テレワークに「向いてない」のはどんな人?導入が進む裏で生まれている新たなストレスとは
現在、省庁や東京都が協力して、2020年東京オリンピックの開会式にあたる7月24日を「テレワーク・デイ」と位置づけている。今年は2020年東京大会前の本番テストとし、7月22日(月)~9月6日(金)の約1ヶ月間を「テレワーク・デイズ2019」実施期間と設定し、各企業にテレワークの一斉実施を呼びかけている。
しかし、テレワークの満足度は高いが、導入の裏で新たなストレスが生まれているようだ。
■テレワークとは
情報通信技術(ICT)を活用した場所や時間にとらわれない柔軟な働き方のことで、働く場所によって(1)在宅勤務、(2)移動中などのモバイルワーク、(3)サテライトオフィス勤務の3つを指す。
■リモートワークを利用する理由は
オールアバウトが行った調査によると、テレワーク/リモートワーク制度を活用する理由として最も多いのは「時間の有効活用」で、次いで「通勤ストレスの軽減」「仕事の効率化」となった。
■テレワークは、好意的に受け取られている
テレワーク/リモートワークによる効果について、制度を積極的に利用している人に聞いたところ、「ワークライフバランス」「感じるストレス」「労働時間」などが改善されたと半数以上が回答した<グラフ2>。
また7割が「以前よりも幸福度が高まった」と答え、好意的に受け取られていることがわかった。<グラフ3>。
■テレワーク導入の裏で生まれる新たなストレスとは?
しかし、積極的に制度を利用している人の労働時間をみると、9時間以上と回答した人が約半数を占めた。
これは制度を積極的に利用していない層の1.4倍であり、制度を利用している人のほうが労働時間が長い傾向にあった。<グラフ4>。
また自身の働き方について「自分は働き過ぎている」と回答した割合は制度利用者の半数を占め、制度を積極的に利用していない層と比較し1.3倍と高いことがわかった。<グラフ5>
■自由度が高いと、人はストレスを感じにくくなる。隠れストレスに要注意!
テレワークを利用していると長時間労働になりやすいことは研究でも明らかにされている。
通勤時間がないことでその時間を有効的に使って仕事を早く終えたいという心理が働き、結果的に、休憩時間も短くなりがちだ。
それでも、満足度が高い理由としては、自ら働く場所を選べていることや、その優越感、そして通勤ストレスからの解放などが挙げられるだろう。
そういった自由度の高さゆえに本人が満足しているということ、また閉鎖的な環境故に、テレワークによるストレスは本人も周囲も感じにくいと言える。
一般的に労働者のストレスの原因は、職場の環境、仕事そのもの、スキルのミスマッチ、人間関係の4つに大別できる。テレワークは、これら4つそれぞれに影響をもたらすため、使い方を工夫するのが上手な利用方法だ。
■気付きにくいストレス。テレワークが関連する職場ストレス
〇環境のストレス
会社に集まって働く場合、生産性を高める職場環境を会社が創っている。室温、騒音、照度、作業場など同じ環境を在宅で創り上げないと仕事の成果に影響し、ストレスに。
〇仕事内容のストレス
テレワークは、基本的には裁量権が委任されるような仕事や人に向いている。そうではない場合、長時間労働になりやすく、やらされている感も強くなる傾向にある。
〇スキルのストレス
新卒や仕事に慣れていない人が、わからないことがあった際にどのタイミングでどうやって周囲にサポートを求めればいいのか、明確になっていない場合が多い。スキルが不十分な場合はテレワーク自体がストレスに。
〇人間関係のストレス
プライベートの話など、職場での何気ない会話が減り、仕事の話だけになることで孤独を感じやすく、ストレスに。
■働きやすさの推進と、業務効率は別々に考えるべき
働き方改革の観点でも注目されているテレワークだが、現状は子供や親の看病/介護、自身の体調が悪い時などに使われやすいといった課題がある。
働きやすさを向上させることは労働力を維持し、従業員の暮らしをサポートするうえで重要だが、利用するシーンを間違うと、従業員が休むべき時に休めないといったことが起こる。
また業務効率の向上を同時に求めるのであれば、小さな子どもや介護の必要がある人がいる場合には、テレワークは不向きとなる。
また、隠れストレスへの対策としても、自己管理能力の高さが求められる。
■テレワークに向いている人、不向きな人
〇テレワークに向いている人/職種
・通勤が何らかの理由で出来ない(家庭の事情、自身の身体的不自由等)
・仕事の要件が決まっており、それに対して向き合える人
・仕事以外でのコミュニティを多く創っている人
・時間管理が厳格な場合、仕事を割り切れる人
・小さな案件のクリエイティブ職
〇テレワークに不向きな人/職種
・自宅が働ける環境にない人(育児・介護・ペット、外部騒音等)
・仕事の全体要件が見えづらく、繰り返し情報共有をしないといけない人(新卒や転職直後等)
・仕事でのチームワークを重視して、仲間意識の高い人
・大きな案件のクリエイティブ職(Face to Faceでの議論の方がイノベーティブな案が出やすい)
■テレワーク/リモートワークを上手に利用する3箇条
1.「オンオフ」を意識してルーティーンを作る
テレワークであっても決まった時間に起床し、決まった時間に朝食を食べ、決まった時間に仕事を開始し、決まった時間に仕事を終えて、プライベートの時間を楽しむというルーティーンが大切。
2.プライベートで過ごす場所と仕事部屋は別にする
もし難しければ、一度疑似出勤をするように、朝家を出て、5−10分ほど歩いてまた家に帰ってきて仕事モードにするのも良いだろう。仕事終わりにも同じく外出してモードをプライベートに戻していくのも良い。
3.自分の健康を意識的にチェックする
会社で受けられる定期健康診断やストレスチェックを必ず受診する。労働時間を管理しつつ、ルーティーンを崩さずに仕事をすることが重要。ルーティーンが出来ていないときは何か問題が発生している可能性がある。
■調査概要
・対象エリア :一都三県(東京、神奈川県、千葉、埼玉)
・対象者条件 :30~59歳
・サンプル数 :計445名(男性:367名、女性78名)
・調査手法 :インターネット調査
・調査期間 :2019年7月8日~7月13日
■まとめ
働き方改革に伴い、テレワークの導入企業が増えている。しかし、今回の調査から、テレワークには、向いている人と不向きな人がおり、また新たなストレスを生んでいることもわかった。
企業がテレワークを導入するにあたっては、自社の中でテレワークを必要としているのは誰なのか、導入効果が高いのはどんな職種・部門なのかを見極め、同時に労働負荷の軽減対策を考えなくてはいけない。
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