SmartHR、人的資本経営プラットフォーム化を推進 2030年に売上1000億円を目指す

2025年6月3日、労務管理システムを手がける株式会社SmartHR(本社:東京都港区、代表取締役 CEO:芹澤 雅人)がメディア向けに事業戦略発表会を開催し、サービスの進化によって「人的資本経営プラットフォーム」の実現を目指すことを宣言した。全業界が人材不足にあえぐ中、AIを駆使した人事給与基幹システムを提供することでバックオフィスの業務効率化を進めるという。
これまでのSmartHR
発表会では芹澤雅人 代表取締役 CEOが登壇し、まずはSmartHRのこれまでについて振り返りを行った。SmartHRは2013年に設立し、「well-working」をコーポレートミッションとして、労働にまつわる社会課題解決のため、労務管理クラウドシステム「SmartHR」を提供してきた。

一般に労務管理システムはバックオフィスの業務効率化のための仕組みだが、「SmartHR」では、さらにタレントマネジメント機能をかけあわせている。「効率化によって生まれた時間を、組織をより強くすることに再投資してほしいという思いがあります。この思いから、働く人が能力を発揮し、成長できる環境を整備して業務の成果を最大化する支援しています」と芹澤氏。

現在、「SmartHR」の登録者数は7万社を突破し、サービス継続利用率は99%以上と、多くの企業に愛されるシステムとしての地位を高めている。
⼈的資本経営プラットフォームへの進化を実現するための注⼒ポイント

次に芹澤氏は、現在「SmartHR」に求められているものとして「AIなどの最新技術を用いた新しい効率化の実現と、経験や勘に頼らないデータドリブンで科学的なマネジメントによる人事戦略の実行」を指摘。既存システムを給与計算の分野まで拡大し、データとAIによるタレントマネジメント機能を搭載することで、⼈的資本経営プラットフォームになることを目指すと発言した。
芹澤氏はさらに、この戦略を実現するための注力ポイントを3つ示した。
クラウド⼈事給与基幹システムへの進化
人事・給与管理を統合したクラウド基盤への進化を推進する。6月4日から給与計算機能の提供を開始し、「データ入力レス」をコンセプトに、従業員情報の自動連携による業務効率化を目指す。

AIによる業務効率化と⼈的資本経営の推進
既存機能にAIを組み込み、履歴書の読み取り機能(2月13日提供開始)や、就業規則やマニュアルから質問への回答を出力してくれるAIアシスタント機能の導入により、業務の効率化を促進する。また、後継者やリーダー育成を目的とした次世代人材候補を抽出したり、従業員の経験やスキルから社内ポジションを提案したりといったAIマッチング機能などを開発し、人的資本を最大限に活用できるプラットフォームへと進化する。

HR SaaS以外の領域への進展
情報システム領域への進出として、2025年8月からID管理機能の提供を開始する予定。「SmartHR」上で外部サービスアカウントを⼀覧で可視化し、追加と削除に対応する。従業員⼀覧との突き合わせも⾃動で実施することが可能になる。
また、業務委託管理ツール「Lansmart(ランスマート)」を提供する(株)クラウドブレイズとのM&Aにより、フリーランスとの業務委託の管理業務が一元的に管理できるようになる。業務委託管理の⾃動化と法令違反予防を1ツールで実現することにより、フリーランス市場の成長を見据えた事業拡大が行われる。
2030年に⽬指す事業ポートフォリオと売上⾼

SmartHRはこれまでSaaSに注力してきたが、人事制度設計や人事コンサルタントといったSaaS以外の領域にも進出し、M&Aを進めながら「well-working」の実現を図っていく考えだ。2030年までにSaaS事業で860億円、SaaS以外の事業で140億円、合計1000億円規模のビジネスを目指す。芹澤氏は「日本で働くために、なくてはならないインフラのような企業になろうと考えております」と宣言し、発表会を締めくくった。
積極的なM&Aで事業規模1000億円の達成へ
説明会後には質疑応答が行われ、既存事業の成長余地、給与計算機能による効率化、AIの活用方法などについて質問が上がった。
とくにM&Aについては「今までそれほど積極的にはM&Aされていなかった。このたびなぜ、クラウドブレイズ社とのM&Aに至ったのか」という質問が上がり、森雄志 取締役 CFOは「昨年フリーランス新法が施行され、フリーランスの管理状況が注目された。今後必ず外注管理が市場として伸びるだろうという見立てのもと、フリーランス領域に深いドメイン知識があり、ニーズを踏まえたシステム開発のノウハウを持っているクラウドブレイズ社と連携すれば、正社員管理と一気通貫のシステムが作れると考えました」と答えた。

そして「2030年までに売上1000億円という目標は、自社開発だけではスピードとして追いつけません。今後もM&Aを積極的に駆使していきたいと考えています」と、ターゲット達成への意欲を語った。SmartHRは積極的な買収や協業を通じて成長を加速させ、人的資本経営プラットフォームとしての地位を確立する計画だ。