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賃上げ・リスキリングへの前向きな意向が明らかに【企業の雇用施策に関するレポート2024年版】

2024.03.29

株式会社マイナビ(本社:東京都千代田区、代表取締役 社長執行役員:土屋芳明)は、全国の民間企業等で中途採用業務のうち「採用費用の管理・運用」に携わっている人事担当者を対象に「企業の雇用施策に関するレポート(2024年版)」を実施。本調査は、雇用施策の導入傾向や今後の意向を明らかにすることを目的としたもの。ここでは調査結果の概要をお伝えする。

調査概要

「企業の雇用施策に関するレポート(2024年版)」
調査期間:2023年12月15日~12月18日
※中途採用状況調査 2024年版(2023年実績)と同時実施​
調査方法:インターネット調査
調査対象:従業員数3名以上の企業において、直近(2023年1~12月)に中途採用業務を担当しており、​「採用費用の管理・運用」に携わっている人事担当者​
有効回答数:1400件
※調査結果は、端数四捨五入の関係で合計が100%にならない場合がある
※n=30以下は参考値とした
出典元:企業の雇用施策に関するレポート2024年版(株式会社マイナビ)

リスキリングなどの従業員教育費、7割以上の企業が増額予定

リスキリングなどの従業員教育費、7割以上の企業が増額予定

本調査ではまず、リスキリングなど従業員の教育に関する費用について調査を実施。その結果、2023年に企業が従業員に使った教育訓練費(リスキリング費用含む)は年間平均344.5万円。金額別では「1~49万円」が45.5%で最多となった。業種別で最も高かったのは「金融・保険・コンサルティング」の554.1万円で、最も低かったのは「医療・福祉・介護」の128.9万円であった。

2024年度の増減予定については、73.2%の企業が上げると回答。2023年の教育訓練費の金額が高いほど、10%以上の高水準で教育訓練費を増加させる予定であることがわかった。

賃上げを2023年に行った企業は78.2%、2024年に予定している企業は73.9%

賃上げを2023年に行った企業は78.2%、2024年に予定している企業は73.9%

続いて本調査は、賃上げの実施状況を調査しており、2023年に現従業員の賃上げ(賃金のベースアップ)を行った企業は78.2%で、そのうち「前年度より、10%以上の水準で上げた」は24.2%であることがわかった。

業種別では「メーカー」「金融・保険・コンサルティング」「IT・通信・インターネット」で「上げた」が8割以上と高い結果になっている。「環境・エネルギー」では「前年度より10%以上の水準で上げた」が、3割を超えた。

今後、2024年の賃上げ予定では「上げる」が73.9%、そのうち「前年度より、10%以上の水準で上げる予定や検討がある」は25.8%となっている。

中途採用でのAI活用に肯定的な意見

中途採用でのAI活用に肯定的な意見

さらに本調査では、中途採用でのAI活用の実態を明らかにしている。

中途採用担当者が人事業務でAIを利用した割合は「人材の管理(31.9%)」「人材の評価(29.4%)」が上位に。本調査結果によれば4社に1社以上が人事業務でAIを利用しており、今後の利用についても全項目で7割程度が肯定的としているという。

同社は本調査結果について「AIにより感情の伴わない客観的な判断や業務の効率化を実現することはできるが、AIも人も完璧ではないことを認識し、バランス良く業務に取り入れることが重要だと考える」とコメントした。

中途採用者の再転職を見越した採用活動

中途採用者の再転職を見越した採用活動

また本調査では、中途採用担当者が想定する「2023年1年間に採用した中途社員の平均在籍期間」は「約4年(47.5カ月)」であることがわかった。業種別にみて、最も長いのは「メーカー」の「4年9カ月(57.0カ月)」で、最も短いのは「流通・小売・フードサービス」の「約2年6カ月(30.2カ月)」であった。

同社によると、想定在籍期間の理由について、3年未満を想定する人事担当者からは「転職が当たり前の時代だから」5年以上を想定する人事担当からは「5年以内には採用に掛けた労力を回収できるから」などのコメントが挙げられたという。

まとめ

本調査では2023年に賃上げを実施した企業と、2024年に賃上げを予定する企業のどちらも7割を超えており、持続的な賃上げが見込まれる結果となった。また、リスキリングなど従業員の教育費についても、前向きな意向が見受けられた。しかし金額は業界間で4倍以上の差が出ており、全体的なリスキリングの推進にはまだまだ課題がありそうだ。

同社はこれらの現状に対して「今後はテクノロジーの活用に合わせ、従業員の定着のためにも積極的なリスキリングなどの教育訓練と賃上げをバランスよく推進していくことが、企業に求められるのではないでしょうか」とコメントしている。

エヌエヌ生命保険株式会社が中小企業経営者を対象に実施した調査では、2024年に賃上げを予定する企業は4割未満であることが明らかにされている。リスキリングについても、推進している企業は2割に届かず、今後推進を予定している企業を合わせても4割未満となっている(※)。

両調査を比較すると、賃上げやリスキリングへの取り組みについては、業界のみならず企業規模によっても大きな差があると考えられるだろう。この差を埋めていくためには、中小企業に向けた支援メニューの拡大が重要ではないだろうか。

※出典元:中小企業向け事業保険のエヌエヌ生命 中小企業の賃上げとリスキリングに関する調査 〜 37.2%が賃上げ予定と回答し、賃上げ率「5%以上」は20.2% 〜(エヌエヌ生命保険株式会社)