務内容はどう違う?

税理士と社労士は、それぞれ税務と人事労務管理のスペシャリストである。給与計算を担当している部署は企業によって異なり、総務・経理・人事を兼務していている場合もあるため、どの業務を誰に依頼するか迷っている人もいるだろう。ここでは、税理士と社労士の主な業務内容と、依頼できる主な業務をそれぞれ紹介する。

税理士に依頼できる業務
税理士とは、税金の専門家で、納税者(企業)の税務に関するサポートを行っている。税理士に依頼できる業務内容は下記のとおりだ。

・確定申告や青色申告の承認申請など税の申告や申請、税務調査の立会い、税務署の決定等に対する不服申立てなどを行う「税務代理」
・法人税、消費税、所得税、地方税など税に関する書類を作成する「税務書類の作成代理」
・税額の計算や税法上の処理など税務に関わる相談を受ける「税務相談」

この3つの業務は、税理士法の定めにより税理士の独占業務となっており、有資格者以外の者が代行することはできない。

(参考:日本税理士会連合会『税理士とは』

社労士に依頼できる業務
社労士とは、社会保険や労務管理のスペシャリストだ。社労士に依頼できる業務には、下記のものがある。

・社会保険に関する各種書類の作成・提出(1号業務)
・労働者名簿、賃金台帳、出勤簿など労働社会保険諸法令に基づく帳簿書類の作成(2号業務)
・労務管理や社会保険に関する相談(3号業務)
・助成金の申請代行

「助成金」の申請代行ができるのは社会保険労務士のみとなっている。助成金と似たものに「補助金」があるが、補助金の申請代行は社労士の独占業務ではないため、行政書士・中小企業診断士・税理士などや、アウトソーシング業者でも代理で申請が可能だ。

(参考:社会保険労務士法 第二条『社会保険労務士の業務』


税理士と社労士のそれぞれで、扱える業務範囲が異なる。給与計算以外に自社が課題を感じている部分や、依頼を検討したい業務内容を洗い出した上で、どちらを選択するのが最適かを検討しよう。

税理士・社労士に依頼するメリット・デメリット

税理士と社労士のどちらが良い悪いということではなく、それぞれの専門分野があり、どちらもメリット・デメリットがある。

税理士に依頼するメリット・デメリット
税理士の業務は税務に関することである。そのため給与計算と同時に、税額の計算や納税書類の作成なども併せて依頼できるのがメリットだ。税理士事務所によっては、顧問料の範囲で給与計算も行ってもらえる場合もある。年末調整の計算や源泉徴収票の作成など、繁忙期の業務に対応できるのも税理士ならではのメリットだろう。

税理士に依頼するデメリットは、社会保険や労務の手続きは代行できないことにある。社会保険の定時決定(算定基礎届)・月額変更届・賞与支払届など、労務に関することは社労士の業務範囲のため、税理士には依頼できない。

社労士に依頼するメリット・デメリット
社労士は人事労務の書類作成を行うことができる。社会保険の適用や算定基礎届の作成、労働保険料の申告などを依頼できるのは、手続きの負担が大きい企業には大きなメリットだといえる。給与計算と併せて従業員の入社・退社の手続きも依頼できるため、これらの手続きを幅広くカバーできるのは社労士に依頼する利点だ。

社労士に依頼するデメリットとしては、税務を依頼できないことが挙げられる。給与計算業務の一つに「年末調整」があるが、源泉徴収票・支払調書の作成代行は税理士の業務で、社労士がこれを行うことはできない。


税理士・社労士に給与計算業務を依頼する場合、どちらにも費用がかかる。自社に税務・人事労務の専門知識がある従業員がいない場合は、専任の従業員を新たに採用するよりも、外部に依頼した方がコスト安になる場合もあるだろう。依頼したい業務範囲を明確にして、どこまでを自社で行うか検討しよう。

給与計算の依頼先を選ぶときのポイント

給与計算の依頼先の選定時に、チェックしたいポイントを解説する。給与計算の代行先はさまざまであるため、ポイントを押さえた上で比較検討してほしい。

【ポイント1】依頼できる業務範囲
給与計算に付随する業務には、次のようなものがある。どの業務を依頼するかによって、依頼先も変ってくる。

・毎月の給与計算
・賞与計算
・年末調整(源泉徴収票や法定調書の作成・提出)
・社会保険手続き(資格取得・喪失、算定基礎、月額変更、育児休業の届出など)

依頼先が提供しているサービス内容を調べて、自社の課題を解決できるところを選ぶのが重要だ。

【ポイント2】セキュリティ対策
給与計算は、従業員の個人情報や自社の機密情報を依頼先に渡すことになる。依頼先のWebサイトに認証マーク(「プライバシーマーク(一般財団法人日本情報経済社会推進協会)」や「ISMS(情報セキュリティーマネジメントシステム)」)が掲載されているか確認してほしい。問い合わせの際に、どのようなセキュリティ対策をとっているのか、サーバーやバックアップなども確認するとよいだろう。

【ポイント3】費用対効果
給与計算を外部に委託することで、担当者が企業のコア業務に注力できるようになり、企業全体のコストを削減する効果を期待できる。給与計算の依頼費用と企業のコストを秤にかけて、自社の課題解決に見合うかどうか見極めてほしい。

アウトソーシングサービスを利用するという選択肢も

従業員規模が大きくなると、個人の税理士事務所・社労士事務所で対応できる業務範囲を超えてしまうケースも考えられる。そういった企業は、給与計算のアウトソーシングサービスの利用も選択肢に入れてみてはいかがだろうか。アウトソーシング業者に依頼する際は、担当スタッフのレベルを確認してほしい。依頼する業務に税務が含まれるなら税理士の有資格者がいるか、労働・社会保険業務も依頼するなら社労士がいるかどうか、業者に確認しよう。自社と同じ規模の企業の給与計算を行ったことがあるか、実績も調べるとよいだろう。

まとめ

給与計算の依頼先は、税理士や社労士、アウトソーシングサービスなどのさまざまな選択肢がある。ただし、得意分野や請け負える業務範囲が定められていることもあるため、まずは自社で切り出したい業務を整理することが先決だ。給与計算代行にかける予算と削減できるコストを考えて、自社の課題を解決できる依頼先を見極めよう。